プロが教える年末調整 その6 各種保険料控除の概要とQ&A
プロが教える年末調整「年末調整のあらましとチェックポイント」 |
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その1 年末調整とは 1 年末調整の概要 2 年末調整が必要な理由 3 年末調整の対象者 4 年末調整を行う時期 |
その2 Q&A「年末調整の対象者・年末調整の実施時期等」 1 外国人社員と年末調整 2 海外出向社員の年末調整 3 雇用保険の失業給付を受けていた社員の年末調整 4 前職の源泉徴収票が提出できない者の年末調整 5 扶養控除を受けるために退職するパートタイマー |
その3 年末調整の手順・事務の概要とその具体例 1 年末調整の手順と事務の概要 2 年末調整の具体例(甲さんの場合) |
その 4 年末調整の手順・事務の概要とその具体例 とQ&A 1 扶養控除 2 配偶者控除及び配偶者特別控除 3 扶養控除・配偶者(特別)控除Q&A その 5 扶養控除・配偶者(特別)控除のQ&A(続き) |
その 6 各種保険料控除の概要とQ& A 1 生命保険料控除 2 地震保険料控除 3 生命保険料控除・地震保険料控除 Q&A |
その 7 各種控除や年末調整に際しての留意点とそのQ & A 1 社会保険料控除 2 住宅借入金等特別控除 3 中途採用者の年末調整 4 年末調整の具ための申告とマイナンバーの記載 |
その 6 各種保険料控除の概要とQ and A
Ⅰ 生命保険料控除
1 概要
給与の支払を受ける人が、本年中に生命保険契約等に基づく保険料や掛け金を支払った場合には、その支払った一般の生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料の区分ごとに、それぞれ支払った保険料の金額の合計額(剰余金の分配又は割戻金の割戻しがある場合には、これらの金額を控除した金額)に基づいて計算した金額を合計した額(限度額12万円)が生命保険料控除額として給与所得の所等金額から控除されます。
2 控除の対象となる生命保険契約等の範囲
生命保険料控除の対象となる生命保険契約等は、生命保険契約等のうち、保険金、共済金のその他の給付金の受取人のすべてが給与の支払を受ける人又はその配偶者やその他の親族(個人年金保険料については給与の支払を受ける人又はその配偶者)となっているものです。
Ⅱ 地震保険料控除
給与の支払を受ける人が、その人又はその人と生計を一にする配偶者その他の親族が所有している家屋・財産のうち一定のものを保険や共済の目的とし、かつ、地震若しくは噴火又はこれらによる津波を直接又は間接の原因とする火災、損壊、埋没又は流失による損害により、これらの資産について生じた損失の額を填補する保険金又は共済金が支払われる損害保険契約等に基づく保険料又は掛金のうち、地震等損害部分の保険料や掛金を本年中に支払った場合には、その支払った地震保険料の金額の合計額(剰余金の分配又は割戻金の割戻しがある場合には、これらの金額を控除した金額)に応じた一定の金額が地震保険料控除額(限度額5万円)として給与所得の所得金額から控除されます。
なお、平成18年12月31日までに締結した長期損害保険契約等に基づく保険料又は掛金を支払った場合には、これらの保険料のうち一定の金額については、地震保険料控除の対象となる金額に含めることができることとされています。
Ⅲ 生命保険料控除・地震保険料控除<Q&A>
<その1…保険金の受取人が家族の母親となっているケース>
Q 私が加入している生命保険のうちには、その受取人が実家の母親となっているものがありますが、その保険料は契約者である私が支払っています。母親には年金収入や不動産収入もあり、私の扶養親族にもなっておらず、また同居もしていませんが、この保険料を私の年末調整で控除することはできるのでしょうか。
A 生命保険料控除の対象となる保険料は、一般の生命保険料又は介護医療保険料の場合には、保険金等の受取人のすべてが給与の支払を受ける人又はその配偶者やその他の親族であるものに限られます。また、個人年金保険料の場合は、年金の受取人は、給与の支払を受ける人又はその配偶者が生存している場合には、これらの者のいずれかであることが必要です。
この場合、保険金等の受取人である親族(又は年金の受取人である配偶者)は、給与の支払を受ける人と生計を一にしている必要はなく、また、控除の対象となる控除対象配偶者や扶養親族でなくてもよいことになっています。したがって、質問の生命保険契約が一般の生命保険契約や介護医療保険契約の場合であれば生命保険料控除の対象となると
思われます。
<その2 妻が保険契約者となっている生命保険契約>
Q 保険契約者が妻で、被保険者が私である保険契約があります。妻は専業主婦で収入はありませんので、実際の保険料は私の家計の中から支払っています。このような場合、私の生命保険料控除として申告することは可能でしょうか。
A 控除の対象となる保険料等は、給与の支払を受ける人自身が締結した生命保険契約等の保険料等だけに限りません。給与の支払を受ける人以外の人が締結した契約の保険料であっても、給与の支払を受ける人自身がその生命保険料等を支払ったことが明らかな場合には、控除の対象として差し支えありません。
例えば、妻や子供が契約者となっている生命保険金等であっても、その妻や子供に所得がなく、給与の支払を受ける夫がその保険料等を支払っている場合にも、その保険料等は夫の生命保険料控除の対象となります。ただし、この場合にも、その生命保険契約等の保険金の受取人のすべてが給与の支払を受ける人又はその配偶者その他の親族(個人年金保険料の場合は、年金の受取人が給与の支払を受ける人か、又はその配偶者)でなければならないこととされていますから注意が必要です。
<その3 証明書類が提出されていなかった場合の年末調整>
Q 社員の中には、生命保険料の証明書を紛失して提出できない人もいます。実際の掛金については預金通帳等で確認は可能とのことですが、このようなケースについては、どのように対応したら良いでしょうか。
A 保険契約が旧生命保険契約に該当する場合は、一契約の保険料が9000円を超えるものについて、それ以外の契約の場合については金額の多少にかかわらず証明書類による確認が求められています。この提出が必要な場合において、証明書類が確認できない場合には、その保険料等は、原則として年末調整では控除の対象にはできないものとされています。
ただし、翌年の1月31日までに証明書類を提出することを条件として、控除をしたところで年末調整を行ってもよいことになっています。この場合、翌年1月31日までに証明書類が提出されなかったときは、その生命保険料を控除の対象としないところで年末調整の再計算を行い、不足額は2月1日以後に支払いをする給与から順次徴収しなければなりませんので、本人から生保会社へ証明書の再発行等を求めさせるなどして対応する必要があります。
<その4 空き家となっている実家の地震保険料>
Q 私は、空き家となっている実家の建物を所有していますが、この建物にかけている地震保険料は控除の対象となるでしょうか。
A 地震保険料控除の対象となる保険料等は、給与の支払を受ける人又はその人と生計を一にする配偶者その他の親族が所有している家屋で常時その居住の用に供するものや、これらの人が有する生活に通常必要な家財のうち一定のものを保険や共済の目的としている損害保険契約等に附帯して締結されるもの又はその契約と一体となって効力を有する保険契約若しくは共済に係る契約に基づいて支払った地震等損害部分の保険料等と規定されています。
質問の場合の実家は「空き家」ということですので、「常時その居住の用に供する家屋」には該当せず、地震保険料控除の対象となる保険料等には該当しないものと思われます。