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プロが教える年末調整 その2 Q&A「年末調整の対象者・年末調整の実施時期等」

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プロが教える年末調整「年末調整のあらましとチェックポイント」
その1 年末調整とは   
  1 年末調整の概要 
  2 年末調整が必要な理由 
  3 年末調整の対象者 
  4 年末調整を行う時期
その2 Q&A「年末調整の対象者・年末調整の実施時期等」
  1 外国人社員と年末調整 
  2 海外出向社員の年末調整 
  3 雇用保険の失業給付を受けていた社員の年末調整 
  4 前職の源泉徴収票が提出できない者の年末調整 
  5 扶養控除を受けるために退職するパートタイマー 
その3 年末調整の手順・事務の概要とその具体例 
  1 年末調整の手順と事務の概要 
  2 年末調整の具体例(甲さんの場合) 
その 4 年末調整の手順・事務の概要とその具体例 とQ&A
  1 扶養控除 
  2 配偶者控除及び配偶者特別控除 
  3 扶養控除・配偶者(特別)控除Q&A 
その 5 扶養控除・配偶者(特別)控除のQ&A(続き)
その 6 各種保険料控除の概要とQ& A 
  1 生命保険料控除 
  2 地震保険料控除 
  3 生命保険料控除・地震保険料控除 Q&A
その 7 各種控除や年末調整に際しての留意点とそのQ & A  
  1 社会保険料控除 
  2 住宅借入金等特別控除 
  3 中途採用者の年末調整
  4 年末調整の具ための申告とマイナンバーの記載 

その2 Q&A「年末調整の対象者・年末調整の実施時期等」

1 外国人社員と年末調整

Q 当社の工場では、外国人社員を相当数雇用しています。これらの外国人社員について年末調整の対象となるのかどうかの判定基準はどのようになっているのでしょうか。

A 年末調整は、給与所得を有する「居住者」で給与の支払者に対して「扶養控除等(異動)申告書」を提出している者の給与を対象に行うこととされています。

 所得税法では、納税者を大きく「居住者」と「非居住者」に分けてその課税の範囲及び課税方法などを定めており、国籍により区分は行っていません。したがって、国籍が外国籍の場合でも日本籍の場合でも、その者が所得税法上の「居住者」に当たるのか「非居住者」に当たるのかにより、年末調整の対象となるかどうかが決まることになります。

 居住者とは、「国内に住所を有する個人及び国内に住所は有しないが国内に現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」を言います。また、非居住者とは、「居住者以外の個人」を言うこととされています。この場合の住所とは、各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定します。

 なお、日本に入国する人の住所の有無については、事業を営み又は従事するために日本居住することになった場合には、日本における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められるときを除き、日本に住所があるものと推定されることになっています。

 したがって、外国人社員であっても、国内に住所を有し、かつ、貴社に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している者については、日本に住所を有する日本人社員と同様年末調整の対象となります。

2 海外出向社員の年末調整

Q 当社では、毎年海外支店への出向のため出国する社員や出向終了により帰国し国内事業所に復帰する社員が何名かいます。これらの年の中途で出国又は帰国する社員の年末調整はどのように行うことになるのでしょうか。

A ① 年の中途で出国し、非居住者となる社員の年末調整

 年末調整は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している居住者について、その年最後の給与を支払うときに行うことになっていますが、海外の支店等に1年以上勤務する予定の人など、年の中途で出国することにより非居住者となる人については、その出向する時までに年末調整を行うことになっています。

 海外勤務のために出向する社員については、出国の日から非居住者として取り扱われますので、居住者としてその年の最後の給与を支払う際に、その年中の出国の日までに支給期の到来した給与の総額を対象に年末調整を行うこととなります。

 なお、この場合の社会保険料、生命保険料、地震保険料等の控除額の計算に当たっては、出国の日までに支払った保険料又は掛金の額が対象となります。

  ② 年の中途で帰国し、居住者となった社員の年末調整

 年の中途で居住者となった人は、その居住者となった日から12月31日までの間に支給期が到来する給与の総額を対象として年末調整を行います。海外勤務を終えて国内事業所に勤務することとなった者については、帰国日以後に支給期が到来する給与の総額を対象に年末調整を行うこととなります。

 なお、年末調整の対象となる給与については「支給期」が帰国後に到来するものとされていることから、その一部に国外勤務期間に対応するものが含まれていても、その全額について年末調整の対象としなければなりません。

3 雇用保険の失業給付を受けていた社員の年末調整

Q 本年10月入社した従業員は、1月から5月は他社に勤務していましたが、その会社を退職後当社入社時までの間は雇用保険の失業給付を受けていました。このように前の勤務先の退職後に失業給付を受けていた者も年末調整の対象になるのでしょうか。仮にこのような者も年末調整の対象となるとしたら、受給していた失業給付金も含めて計算することになるのでしょうか。

A 10月に入社した際に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していた場合には年末調整の対象者になります。この場合雇用保険法により支給を受ける失業給付(いわゆる失業保険金)は、非課税所得とされていますので、年末調整の対象となる給与に含める必要はありません。

ご質問の場合は、前の勤務先から支給された1月から5月までの給与と貴社に入社後支給された10月から12月までの給与の額を合計して年末調整を行うことになります。

4 前職の源泉徴収票が提出できない者の年末調整

Q 当社に今年6月に入社したAさんは1月から5月までは他の勤務先に勤務していたとのことですが、前の勤務先は倒産してしまい1月から5月の源泉徴収票を交付してもらえないとの申し出がありました。ただ、Aさんは1月から5月分の給与明細書を全部保管しているため「支給額」や「源泉徴収税額」なども正確に計算できるとのことです。
  このような場合は、この給与明細書の金額を基に年末調整を行って差し支えないでしょうか。

A 源泉徴収票を提出できない理由が前の勤務先の倒産ということであり、提出できないことに相当の事情があると認められることに加えて、保管している給与明細書から正確な収入金額や源泉徴収税額等が確認できるということであれば、その給与明細書を基に年末調整を行って差し支えないものと思われます。

5 扶養控除を受けるために退職するパートタイマー

Q 当社のパートタイマーのうち数名がこの11月で退職したいとの申し出をしています。理由は12月まで務めた場合には、給与収入が103万円を超えてしまい、夫の扶養控除の対象とならないことによるものです。このような理由で退職するパートタイマーについては退職時に年末調整を行って良いものでしょうか。

A 年末調整はその年の最後に給与を支給する際に行うことになっていますが、いわゆるパートタイマーとして働いている人などが年の中途で退職する場合で、次の要件を満たしているときは、その退職の際に年末調整を行うことができることとされています。

(1)その勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していること

(2)その年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下であること

(3)退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けることがないと見込まれること

その3 年末調整の手順・事務の概要そして具体例 に続きます

執筆者情報

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税理士 小畑 孝雄

昭和41年東京国税局入局、国税庁法人税課、国税不服審判所勤務等を経て平成16年東京国税局法人課税課長、18年同調査第2部長を歴任し19年退官、税理士登録(日本橋支部所属)

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Q 当社の工場では、外国人社員を相当数雇用しています。これらの外国人社員について年末調整の対象となるのかどうかの判定基準はどのようになっているのでしょうか。A 年末調整は、給与所得を有する「居住者」で給与の支払者に対して「扶養控除等(異動)申告書」を提出している者の給与を対象に行うこととされています。 所得税法では、納税者を大きく「居住者」と「非居住者」に分けてその課税の範囲及び課税方法などを定めており、国籍により区分は行っていません。したがって、国籍が外国籍の場合でも日本籍の場合でも、その者が所得税法上の「居住者」に当たるのか「非居住者」に当たるのかにより、年末調整の対象となるかどうかが決まることになります。 居住者とは、「国内に住所を有する個人及び国内に住所は有しないが国内に現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」を言います。また、非居住者とは、「居住者以外の個人」を言うこととされています。この場合の住所とは、各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定します。 なお、日本に入国する人の住所の有無については、事業を営み又は従事するために日本居住することになった場合には、日本における在留期間が契約等によりあらかじめ1年未満であることが明らかであると認められるときを除き、日本に住所があるものと推定されることになっています。 したがって、外国人社員であっても、国内に住所を有し、かつ、貴社に「扶養控除等(異動)申告書」を提出している者については、日本に住所を有する日本人社員と同様年末調整の対象となります。
2019.11.13 19:09:38