プロが教える年末調整 その5 扶養控除・配偶者(特別)控除のQ&A続き
プロが教える年末調整「年末調整のあらましとチェックポイント」 |
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その1 年末調整とは 1 年末調整の概要 2 年末調整が必要な理由 3 年末調整の対象者 4 年末調整を行う時期 |
その2 Q&A「年末調整の対象者・年末調整の実施時期等」 1 外国人社員と年末調整 2 海外出向社員の年末調整 3 雇用保険の失業給付を受けていた社員の年末調整 4 前職の源泉徴収票が提出できない者の年末調整 5 扶養控除を受けるために退職するパートタイマー |
その3 年末調整の手順・事務の概要とその具体例 1 年末調整の手順と事務の概要 2 年末調整の具体例(甲さんの場合) |
その 4 年末調整の手順・事務の概要とその具体例 とQ&A 1 扶養控除 2 配偶者控除及び配偶者特別控除 3 扶養控除・配偶者(特別)控除Q&A その 5 扶養控除・配偶者(特別)控除のQ&A(続き) |
その 6 各種保険料控除の概要とQ& A 1 生命保険料控除 2 地震保険料控除 3 生命保険料控除・地震保険料控除 Q&A |
その 7 各種控除や年末調整に際しての留意点とそのQ & A 1 社会保険料控除 2 住宅借入金等特別控除 3 中途採用者の年末調整 4 年末調整の具ための申告とマイナンバーの記載 |
その5 扶養控除・配偶者(特別)控除のQ&A続き
<その2 「生計を一にする」の意義>
Q 扶養控除の要件の中に、給与の支払を受ける者と「生計を一にする」とする要件がありますが、「生計を一にする」とは具体的にはどのような状態をいうのでしょうか。
A 「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではありません。したがって、例えば、修学あるいは療養の都合で別居している場合であっても、常に生活費や学資金、療養費等の送金が行われている場合や、修学等の余暇には起居を共にすることを常例としているような場合には、生計を一にしていることになります(所基通2-47(2))。
<その3 同居を常況としているかどうか>
Q 社員甲と乙は、それぞれ母親及び父親と同居して扶養していましたが、今年に入り次のような状態となっています。甲及び乙とも昨年までは「同居老親」として控除を受けていましたが、今年も「同居老親」としての控除が受けられるのでしょうか。
甲…母親(85歳)。骨折のため6ヵ月以上入院状態。年末までに退院のメドはたっていない。
乙…父親(90歳)。老衰が進み、家族での介護が困難となり近所の老人ホームに入所。週末や連休などには自宅に帰りなるべく家族と一緒に過すこととしている。
A 同居老親等に係る扶養控除の特例は、「本人又は配偶者のいずれかとの同居を常況している」ことを条件としています。
「同居を常況としている」とは、経済面で生計を一にすることに加え、扶養親族等を施設に預けずに、在宅により面倒をみていることを意味するものと考えられます。この場合、病気治療のため入院している場合など特別の事情により一時的に別居している場合には「同居を常況としている」ものと判断されます。
したがって、甲さんの母親の場合、12月31日の現況においては入院中であっても、一時的別居と認められ同居老親に該当するものと思われます。また、乙さんの父親の場合、一時的に自宅に戻って生活を共にすることはあっても「同居を常況としている」とまでは言えないと思われ、同居老親には該当しないことになります。
<その4…外国人社員の国外居住扶養親族に係る控除手続>
Q 当社の外国人社員H氏は、海外の実家に子供と配偶者を残して日本に単身赴任しています。この外国人社員(税法上は居住者)が本国に居住する家族について扶養控除や配偶者控除を受けるためには、特別な手続きが必要と聞きましたが、そのあらましを説明してください。
A 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける場合には、次の「親族関係書類」及び「送金関係書類」を添付又は提示する必要があることとされています。なお、親族関係書類又は送金関係書類が外国語により作成されている場合には、訳文を添付等することとされています。
① 親族関係書類
イ 親族関係書類とは、次のいずれかの書類をいいます。
(イ)戸籍の附票の写しその他国又は地方公共団体が発行した書類でその非居住者がその居住者の親族であることを証するもの及び親族の旅券の写し
(ロ)外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類で、その非居住者がその居住者の親族であることを証するもの(その親族の氏名、住所及び生年月日の記載があるものに限ります。)
ロ 具体的な取扱い
(イ)日本国籍を有する国外居住親族
社員の子が長期留学等により非居住者となった場合など、その国外居住親族が日本国籍を有しているときは、戸籍の附票の写しなどの親子関係を証明する書類とその子の旅券の写しが親族関係書類となります。
(ロ)外国人社員の国外居住親族
外国政府等が発行した戸籍謄本、出生証明書、婚姻証明書等によりその社員の親族であることを確認することになりますが、複数の関係書類によらなければ親族関係を証明できないこともあります。
(ハ)非居住者である年少扶養親族
年齢16歳未満の年少扶養親族は、控除対象扶養親族とはされませんので、非居住者である年少扶養親族が同居特別障害者、特別障害者又は一般の障害者控除の適用を受ける場合を除き、親族関係書類の添付等は必要ありません。
② 送金関係書類
イ 送金関係書類とは、その年における次の(イ)又は(ロ)の書類で、その非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるためのその居住者からの支払が、必要のつど、行われたことを明らかにするものをいいます。
(イ)金融機関が行う為替取引により、その居住者からその親族へ向けた支払が行われたことを明らかにする書類
(ロ)いわゆるクレジットカード発行会社が交付したカードを提示して、その親族等が商品等を購入したこと及びその商品等の購入代金に相当する額をその居住者から受領したことを明らかにする書類
ロ 留意事項
国外居住親族が配偶者と子の場合、配偶者にまとめて生活費や教育費を送金等しているときは、その送金関係書類は配偶者のみの送金関係書類となりますので、子に対する送金関係書類が別に必要となります。
<その5 死亡した父親の配偶者控除の対象であった母親を扶養控除の対象とすることの是非>
Q 当社の社員甲氏の父親は今年5月に死亡しました。父親生存中、母親は父親の配偶者控除を受けていました。父親死亡後は甲氏が生活費を負担しているため、今年の年末調整でこの母親の扶養控除が受けられないかという相談がありました。このような場合は甲氏の母親は甲氏の扶養控除の対象となるのでしょうか。
A 年の途中で死亡した人の控除対象配偶者や扶養控除対象親族であった者についても、その後にその年中において他の親族の扶養親族等に該当する要件を備えているということであれば、その人については、その他の親族の扶養控除の対象になるものとされています。
したがって、甲氏の母親について甲氏と生計を一にしている事実があり母親の合計所得金額が38万円以下であるなどの要件を満たせば、甲氏の扶養親族にも該当することになります。