HOME コラム一覧 記憶に残る事例Part2 もっと多くの指導されるべきためになる話(その4 全4回)

記憶に残る事例Part2 もっと多くの指導されるべきためになる話(その4 全4回)

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不正検査が成功する前段階での調査プロセス(Researching processes before fraud examination pays off)

 ザックは、本件は根本的な真実を強調していると言う。不正調査は最初の申し立てより多くの結果をもたらすということである。
 「また、適切なリスク評価を実施し関連する手続きを調べることは不正検査の重要な部分です」と彼は言う。「我々は、コントローラーが個人の支出をコーポレートカードで支払っているという申立てを調査していた時、我々はカードの費用明細だけを見て、そこで止めることもできたのです。しかし、それでは不正の一部を見つけただけで、給与支払いの不正や不実な人事部従業員との関係などは発見できなかったでしょう。ですが、最初にコーポレートカードと経費精算の手続きが本来どのように機能すべきかを知ることによって、我々は、彼の費用精算報告書に入力をしている思いがけない人物のユーザーIDという異常をデータの中に見つけ、これがコントローラーと人事部従業員の関係の発見に結び付いたのです」とザックは締め括った。

グローバルデジタルフォレンジック分析の挑戦(Challenges of a global digital forensics analysis)

 デジタルフォレンジックの専門家のウォルト・マニング(Walt Manning, CFE)、Investigation MD社の社長は、不正のグローバルな性質を明確にした一例を鮮明に思い出す。「この事例は、私にとって多言語でのフォレンジック調査を実施するという挑戦であり、記念すべきものでした」とマニングは言う。彼は、ACFEで「Obtaining, Managing and Searching Electronic Evidence」というコースを教えている。「我々が該当のデータを探し当てるにはポルトガル語、スペイン語、英語の3か国語の書類とコミュニケーションが必要でした」と彼は言う。「すべての該当する証拠を特定し、調査担当者のレビューのために正確な翻訳を提供するためプロの翻訳者の支援が求められました」
 この事例は2000年から2003年にかけて続いた。全米フォーチュン500に名を連ねる大企業のブラジル子会社がマニングのクライアントであったが、そのCEOが、自分の雇用主と直接競争する会社を自分の妻の名義で設立した、とマニングは言う。「同時に、彼と組織の他の人間は組織犯罪メンバーの一味となり税控除の不法売買に加わったのです」と彼は言う。
 「親会社の事業の知見を利用することで、彼は競合する会社は、多くの仕事を盗ることができると確信したのです」とマニングは言う。「税控除の取引に関する監視はありませんでした。顧客は全体の損失額を決して明らかにしませんでしたが、それは数百万ドルに及びました」
 マニングによれば、顧客は当初いくつかの小規模な不正を疑っていた。「デジタルフォレンジック分析期間中に回復された電子メールや他の書類により、調査員は不正の規模は彼らが疑っていたより数段規模の大きいものであることに衝撃を受けました」と彼は言う。
 調査員はブラジルの弁護士事務所と共同ですべてのインタビューと現地での証拠集めを実施した、とマニングは言う。「証拠が多いため、当社は調査官がすべてのデジタル証拠を棚卸しトレースするための実施計画書の作成を支援しました」。
 マニングによれば、彼のクライアントは犯行者が起訴されたかどうかに関して彼に連絡してこなかったが、被害を受けた企業はブラジルの裁判制度での民事手続きを経て損失のほとんどを回復できた。

多言語の挑戦(Challenge of multiple languages)

 「もちろん、ビジネスのグローバル化の進展により、不正検査士は他の言語による書類やコミュニケーションを見て驚いたりしてはいけません」とマニングは言う。「彼らは相談ができ、翻訳や通訳をしてくれる信頼できる先を見つけたいのかも知れません。多言語は電子データのデジタルフォレンジックとEディスカバリによる電子データの検索の両方に挑戦をもたらします」 
 「海外子会社を持つ会社は子会社の取引相手の経歴調査を通じ経営状態を適切に監視することを確実にすべきです」とマニングは述べる。

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初出:FRAUDマガジン50号(2016年6月1日発行)

この記事の執筆者

Dick Carozza, CFE
FRAUDマガジンの編集長である。
翻訳協力:阿部 稔、CFE、CIA

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2019.01.25 16:31:44