HOME コラム一覧 記憶に残る事例Part2 もっと多くの指導されるべきためになる話(その1 全4回)

記憶に残る事例Part2 もっと多くの指導されるべきためになる話(その1 全4回)

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 ACFEの教職員を務める会員は、読者が利用可能な実用的原則と共に現場からの注目すべき事例を披露してくれる。
 教育者であるACFEの会員は皆、自分の生徒にあるものが必要だと考えている。それは事例史である。それはなぜか?なぜなら、不正検査士がどのように被疑者とインタビューし、証拠を発見し、帳簿を精査し、直感力を利用したかという本当にあった話が教育上有益だからである。 
 あなたは大学を卒業したというだけで他の人が不正検査をどのように実施したのかについて読む意欲を無くしてはいないだろうし、次の案件に使えそうな術をつかむことにもなるだろう。
 では、ACFEの教職員の過去の事例から始めましょう。お楽しみください。

偽造署名のその先(Forged signature leads to much more)

 デビッド・シュレーダー(David Schrader)は、Roper Industriesの一部門であるDAT Solutionsの副社長でありCEOの確実な後継者と思われていたが、2014年1月21日に自分の経費精算書へCEO名で偽造署名するところを目撃された。「同社は同年1月31日再発防止のため私の会社を起用し事務処理と手続きを見直したのです」とAcuity Forensics社の代表であるティファニー・コーチ(Tiffany Couch, CFE, CPA/CFF)は話す。(彼女はACFEの”Principles of Fraud Examination”を教えている)。「彼らは不正行為が行われたとは考えておらず、私にこれは不正ではなく判断ミスであることを立証してもらいたいと要請しました」と彼女は言う。
 「我々は現場手続きの初日にこれが不正であることを発見しました」とACFE理事であるコーチは語る。「最初にシュレーダーのスケジュール帳を要求し、その出張精算書との照合を行ったところ、そこには相違がありました。問題はシュレーダーが購入したとしているマーケティング関連資料の8,610ドルに関して私が販売業者に確認の電話をしたときに発覚しました。販売業者の担当者が『お客様、私共が8,610ドルで売っているものは何もございません。当社の販売カタログにはそのような名前の資料はございません』と答えた時に問題を認識しました」

「判断間違い」(‘Bad judgment’ call)

 コーチの最初のインタビューはCEOとのもので、シュレーダーの生活習慣、経歴や一連の出来事が明らかになった。しかし、同時に最大の鍵は彼女によると、CEOが次のように述べたことである。「コーチさん、私はデビッドが自分自身で買掛金システム上5万ドルまでの取引の承認権限を有しているのになぜこのようなことをするのかが理解できません。すべてのマーケティング関連費用は私の署名なしで買掛金処理ができたはずです。私は理解に苦しみます。彼のそのような判断間違いにがっかりしました」
 シュレーダーは、10年間に160万ドルの経費精算をしていた。コーチ曰く「我々はすべての領収証を一つ一つ精査し、彼がマーケティング関連資料や会議などに同じ納入業者を繰り返し何度も使用して費用清算していたことを発見しました。我々は『確認レター(confirmation letter) 』という監査技術を使い費用が実際に発生したものかどうか確認しました。私が電話をした最初のベンダーについて、シュレーダーは29万ドル分の領収証を提出していましたが、確認書によって、物品とサービスを合わせて実際には1,500ドルしかその時期に購入していないことがベンダーからの確認書で判明しました。ほとんどの納入業者も同様の結果でした」。
 コーチは領収証のコピーを業者に送付したが、それらはシュレーダーの提出した書類がどのように偽造されたのかを実地検証する上で非常に役立ったと言う。
 シュレーダーのラップトップPCと会社提供の電話は重要な証拠であったとコーチは述べる。「私たちは彼のPC上に偽造の証拠や、彼の家計の現金不足とその不足分を常に次の不正経費精算で埋めていたことを示す「予算(budgets)」のコピーを発見しました」
 電子メールは連邦政府相手の通信詐欺を証明するのに重要であったと彼女は言う。「彼は経費精算のいくつかを買掛金担当者との電子メールのやり取りによって処理していました。結果として、彼は通信詐欺で起訴されました」

FBIとの早期の協業(Working with the FBI early in case)

 「我々の顧客は不正検査が終了したら連邦捜査局(FBI)に引き渡すことを承認しました」とコーチは言う。「我々はFBIに、我々の実施した内容、ベンダーからの確認書、調査を数週間で終了する計画、それは100万ドル以上の損失を報告する成果物と明白な証拠のバインダーを提出することの約束を伴うものでしたが、それらを提示しました」

(その2に続く)
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初出:FRAUDマガジン50号(2016年6月1日発行)



この記事の執筆者

Dick Carozza, CFE
FRAUDマガジンの編集長である。
翻訳協力:阿部 稔、CFE、CIA

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2019.01.08 16:32:53