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記憶に残る事例Part1 指導されるべき簡潔で力強い物語(その3 全4回)

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 「しかしながら、FBIが彼女のコンピュータを押収した時、私達のインタビューの直後に、『フレディ・マックが依頼している書類の作成を開始しなければならない』と彼女によって書かれた電子メールが発見されたのでした」

今後に応用できる教訓(Lessons learned for future application)

 ブローリーは面接調査の後、直ちに、完璧に面談内容を何もかも文書化することだとアドバイスしている。「開発業者への面談の際の同席者は面談後2週間経ってはじめてインタビューノートを作成したのですが、被告側の弁護士は、その証言の際にこの点をついてその面談同席者の信頼性に問題あると主張したのです」と彼女は語る。
 彼女は、不正検査士はすべての証拠とその管理の一貫性を保全しなくてはならない、なぜなら事件の調査や起訴手続きに何年もかかれば、誰も証拠源を記憶に止めておくことなどできないのだからと言う。
 ブローリーは、更に「法執行機関と良好で前向きな相互に恩恵をもたらす関係を維持しておくべきです。実害が発生するまで彼らは手を下すことはできないにしても、連絡を絶やしてはいけません」と言う。
 彼女の最良のアドバイスは、粘り強さである。「他の多くのホワイトカラー犯罪(知的犯罪)と同様に、住宅ローン不正は複雑で多くの時間とリソースが必要です。しかし諦めてはいけません。たとえ込み入った調査を行ったとしても望んだような結果、つまり刑事告訴、民事訴訟に持ち込めないと、とてももどかしく感じます。しかし、試してみない限りどうなるかは誰もわからないのです。私はこの事例への取り組みは多くの面で他と異なっていると感じました」。最後に彼女は「話がうますぎるようなとき、実はそれは実際にうますぎるのだ」という自身の勘を信じることだと語った。

すこぶる有益な最初の事案(Invaluable first case)

 ジャネット・マクハード(Janet M. McHard, CPA, CFE, MAFF, CFF)は約20年前の事案に立ち返った。その時、彼女は訴訟サポートシニアスペシャリストとしてメイナーズ有限責任会社(Meyners + Company LLC)という地域の会計事務所で働いていた。(彼女はACFEの監査人や内部調査人に対するいくつかのコースで講師を務めている)
 現在マクハード会計コンサルティング有限責任会社の共同設立者であるマクハードはスキミングによるこの不正事案を思い出した。それは非営利の医療機関で、(CEOと共謀していた可能性もあった)CFOが自らの買い物中毒の費用を賄う必要に迫られて起こしたものだった。(そのCFOはその他に、経費精算、幽霊社員、個人購買に関する不正、の3つをはたらいていた)。マクハードは、その不正の全被害額を突き止めることはなかったと言う。
 「その医療機関の取締役会はCEOを業務命令違反で解雇しました。そして同じ日、取締役会はCFO職についても廃止しました。この不正は、コミュニティメンバーからの内部通報とCEOとCFOの辞職後に隠していたことを話した従業員によって発覚しました」と彼女は語る。

悪行に対する報いがCFO逮捕につながる(Bad karma eventually caught CFO)

 「我々は、会計や請求担当への面接を行い、保険会社へ情報を依頼し、医療機関あての支払いについて、銀行口座への着金の追跡を試みました。その結果およそ10万ドル相当の金額が既知の医療機関のどの口座にも実際には入金されていないことが判明したのです。メディケイド(訳注:連邦と州が負担し、州が運営する低所得者向け医療費補助制度)からの調査人と共同して取り組んだにも関わらず、小切手がどこで現金化されたのか調べるための支払済み小切手のコピーを入手することができなかったのです」と彼女は言う。
 マクハードは、メディケイドからの調査チームは、調査の半ばで証拠不十分であり、そのため訴追できなかったと語る。彼女は「しかしながら、後になって、私は容疑者が別の勤務先における全く別の不正事案で起訴され、有罪判決を受けたことを知ったのです」と述べた。
 「初めてのこの事案で経験豊かな警察官とともに働き、また大陪審の過程を通して召喚状で得られた証拠から実に貴重な多くのことを学ぶことになりました」とマクハードは語った。
 「医療機関の何人かの従業員は不正があるのではないかと疑っていたものの、誰もCEO,CFOの二人が関与しているかも知れないと申し出ることができませんでした。不正発覚後には、その医療機関ではホットラインを設置し、取締役や上席経営陣に、直接社内通報ができるようにしました」と彼女は述べる。

(その4に続く)
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初出:FRAUDマガジン49号(2016年4月1日発行)

この記事の執筆者

Dick Carozza, CFE
FRAUDマガジンの編集長である。
翻訳協力:張間 善次郎、 CFE

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