目次 特定非営利活動促進法の改正について


【特定非営利活動促進法の改正について】

 平成14年12月11日に、第155回国会において、特定非営利活動促進法の改正法案が可決されました(平成14年第173号)。この改正案は、NPO議員連盟が同年5月に取りまとめていたものですが、その後の政界の流動的な動きの中で、審議される時期のめどがつかず棚上げされていたものが急遽可決に至ったものです。この改正は平成15年5月1日から施行されます。また認定NPO法人制度についても改正される予定です。

 そこで、本コンテンツに係る改正点について、ここで列挙しておきますので、本文を読み進めるに当たっては留意ください。


1 特定非営利活動促進法の改正の概要

(1) 活動の種類の追加

 特定非営利活動の一層の発展を図るために、新たな活動が追加されました。


(2) その他の事業の明確化

 本来の事業に支障がない限り「その他の事業」を行うことができることを明確化するとともに、「その他の事業」で生じた収益は、本来事業のために使用しなければならないものとされました。また「その他の事業」に関する会計は、特別会計として区分経理しなければなりません。


(3) 予算準拠の規定の削除

 「収入及び支出は予算に基づいて行うこと」という予算準拠の規定が削除されました。


(4) 認定NPO法人

 特定非営利活動促進法において租税特別措置法の定めるところにより、認定NPO法人に対する寄付について寄付金控除等の特例の適用がある旨が明確化されました。


2 特定非営利活動促進法の改正の具体的内容について(本コンテンツ関係)

(1) その他の事業の明確化

 改正前の第5条は「収益事業」についてのみ定めていました。しかし、NPO法人は、特定非営利活動に係る事業(本来事業)と収益事業の他に、不特定多数のものの利益の増進に寄与することを目的としていても従来定められていた分野の活動には該当しない活動や、互助的な活動なども、NPO法人の主たる目的を損なわず、宗教活動や政治活動の制限などの諸規定に反しない限りその他の事業として実施しても差し支えはないと解されてきました。

 今回の改正では、これを明確にし、収益事業とその他の事業を合わせて「その他の事業」として定め、これを本来事業に支障がない限り行うことができるとし、この場合において収益を生じたときは、これを本来事業のために使用しなければならないものとされました。

 従来は「特定非営利活動にかかる事業」の他に「収益を目的とする事業」「その他の事業」に分けられていましたが、改正後は、後者の2つを「その他の事業」としてひとくくりにすることになります。

 なお、現在収益事業以外のその他の事業を行っている法人については、経過規定により、この改正規定は平成16年4月30日まで適用を猶予されています。

 本コンテンツのI−10の「収益事業」という記述については、「その他の事業」と読み替えてください。なお、この改正はNPO法上の事業区分に関しての改正ですので、税務上の収益事業の考え方には変更ありませんのでご注意ください。


(2) 予算準拠の規定の削除

 NPO法人では特定非営利活動又はその他の事業が多種多様にわたっており、限りある収入をいかに効果的に使用するかという「資金消費型」の活動だけでなく、「資金獲得型」「独立採算型」の活動も多く行われています。また活動が機動的で予定しがたい場合もあります。そのような活動では予算に縛られると動きがとりにくくかえって活動を阻害する側面があることから、この規定を削除する改正がなされたと考えられます。

 現行法においては予算準拠が規定されていますが、予算の制定は社員総会に限らず、理事会など他の機関で決定することができますので、実質的には各法人の活動に応じ、機動的に予算編成ができることになっていました。今回の改正はさらに機動的に資金を使用できるようにするものと考えられます。

 今回の改正後において注意しなければいけないことは、改正がなされようがなされまいが、会費、寄付金、補助金といった資金の提供者に対しての説明責任は変わらないということです。つまりお金を何に使うかの予定も知らされなくて、ただお金を提供してくださいとか、また活動後に予定と実績の違いを説明しないようでは将来の資金提供に悪影響が出るおそれがあります。したがって法律上義務づけられているかどうかにかかわらず、特に資金消費型の活動においては予算の作成と結果報告が必要と思われますが、それを行うかどうかは、そのような手続や情報開示が法人の将来も含めたミッション遂行のために役立つか否かという観点から、各法人が決定することになります。

 今回の改正では予算準拠の規定が削除されただけで、予算書を作成してはいけないということではありません。しかし予算書を作成してもそれに準拠しなくてよいならば、その予算書は資金の受託責任という観点からは十分な機能を果たしていないといえます。したがってこの点を重視する場合は、法人において予算の作成及び準拠について規定することは制限されていませんので、従来どおりであっても問題ありません。

 日本における典型的な非営利会計では、収入に限りがあるので資金の収支が重要と考えて資金の出入りの報告を収支報告書で行っています。その場合には場当たり的な資金の使用にならないように予算を事前に計画するということが行われています。一方、企業会計では予算書を作成しないで、資金ではなく正味財産の増減理由を説明した損益計算書が作成されています。今回の改正は、予算書は作成しなくてよいのに資金の出入りは重要であるとして、損益計算書ではなく収支計算書を作成するというたすきがけになっている点が、特異な点です。

 今後の方向としては、中間法人のように企業会計と同じようにするということが考えられます。この場合多くの方がむずかしく感じている収支計算書と貸借対照表の関係の問題がなくなり、世間一般に理解が浸透している商業簿記で記帳、報告できるというメリットがあります。他方、現在検討が進められている公益法人会計と同等のものにするということも考えられます。

 なお、法律上は、設立時と定款変更時に所轄庁に対して予算書の提出が義務づけられていますので、予算書についての規定が全くなくなったのではありません。
ここで作成される予算書は、準拠義務がありませんので、企業計画を補足する単なる説明ということになります。

 以上のように、今回の改正において予算準拠の規定が削除されましたので、特にI−3に関しては、予算準拠が強制されないことを前提に読み進めてください。また、その他の記述でも収支予算書は、設立時と定款変更時以外は作成が強制されないということをご理解のうえお読みください。

 

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