目次 I-1


I.NPO法人の会計


I−1 会計の必要性と目的

Question
NPO法人において、会計はどの程度手間をかけて処理すべきでしょうか。


Answer

 NPO法人の会計について、法律上は、証券取引法が適用される上場企業などと比べるとはるかに大枠しか規定されていません。ごく基本的なことだけがNPO法に規定されているだけで、どの程度詳しく報告するかなどについては各法人の判断に任されています。

 そこで、各法人が考えなければいけないことは「何のために、誰のために会計を行っているか」ということです。「法律に書いてあるから、仕方なしに毎年決算書を作って所轄庁に届けている」と考えるとしたら、それは法人の活動の発展に大きくマイナスであるといわざるを得ません。法律に規定されていることは最低限のことであり、それを遵守することは当然として、各法人にあった形で会計を充実させていく必要があります。

 会計は決して所轄庁のためだけに行うのではなく、一つは所轄庁も含め外部の関係者のためと、もう一つは法人そのもののためにあります。外部の関係者に向けて何のために報告するかということですが、まずは資金提供者に対する報告です。会費や寄付金を支払った人に対してその資金がどのように使われたのかを報告することは当然の義務です。またきっちりとした会計報告を行うことによって次年度にも会費や寄付金を支払っていただくことにつながります。さらに外部関係者として意識する対象は、お金ではなく労力という面で寄付を行っているボランティアなどです。これらの人に会計報告を通してNPO法人の活動を十分に理解してもらうことは価値あることです。さらに加えて、透明性のある会計報告は将来の会員、寄付者、ボランティアの獲得につながるといえます。

 次に法人自身についての目的ですが、会計は法人の活動を金銭面から表していますので、法人の活動と会計はある意味で表裏一体といえます。したがって、会計報告を単なる過去の報告だけとして終えるのではなく、次年度以降の効果的、効率的活動に活かすことが大切です。

 以上のことから勘定科目や様式なども、内閣府などの様式を単純に使用するのではなく、それぞれの法人の状況に応じてアレンジし、関係者の利用に役立つよう工夫することが望まれます。

 以上を一言でいうと、「会計はNPO法人のミッション遂行に役立つためにある」ということです。

 

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