目次 I-4


I−4 会計の原則と処理基準

Question
NPO法人で会計を行う際に規範となるようなものがあれば教えてください。


Answer

1 会計の原則

 NPO法人においても、法人の活動結果を法人の構成員や寄付をしてくれた人たちに対して説明するために、あるいは法人の活動を評価しそれ以降の活動を合理化、効率化するなどの目的のために会計というものが必要となります。

 そこで、NPO法人の会計に関して、NPO法では27条で「会計の原則」、5条で「区分経理」、28条、29条で「情報公開」についての規定をおいて守るべき原則を定めています。

 ここでは、会計の原則のうちI−5で説明する「正規の簿記の原則」以外の原則について説明します。


(1) 予算準拠の原則

 一般の営利を目的とする企業においても予算は作成されますが、それはあくまで企業の自主的な利益管理のためで、法律によって作成が義務づけられているわけではありません。
 一方、NPO法人では法27条1項において予算準拠の原則が定められており、予算を作成しそれに基づいて活動を行うことが求められています。

 これは、NPO法人は利益の追求が目的ではなく、それぞれの法人が定款で定めた目的を達成するために、あらかじめ法人のメンバー(社員)等が承認した事業計画に基づいて資金を調達し、各種の事業をできる限り計画どおりに実施することが求められているからです。

 すなわち、法人の活動形態において、NPO法人では、資金提供者と便益の受益者が異なるという場合も多くあり、資金提供者に対しては計画に従って活動を実施することで、資金提供を受けたことにより生ずる責任をはたすことになるといえます。

 したがって、事業計画に基づいて作成した収支予算にできる限り添って活動することが必要で、事業の変更等のため、やむを得ず収支予算を超過するような場合には、予算超過のまま放置するのではなく、後に説明するような適切な手続を経て予算と実績との整合性を保つ必要があります。


(2) 真実性・明瞭表示の原則

 法27条3項に定められているこの原則は、まず財産目録等の計算書類は、会計簿に基づいて誘導的に作成すること、さらに作成された計算書類は法人の財産や収支の状況に関して真実の内容を表示すること、また、計算書類の勘定科目や様式などは、利害関係者等の判断を誤らせないように明瞭であることを求めているものです。


(3) 継続性の原則

 法27条4項に定められているこの原則は、NPO法人が選択可能な会計処理の方法からいったん採用した方法は、正当な理由がない限り変更することができず、継続して適用することを求めているものです。

 これは、いずれも認められた会計処理の方法であっても、年度ごとに法人の意思で自由に変更可能であると各決算期の比較が困難となり、意図的に会計情報を操作する余地が生じてしまうからです。


2 NPO法人の会計処理基準

 公益法人、社会福祉法人等については、会計に関する基準として、公益法人会計基準や学校法人会計基準等がありますが、NPO法人についてはそのような基準は今のところ定められておらず、作成する事業報告書等の様式も決められたものはありません。

 しかし、規定がないからといってどんなものでもよいというのではなく、メンバー(社員)や寄付者といった法人に関係する人たちへの説明、資源の合理的、効率的利用等といったNPO法人における会計の目的をはたすように、各法人が適切な会計処理方法を採用する必要があります。NPO法人の会計処理についても公益法人と同様な処理をすることが考えられますが、現行の公益法人会計の処理の中には、全てのNPO法人にそのまま当てはめるには複雑すぎるものもあります。

 また、NPO法人は活動の内容や規模ともに公益法人に比べて多種多様であると考えられますので、会計処理はそれぞれのNPO法人にあった処理方法を選択することが望ましく、その後も、各NPO法人の活動内容の変化や税法の改正等に適応するように、変更していく必要があるでしょう。

 

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