目次 I-5


I−5 正規の簿記の原則と複式簿記

Question
正規の簿記という言葉をよく聞くのですが、それは複式簿記のことなのですか。


Answer

1 会計の原則

 I−4でも説明したとおり現時点で、NPO法人が従うべき会計の原則として、法27条において「会計の原則」が定められています。

 正規の簿記の原則というのは、27条「会計の原則」の中に定められている原則の1つで、具体的な条文は次のようなものです。

第27条(会計の原則)
 特定非営利活動法人の会計は、この法律に定めるもののほか、次に掲げる原則に従って、行わなければならない。
 収入及び支出は、予算に基づいて行うこと。
 会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。
 財産目録、貸借対照表及び収支計算書は、会計簿に基づいて収支及び財政状態に関する真実な内容を明りょうに表示したものとすること。
 採用する会計処理の基準及び手続については、毎年(事業年度を設けている場合は、毎事業年度)継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。

 ここでは4つの会計処理に関するルールが定められています。
すなわち、簡単にいうと、次のとおりです。

 (1) 予算準拠の原則…………… 予算を作成してそれに添って活動すること
 (2) 正規の簿記の原則………… 正しく記帳すること
 (3) 真実性・明瞭表示の原則… 真実な内容をはっきりとわかりやすく表示すること
 (4) 継続性の原則……………… 継続して同じ処理をすること


2 正規の簿記の原則

 このうち、「正規の簿記の原則」の具体的な内容までは、法律では規定されていませんが、正規の簿記の原則を構成する要件として、一般的には以下の3つがあげられます。

 ・記録の網羅性……… 全ての取引はもらさず網羅的に記録されること
 ・記録の検証可能性… 全ての取引は事実を立証しうるだけの客観的証拠に基づいて記録されること
 ・記録の秩序性……… 全ての取引は秩序正しく組織的にかつ相互に関連して記録されること

 したがって、法人の作成する会計簿が上記の要件を満たしていれば正規の簿記の原則に従っているといえますので、その記帳方法が単式簿記であるか、複式簿記であるかは、正規の簿記の原則に従っているかどうかとは直接的には関係しないことになります。

 記帳方法として、単式簿記を採用するか、複式簿記を採用するかは、法人が取引の状況等を考慮して選択すればよいということになりますが、その際、正規の簿記の原則に従わなければならないことを考えれば現預金以外の資産負債がほとんどなく、入出金もそれほど頻繁ではなく現預金によるものがほとんどといった法人以外は、複式簿記による方が上記の3つの要件を満たしやすく、検証の容易さなどを考えれば、効率的ではないでしょうか。

 また、近年普及してきた一般企業向けのパソコン会計ソフト等を利用すれば、複式簿記での記帳もそれほど手間をかけずにできると思います。

 

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