フラット型組織 従来の日本企業においてピラミッド型組織が定着した理由と経済環境には密接なつながりがあります。戦後50年あまりの間、日本は鉄鋼や自動車といった重厚長大な産業に取り組む企業を軸に大きく発展しました。このような経営環境下では、ある特定の製品を市場に送り込むことが目的で、その目的のために大勢が力をあわせ、効率的な分業を行うことが成功要因でした。 そのために、トップの意向が数千人・数万人にも及ぶ現場ラインの従業員にまでくまなく伝わる必要があるため、指揮命令系統が組織に組み込まれていました。うまく組み込まれていることが企業の成功要因の一つとして長い間伝わっているために、ピラミッド型組織は広く定着していったのです。しかし、いつの時代にも通用する普遍的な組織体制は存在せず、その時代、事業環境に応じて最適な組織体制というのは変化していくものなのです。 80年代に入ると、国内における重厚長大的産業の成熟と共に顧客ニーズの高度化・多様化が始まり、企業はそうしたニーズに応えるべく多元的な対応が迫られるようになりました。(少品種多量生産から多品種少量生産へ)このような状況下で組織にとって必要なのは新技術やノウハウを企業内に蓄積することや、蓄積された経営情報を新商品やサービスの開発に有効活用するシステムなのです。このような環境に適した組織体は従来型のピラミッド型の対極にあるフラット型組織なのです。
この考えが叫ばれ始めた80年代には、「グループ(事業部)制」「プロダクト・マネージャー制」と呼ばれていました。この時代のフラット型組織への期待は迅速な意思決定を促し、中間管理職の活性化を実現するというものでした。 しかし、90年代に突入してからの「組織のフラット化」は想像を超える勢いで進展し、情報システムのダウンサイジングの流れに大きく影響を受けているという点で当初の「フラット型組織」とは内容が異なってきております。93年頃から日本でもよく耳にするリエンジニアリングという考え方は現在の組織のフラット化に反映されています。リエンジニアリングは単に業務をグループ制にするだとか職階を廃止するだとか、そういった部分的な意思決定にとどまらず、経営を全体的視野から根本的に見直して、設計段階をゼロの時点から再構築することによって経営効率を高めていく手法です。この過程において情報機器を活用したリレーション型組織を構築し、環境の変化を的確につかみ、指揮命令が迅速に反映されるような組織を形成していくことで、フラット化につながっていくのです。 フラット型組織運用のための注意点 管理職能力の強化 …ピラミッド型組織の管理職は情報伝達力や調整力といった能力が非常に重要になってきますが、フラット型組織では権限が萎縮されるため、独自の計画立案力、判断・決断力・行動力という経営者感覚が重要になってきます。そのため、管理職に関する人選と能力開発は重要なカギになります。 コミュニケーション手段の確立 …現場単位での意思疎通や行動力が強化されていくので、日々の業務という面では機動力が増加します。しかし、経営政策に変更が生じたり新業務導入の際に、本社の意向が末端に伝わりづらいといった状況に陥りがちです。また、意思決定が迅速になる反面、全社的な視点からのチェック機能が弱くなる、という面もあります。 この種の問題を解消していくためにも、フラット型組織はピラミッド型組織以上に情報ツールをうまく活用したり、人的交流を積極的に行ったりすることによってグループ・組織を越えた情報交換を心がけ、全社的な整合性を保つことが重要です。 |