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 7.中小企業の活力ある組織作りを考える
1.企業組織を考える  2.企業組織を考える2  3.フラット型組織の導入  4.戦略的組織の形成方法
5.生産性の向上を図る  6.生産性の向上を図る2  7.活力ある組織作り  8.問題児の傾向と対策

望ましい組織とは何か

 企業にとって理想的な組織形態は「アメーバ型の組織」だとよく言われています。京セラの「アメーバ経営」は有名ですが、その組織には部課長制度がありません。同社ではアメーバとよばれる5、6人〜数十人のチームが何百と組織され、各アメーバが経営に関して大きな裁量権を持って自分の携わる仕事の責任を負う、というシステムを採用しています。たとえば、新商品開発の場合、既存のアメーバから集まった人材が新しいアメーバを形成したり、アメーバ同士が連携して問題を解決したりします。その規模も仕事の量に応じて大きくなったり、小さくなったりもします。

 つまり、組織の果たすべき役割に応じて自由自在に伸縮する組織形態といえるでしょう。今取り上げた事例は大企業のものですが、中小企業にも同様のことが言えるでしょう。環境や社内の状況の変化に対応してトップが組織図を作ったり、配置替えしなくても自然に形をかえて対応してしまう組織こそ望ましいものであるということなのです。常に状況に合わせて新しいリーダーが生まれて、新体制が作られていくような状況が実現されているとき、組織は非常に充実じていると判断されます。


小さな組織の強みと組織のフラット化

 外部の環境や社内の状況に対して柔軟に適応していくことのできる組織を実現させるためには、フラットな組織構造を採用することが望ましいと考えられます。フラットとは、組織階層が少ないということであり、横方向に並立する小さな組織がたくさんある状況になります。
 そしてこの個々の小さな組織にもできるだけ権限と責任を独立した形で持てるような、自己裁量の部分を広げられる組織にすることです。そうなれば、組織の活性化は促進されますが、そのためにはやはり、階層が多くて、各階層の権限や責任が不明確になりがちなピラミッド型よりもフラットな組織が必要となってくるでしょう。
 しかし、小さな組織が実際に活性化されるためには前述のような原理原則だけでは十分ではありません。小さな組織の強みを活かした組織を構成していく必要があります。

 それでは小さな組織の強みとは何なのでしょうか。まず第1に、経営者の方針や考え方が社員全員によく伝わり、行動が早いということです。大きな組織ではトップの方針として決めたことも縦割組織の中では全社員にはなかなか浸透しません。
 また、情報伝達経路の長さから、意思決定がなされるまでに時間がかかりがちです。しかし小さな組織ではトップの意向もすぐに全体に伝わり、すばやく行動に移ることが可能です。

 第2のメリットとしては、個々の責任範囲が広く、一般的に責任の不明瞭化を防ぐことができます。家族のようにまとまっている組織では、構成員が少ないため個人の仕事の内容も当然広くなり、その分任される仕事も多くなります。
 つまり、他のセクションの仕事にまである程度かかわることによって細分化の発生や、責任の不明瞭化の発生の確率は低くなってきます。

 第3のメリットとしては、コミュニケーションがとりやすく、個性を活かした組織作りが可能であるということです。大きな組織ならば組織図のかき直しや権限の委譲などの取り組みが必要になってきますが、小さな組織ならば、仕事のさせ方や権限の与え方を考え、社員のやる気を促進させるようなイベントやキャンペーンなどを行っていく方が組織図の書き直しを行うより効果的です。


組織強化のポイント


1 高い欲求水準を持たせて常に危機感を抱かせること


 組織強化のためには、社員個人個人が高い目標を持ち、チャレンジしていく意欲(高い欲求水準)が必要になってきます。高い欲求水準とは今の状況が非常に好ましいものであっても現状に満足することなく、より良い状態を獲得しようとする欲望をもっていることです。

 その欲望が意識され、実現の可能性を追い求めていくことで、個人の自己革新を促し、構成員が成長し、組織が有効的に機能していくのです。そのためには、個々人が高い欲求水準を持つとともに、組織内に「現状に問題がある」という危機感を持つことが重要になってきます。ここでいう危機感とは、経営が危機に瀕しているという危機感ではなく、いかなる状況下でも常に改善の余地を見つけ出し、より一層の改善を実現していこうとする感情のことです。

 日頃から高い欲求水準を与えていくためには3つのポイントがあります。

(1) 個々人の欲求を喚起させること
  …欲求はその実現のための方向が具体的に指し示されなければ、達成意欲や粘り強い行動を生み出すような力は生まれてきません。つまり、意欲的になれば幸せになるという欲求を呼び起こす必要があります。たとえば、業績と給与をリンクさせるとか、実力者を抜擢するなどの刺激が必要であると考えられるでしょう。
(2) 欲求を実現する方向性を明確にすること
  …個々人の欲求を実現させていく具体的な可能性を示していかねばなりません。しかし、高い欲求水準とは、常に高度な欲求を意味するものでなく、現状より良い状態を獲得したいという欲求を持つことなのです。実現の可能性を指し示すことにより、具体的な行動計画がたてられるのです。
(3) 欲求を更新して高めていくこと
  …欲求を喚起し、行動計画を具体的にたてて実現しても、そこで満足しては組織の活性化はそこで止まってしまいます。そこで、常に自分の欲求を更新してより高いものにしていこうとするように、意識して刺激を与え続けなければなりません。


2 自信と信頼を醸成する


 前項の高い欲求水準と危機感の保持と共に各構成メンバーの中に、自信と信頼を醸成させていく必要があります。自信とは自分の持っている能力や価値、可能性を信じる気持ち、あるいは自分の存在を頼もしく思う気持ちです。そして信頼とは、他人の持っている能力や価値、可能性などを信じ、頼りにする気持ちです。この2つの感情はいずれも積極的な行動を生み出すのに必要なものなのです。
 仮に、組織の中で個々人が消極的であったり、他人に対して信頼感を持てなければ自己革新などは出来ないでしょうし、ましてや組織が活性化していくこともないでしょう。

 自信と信頼を醸成していくためには2つの重要なポイントがあります。

(1) 疑似体験を豊富にさせるということ
  …経験豊富な社員や目立った能力を持った社員と交流することによって、彼らの経験した成功・失敗事例を疑似体験させます。目的意識をもって周囲から何か学んでいこうとする姿勢を社員に身に付けさせることができれば、疑似体験による自信と信頼の醸成は可能になります。この場合には、疑似体験ができる場を計画的につくることが重要になります。
(2) 成功体験を蓄積させること
  …社員に可能な限り、チャレンジできる場を与えること、個々の仕事を積極的に評価し、成功体験を確実に得られるように、必要な権限を委譲して、支援していくことが大切です。そうなれば、社員が自分の仕事に自信を持ち、高度な仕事にチャレンジしていくようになっていくでしょう。

 これらを実現するための方法としては朝礼の時間を活用して、社員に自分の意見や感想を述べさせたり、月間計画を理論づけて設定させて目標にチャレンジさせるなどということが考えられます。このような方法で各従業員に何らかの成功体験を与えることによって、自信と信頼を醸造することが必要です。

 以上のように、好ましい組織づくりは組織図を変更することなく、様々な施策を行うことによって可能となります。それこそが中小企業にとって重要なのではないかと考えられます。