見当違いの信頼 教会指導者が少なくとも67万3,000ドルを口座から引き出す(その4 全4回)
・信頼関係が保たれているという環境。組織が小さいと、メンバーや従業員は、互いを知っており、また信頼しあっている。彼らは、一致団結して行動し、共通の使命を遂行することを願うことが多い。彼らは、その使命によって所属しているメンバー全員が等しく動機づけられると考えがちである。職員は、その使命と引き換えに単純に市場平均以下の給料を受け入れることも多い。また、献身的なボランティアが(その組織の)機能のいくつかを担ってくれる。
・そのような組織が、管理機能に割当てる資源は必要最低限である。なぜなら、管理機能に当てる1ドルは、大切な使命の遂行ための予算を1ドル削るからである。
・文書化された正式な方針や手続きがが欠如し、具体的な不正抑止に関する方針がほとんどない。ここでもまた、組織は、明確な方針を文書化するより、使命の遂行により多くの時間を費やす方が良いと概念がある。
・加えて、組織の財産を自ら守り、適切な報告を確実にする基本的な内部統制や外部の法規制のコンプライアンスが欠如している。また、組織に職務の分離も欠如していることが多い。つまり、1人の人間が過度に多くの機能を果たし、事業は抑制と均衡のシステムを保持していない。もし1人の人間がすべての職務を果たせるとしたら、なぜわざわざ他の人間を雇用する必要があるだろうか?
・組織の取締役たちは、そのミッションを信じているが、効果的に組織を管理するための能力を補完していない。
どうすればこの不正を防げただろう? (HOW COULD THIS FRAUD HAVE BEEN PREVENTED?)
どんなに経験豊かな不正検査士でも、すべての不正行為を防止することは不可能であると言うだろう。しかし、不正を抑止し、ある種の不正行為の可能性を除去できるシステムを導入することに対しては、明らかに肯定的だ。もし今回の事例において、教会指導者たちが何らかの主要な不正防止システムを実施していたなら、 その不正を防止できたか、もしくはもっと早い段階で現金の不足に気づいたであろう。
例えば、教会協議会や管理部門が、単にこの夫婦に対して正式な経歴チェックを行っていたならば、オズボーンのそれまでの犯罪歴や、数多くの法律的なもめ事を明らかにできたであろう。その結果と、この2人が信頼を必要とするポジションに就くことには絶対になかったであろう。
もし教会がもっと正式な形で内部統制と職務の分離を行っていたならば、横領を防止できたか、少なくともより早期に発見できたであろう。また、単に銀行に対して取締役会メンバーに直接メールで取引明細も送るように依頼したり、また別の人間にその内容を照合させたりしていれば、最初の不正な現金引き出し以降、不正が続くことを防げたかもしれない。オズボーンとマイヤーが発覚することを知っていれば、この犯罪の発生を防止できた可能性もあった。
教会指導者たちは、偽造した表計算シートを根拠にすべてがうまくいっていると信じるのではなく、定期的な取締役会への報告をオズボーンとマイヤーに要求すべきだった。
もし取締役会のメンバーが、もっと多様な経歴や有能なスキルセットを持っていたのであれば、不正抑止のためのシステムを導入できたであろう。しかし実際は、オズボーンとマイヤーが、限られた財務と経営管理の専門知識しか持たない善意の人々を破滅的な不正へ巻き込んでしまった。もし教会が実効性のある内部通報制度を実施し、不正通報のホットラインを導入していたならば、オズボーンの波乱に満ちた過去を知っていたコミュニティのメンバーが教会にそのことを通報していたであろう
すべての非営利団体、地方自治体、市民組織は、自分たちは狙われやすい標的であること、また、場数を踏んだ芝居上手な不正実行者が自分達を利用しようとしていると頭に入れておくべきなのである。