見当違いの信頼 教会指導者が少なくとも67万3,000ドルを口座から引き出す(その1 全4回)
2014年12月8日、予め用意された有罪答弁をする際、ジョン・オズボーンは言葉を濁して言い逃れをしようとしていた。それを受けて、オノンダガ郡法廷裁判官ジョセフ・E. ファヘイ(Joseph E. Fahey)は刑を宣告する際に明確に述べた。「オズボーンさん、あなたにお伝えしなければならないことがあります。私が生を受けたのは夜のことですが、それは昨日の夜ではありません。いいですか…」とファヘイは続けた。「何よりも、今回の不正やあなたのこれまでの経歴を見て分かることは、あなたは詐欺師であり、また成人してからのほとんどの人生を詐欺師として過ごしてきたという事実です。あなたは、教会の気の毒な人々を騙し、過去には他の多くの人も騙してきました。そして今ここで、私と法廷制度をも欺こうとしています。ですが、今日の朝、もう我々を騙すことはできません。今日があなたの最後の審判の日です。第2級重窃盗罪の有罪答弁に基づき、あなたに最短5年から最長15年の刑を言い渡します」(参照:判決裁判所記録http://tinyurl.com/hutt4hv)
教会 (THE CHURCH)
その無名の教会は、ニューヨーク州北部の小さな統合メソジスト教団(United Methodist congregation)である。150年間、地域のコミュニティのためにその役割を果たしており、また20万ドルに満たない年間予算で運営されている。教会の構成メンバーたちは、教会内の各種の必要経費を賄う財源として、主に遺贈という形で寄付をしてきた。何年もの時を経て、その寄付金は60万ドル以上に達していた。
不正実行者 (THE PLAYERS)
オズボーン(1958年生まれ)は、ニューヨークのシラキュース(Syracuse)の地元の自営業者であり、ファイナンシャル・アドバイザーでもあった。妻のメアリー・マイヤー(Mary Meyer、1956年生まれ)は、公認会計士(以下「CPA」)で、弁護士でもあった。マイヤーは1980年にCPAになり、2000年、シラキュース・ロー・スクール(Syracuse Law School)を卒業した後に、弁護士資格を受けた。彼女はセントラル・ニューヨーク・コミュニティ財団(the Central New York Community Foundation)の最高財務責任者(以下「CFO」)であり、その財団は、1億3,300万ドルの資産を所有する慈善組織であった。
2000年の初めに、ジョン・オズボーンとメアリー・マイヤーはこの教会のメンバーとなった。2008年の時点で、マイヤーは、ボランティアで教会の会計担当になっていた。一方、夫のオズボーンは教会の平信徒(聖職者でない一般信徒)のリーダーとなっており、日曜日の説教を担当することもあった。教会が、財務を管理する人物を必要とした時、オズボーンは、「喜んで」財務委員会の長をボランティアとして受け持つと教会指導者たちに申し出たのだ。財務の専門知識やその責務を担う熱意がある者は他には誰もいなかったので、教会指導者たちはマイヤーとオズボーンに感謝していた。また、責任を持って教会の財務を取り扱うことに関して、信徒たちがオズボーンとマイヤーに信頼を置いていたことは明白だった。
罪を犯した過去の発覚(DISCOVERY OF A GUILTY PAST)
オズボーンとマイヤーが財務を担当し始めた4年後に、教会は説明のつかない資金不足に陥った。請求書は期限通りには支払われず、納入業者からは支払い遅延の通知が来るようになった。教会の牧師は、報酬の未払いが続いているとこぼしていた。教会協議会のメンバーの中には(この状況に対して)懸念を示す者も出始めた。オズボーンとマイヤーは、すべてがうまく行っていると請け合い、使途不明金などは存在しないことを証明する資料として表計算シートを持ち出し、自分たちの嘘を裏付けた。
(その2に続く)