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数字の虚偽? 帳簿の粉飾(Cooking)または煮詰まり中(Simmer)(その4 全4回)

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判断点3.(Decision point 3)

最終的な実販売の数は?(How many sales are actually final?)

意義(Significance)

 いかなる販売においても、顧客は購入した商品を返品する可能性があり、会社は返金に応じなければならない。 GAAPは、売上のどれだけが返品されるのか、売掛金のいくらが全額支払われないのかを見積もることを企業に要求している。

積極的(Aggressive)

 顧客が返品をしない、または返金の割合が低いと仮定している。

保守的(Conservative) 

 顧客が返品をしない、または返金の割合が高いと仮定している。

度を越した実例(Real-world example gone too far)

 次の四半期まで返品を記録しないことで、現四半期の収益を高く保つことは、簡単な不正の手段の一つである。ビテス・セミコンダクターは、売上返品、在庫陳腐化に係る費用(陳腐化、破損した在庫等)および貸倒費用の見積もりを2002年の4,990万ドルから2003年の220万ドルに都合よく減少して計上した。 (参照:「財務的詐欺:会計操作と財務報告の不正を発見する方法」 “Financial Shenanigans: How to Detect Accounting Gimmicks & Fraud in Financial Report, 3rd Edition,” by Howard Schilit and Jeremy Porter, 2010, McGraw-Hill.)。これにより、ビテスの2003年見積もりの営業利益は5,000万ドルの増加となった。

判断点4(Decision point 4)

見積もりにもとづく有形資産の耐用年数はどれくらいか?(How long will our physical assets last based on our estimates?)

意義(Significance)

 この問題は、資産をどれくらい早く減価償却するかにより、企業の収益に直接影響を与えるかを決定する。

積極的(Aggressive)

 経営者がより長い耐用年数を選択することで減価償却費を削減し、短期的な利益を最大化する。

保守的(Conservative)

 合理的な範囲内にある短い見積り耐用年数を選択し、減価償却費を増加させ、それにより利益が減少し、税金を減額させる。

度を越した実例(Real-world example gone too far)

 1992年から1997年の間に、ウェイストマネジメントの収益は、所定の目標を達成するのに十分な速度で成長していなかった。この不足分を補うために、経営者は、ゴミ収集のトラックの耐用年数を伸ばし、残存価額を上げることにより、減価償却費を大幅に削減した。
 1997年に、新しいCEOがウェイストマネジメントの会計方針の見直しを命じ、会社は税引前利益を約17億ドル過大評価したことを認めなければならなかった。この事実の発覚により、ウェイストマネジメントの株は急落し、株主は60億ドルの市場価値を失った。(参照:SECリリース「ウェイストマネジメントの創業者が他の5人の元上級役員を巨額不正で訴える」“Waste Management Founder, Five Other Former Top Officers Sued for Massive Fraud,” http://tinyurl.com/hoekwfh
.)

判断点5(Decision point 5)

費用を資産化するべきか(Should we capitalize expenses?)

意義(Significance)

 一般的に、企業は、購入した資源が、複数のオペレーティング・サイクルに明らかな利益をもたらす場合にのみ、その資源の取得コストを資産化することができる。そのような資源は資本的資産として知られている。しかしながら、経営者は、特定の支出の分類についての決定に裁量権を持っている。広告宣伝費と販売促進費は、一般的に支出が、費用と資産の2つに分類されることになる。
 つまり場合によっては、発生時に費用を計上することも、または資産化することもできる。もし、すぐに費用とした場合は、利益(および税金)を減少させる。もし、資産化した場合には、資産の価値は貸借対照表に計上され、経時的に償却されるため、直接的な支出額の影響は軽減される。実際に、コストは時間の経過とともに発生することになる。
 さらに、このような企業では、貸借対照表上により多くの資産を表示し、より収益性の高いものとして見られる。(しかしながら、将来の利益は段階的に減少するだろう)

積極的(Aggressive)

できるだけ多くの費用を資本化する。

保守的(Conservative) 

実際の払出ごとに費用を計上する。

度を越した実例(Real-world example gone too far)

 ワールドコム(WorldCom)は、他の電気通信事業者のネットワーク上で回線をリースする際の何億ドルものコストを資産化することを決定し、この操作を不正に利用した。ワールドコムは、当初、それらを営業費用として適切に分類していた。しかし、2000年にITバブルが崩壊した時、同社は収益の喪失を補填する機会を見だした。費用となる支出を資本化することにより、ワールドコムは多くの費用を損益計算書から、資産として扱われる貸借対照表に移した。この不正が発見されたとき、ワールドコムは700億ドル以上の収益を修正することを余儀なくされた。(参照:「財務的詐欺:会計操作と財務報告の不正を発見する方法」“Financial Shenanigans: How to Detect Accounting Gimmicks & Fraud in Financial Reports, 3rd Edition,” by Howard Schilit and Jeremy Porter, 2010, McGraw-Hill)

制限速度を超える(Pushing the speed limit)

 企業は、速度を変えるための正当なビジネス上の理由を持っている。しかしながら、経営者はこれらの許容可能な技術を悪用して、企業を法廷制限の外に連れ出す可能性がある。他の多くの犯罪と同様に、不正実行者は、最初は軽い不正行為から始めて次第に危険な坂道を滑り落ちていく。それぞれの操作や違反は、許容されるものからどんどん遠ざかり、その後の不正の規模を増大させる。私はこれを、帳簿の煮詰め(simmering)から、帳簿の完全な粉飾(Cooking)と呼んでいる。
数字は嘘をつかないかもしれないが、人間は確実に嘘をつく。残念ながら、次の大きな会計不正は既にどこかで進行中である。あなたは、数字の背後にある真の意図を発見して、その根本にある不正を止める人になれるだろうか?



この記事の執筆者

Tom Baugher, J.D., CFE
フロリダ州タンパのFBI特別捜査官。本稿の視点は、必ずしも彼の雇用主の意向を反映するものではない。
翻訳協力:山内哲也、CFE、CIA、CISA
※執筆者・翻訳協力者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである。

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