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自動車保険不正入門およびプラスアルファ ソーシャルネットワーク分析を使って不正実行犯を捕える(その4 全4回)

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 SNAツールは、様々なファイル形式にデータをインポートしたり、エクスポートしたりすることができるのみならず、ネットワークの異なる形式、ビュー、視覚化レイアウトを提供してくれる。SNAのクラスタリング機能によって属性の類似性を基にしてネットワークのクラスター(サブネットワーク)を発見することができる。
 異常に多い交流を伴う密度の高いサブネットワークは疑わしいものであり、保険不正の組織を示す可能性がある。SNAツールは、様々な中心性(ある一定のネットワークの中の1つのノードの影響の程度)と親密度の基準(認識されたエッジの数とネットワーク内のエッジの理論的に可能性のある最大数との割合)を算出する。不正検査士は、ノードとネットワークを調査し、通常よりも高い程度の中心性や密度を把握することで不正を発見することになる。例えば、より高い中心性を持つノード(人物)は、組織化された自動車保険不正請求のファシリテーターである可能性があることになり、そうした人物が示すサブネットワークは、不正のネットワークである可能性があることになる。
 保険会社の不正検査士は、10年前に比べ、SNA技術によって自動車保険不正の発見がはるかに容易になったことを認識している。本稿のもととなった調査研究プロジェクトは、請求処理段階でのSNAの利用に焦点を当てているが、SNAを保険証書発行段階において重要な保険証書引受プロセスに組み込むことでそれがたとえ当初の保険証書引受の処理時間を長くする結果を招く可能性が高いとしても、保険金請求段階での使用と相まって、さらに良い結果を生むに違いない。

数多いSNAソリューション(SNA SOLUTIONS ABOUND)

 保険会社の不正検査士は、いくつかのSNAのオープンソースやベンダーソリューションを活用することが可能である。この新しいテクノロジーは、次の10年間で飛躍的発展を遂げるであろう(筆者は、これらの企業から何らかの見返りを得ているわけではない)。
 Node XL Basicは、マイクロソフトエクセル向けネットワーク分析および視覚化ソフトウェアで、Social Media Research Foundationによって2008年に開発・リリースされたものである。Foundationは、2014年に最新版1.0.1.342をリリースした。
 NodeXLによってユーザーは、プログラミング経験の有無に関係なく様々なネットワークの収集、分析、視覚化が可能となっている。Foundationによると、2015年10月現在、NodeXL Basicは、42万5,000回以上ダウンロードされた。(参照:http://no-dexl.codeplex.com.
 2015年10月12日、Foundationは、商用バージョンである。NodeXL Proをリリースした。ネットワーク指標計算機能、感情分析、レポート作成などのより強化された機能を搭載するものである。
 Gephiは、ユルゲン・フィセル (Jurgen Visser) 「データ主導のリスク判断のためのセキュリティ分析」“Security Analytics for Data Driven Risk Decisions”(2015年8月25日 http://tinyurl.com/gsuh7sd)によると、Java仕様のスタンドアローン型オープンソースのネットワーク分析及び視覚化ソフトウェアであり、フランスのコンピエーニュ工科大学 (the University of Technology of Compiègne) の学生によって開発されたものである。最新版である0.8.2ベータ版は2012年12月にリリースされた。Gephi(http://tinyurl.com/285pbo)によると、Gephiは、現在までに120万回以上ダウンロードされている。
 Pajekは、Windows対応プログラムで、数千あるいは数百万の頂点を持つ大規模のネットワークの分析および視覚化ツールである。Pajekとはスロべニア語で蜘蛛を意味する。アンドレイ・ムルヴァル(Andrej Mrvar) とウラジミール・バタゲーリ(Vladmir Batagelj) がマティアジュ・ザヴェリュニク(Matjaz Zaversnik) の支援を得ながら、1996年11月に開発を開始した。リファレンスマニュアル(http://tinyurl.com/jl9m2t5) によると、Pajekは、2015年8月に最新バージョンである4.05がリリースされた。
 SAS 保険のための不正フレームワーク (SASFFI) は、2009年にSAS Institute Inc.によって、リリースされた。このフレームワークは、ビジネスルール、異常検知、予測モデリング、ソーシャルネットワーク分析モジュールを含み、不正請求を検知し、防ぐことを目的としている。このフレームワークの主たるモジュールであるSNAによって、調査担当者はネットワーク内の関係や活動の分析を行うことが可能である。SNAの視覚化インターフェースによって、明確な関係性を図示したり、以前には知りえなかった関係性を検知したりすることが可能である。(参照: “SAS Offers New Fraud Framework Featuring SAS® Social Network Analysis,” http://tinyurl.com/j5eqh.「SASによるSAS®ソーシャルネットワーク分析を備えた新不正フレームワークの提供」)
 SNAテクノロジーが他のモジュールとともに適用された場合、自動車保険不正請求の検知の累積的有効性は、増大する。例えば、SASFFIは、SNAを含むその他の統合されたモジュールを持つ。例えば、オープンソースソリューションでは得難い追加モジュールであるビジネスルール、異常検知、予測モデリング等のモジュールである。

効果的なツールを用いたグローバル問題への対処(ATTACKING GLOBAL PROBLEM WITH EFFECTIVE TOOLS)

 自動車保険業界において不正請求が保険料の大幅な増額の要因となる主たる不正のタイプである。便乗型、計画的、組織犯罪スキームが3つの主な自動車保険不正である。保険会社の不正検査士は、不正対策の最も重要なテクノロジーの1つであるSNAを使用し、人々(あるいは組織)の関係性をネットワークダイアグラムの形態でマッピングすることで関係構造を調査することができるのである。保険金詐欺の実行犯は用心することだ。



この記事の執筆者

執筆者:Subhash Satyal, MISAM, CFE, CPA (カナダ)
Subhash Satyal, MISAM, CFE, CPA (カナダ)
Shaun Aghili, D.B.A., CFE, CIA, CISSP-ISSMP
エドモントン・コンコルディア大学情報システムセキュリティアシュアランス 准教授
Pavol Zavarsky, Ph.D., CISSP, CISM, CISA
エドモントン・コンコルディア大学情報システムセキュリティリサーチ教授
翻訳協力:
神谷智彦 CFE、LL.M、CCO、CRMA、CFIA
神谷泰樹 CFE、LL.M、CCO、CRMA
※執筆者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである

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2019.10.25 17:03:02