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自動車保険不正入門およびプラスアルファ ソーシャルネットワーク分析を使って不正実行犯を捕える(その3 全4回)

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●保険金請求と保険購入の時期の間が、数週間・数ヶ月以内と短い。
●被保険者である運転者が過去に複数回保険請求している場合及び保険金が過度に高額な場合。
●被保険者である運転者が保険金や保険金請求の手続きについて熟知していて、保険会社に対して早期の保険金支払いを主張する場合。
●損害を受けたとされる車両が保険会社の請求調査担当者が調べる前に廃車された場合。
●請求者による改ざんされた事故報告書の提出(保険会社の保険金請求担当部署は捜査機関から直接事故届を入手すべきである)。
●保険対象車両ではない車両と比べて保険対象車両への損害が予想を超えている場合。
●物的証拠、事故報告書、修理業者の請求書の不一致が認められる場合。
●異例な文書の提出。以下のような例がある。
  同じ自動車部品販売店からの請求書の請求書番号と日付が関連しない場合。例えば、請求番号3255は2014年3月20日付で請求番号3245は2014年4月10日といった具合である。
  原本ではなくコピーされた文書
  手書き文書や日付、金額、名前、記載事項等の改ざん
  請求書や領収証の税金の誤り
  領収証や請求書に支払印、領収印が押されていない

不正検知のためのソーシャルネットワーク分析 (SOCIAL NETWORK ANALYSIS FOR DETECTING FRAUD)

 自動車保険不正請求のより有効な検知のため、大手の損害保険会社は、事故の被害者にサービスを提供する修理工場、法律事務所、医療機関の支援目的に加え、事故に関係する個人、車両、場所に見られる請求パターンを追跡する目的でデータ分析に依存する割合が増えている。
 カナダでは、カナダ国立保険犯罪対策局 (CANATICS) がAvivaなどの洗練されたツールを使用する事で、自作自演の衝突事故の検知を高め、組織に貢献している。(参照:ニュースリリース)
 進化を続けているソーシャルネットワーク分析(以下「SNA」)と呼ばれるタイプの分析手法は、自動車保険不正への対策として有効である。不正実行犯は、こうした不正を犯罪組織の中で実行するにあたり、多くの相互関係を持つ。ベロニク・バン・ブラッセラ (Veronique Van Vlasselaer) (現職はSAS ベルギー、ルクセンブルグの分析コンサルタント)の2013年11月25日のYouTubeのプレゼンテーション”Social Network Analysis for Fraud Detection” 「不正検知のためのソーシャルネットワーク分析」によると、SNAは、複数のソースからの大量のデータを効果的に分析し、不正パターンの検知に繋がる傾向や相関関係を特定することが可能になるという。
 エブリン・オッテ (Evelien Otte)、ロナルド・ルソー (Ronald Rousseau) 共著「情報サイエンスジャーナル」”Journal of Information Science” 2002年12月28巻6号掲載の “Social network analysis: a powerful strategy, also for the information sciences”(「ソーシャルネットワーク分析:強力な戦略、そして情報サイエンスのために」)によると、SNAによって、人々、組織、グループ、コンピューター、URLと相互に関連性を持ったデータ、および情報ソースをグラフとネットワーク理論の観点でマッピングし、関係性を計測することによって、社会構造を調べることができるという。
 ネットワークには、ノードとエッジ(リンク、コネクション、タイ、関係性、相互関連性等とも呼ばれる)が含まれ、ノードは、ネットワーク内の人々、組織、グループであり、エッジは、ノード間の結びつきである。SNAによって人間、組織、グループ関係の視覚的、数学的分析の実行を可能にするのである。
 SNAは、関連した情報、例えば「誰が誰を知っているか?」「誰が誰に電話をしたか?」「誰が誰とビジネスを行っているか?」といった情報の分析を可能にする。(シェーン・ホーニブルック (Shane Hornibrook) 、「分離度:SASシステムを用いたソーシャルネットワーク分析」“Degrees Of Separation: Social Network Analysis Using The SAS System.)によると、SNAの手法を用いて、大量のデータの中からさらなる調査のためのソーシャルネットワークの関係性や構造をグラフ上で示すことが可能になるという。
 ソーシャルネットワークとは、Facebook、TwitterやLinkedInのような単にウェブサイトやアプリに代表されるものに限られず、さらに広い範囲のものを含む。バン・ブラッセラによれば、複数の人間や組織間の明示的または黙示的の関係を示すあらゆるやりとりのデータや対象は、ソーシャルネットワークを形成し得るという。
 WhatIs.com によれば、ある事象を示す取引のデータには、財務、物流、仕事関係、保険コスト、請求等が含まれる可能性がある。(出典http://tinyurl.com/j4ud2dq )
 不正検査士は、SNAの手法を自動車保険会社のデータベースに適用し、請求に関連する関係者、組織、目的、例えば、請求人、車両番号、請求番号、場所、住所、サービスプロバイダー等の中から関係をマップ化し、具現化してネットワークグラフ・ダイヤグラムを作成する。関連性頻度、密度、確実性等のSNA分析手法で得られるSNA測定基準を適用することにより、プログラム化された閾値を超える優れた結果を得ることができる。例えば、SNA分析により、同一の請求者による大量の請求、同一請求人による複数の拒絶された請求、同じ家族からの短期間の多くの請求を抽出することができる。“Combating Insurance Claims Fraud”, SAS publication,(参照:「保険不正請求と闘う」)

(その4に続く)



この記事の執筆者

執筆者:Subhash Satyal, MISAM, CFE, CPA (カナダ)
Subhash Satyal, MISAM, CFE, CPA (カナダ)
Shaun Aghili, D.B.A., CFE, CIA, CISSP-ISSMP
エドモントン・コンコルディア大学情報システムセキュリティアシュアランス 准教授
Pavol Zavarsky, Ph.D., CISSP, CISM, CISA
エドモントン・コンコルディア大学情報システムセキュリティリサーチ教授
翻訳協力:
神谷智彦 CFE、LL.M、CCO、CRMA、CFIA
神谷泰樹 CFE、LL.M、CCO、CRMA
※執筆者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである

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2019.10.18 20:59:16