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コンピューターが支援する面接調査:現実か愚行か?(その1 全4回)

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Computer-assisted interviews: fact or folly?

 不正検査士が基本的な情報を収集する際、コンピューター制御された「アバター」を活用できると言う者がいる。本稿では、将来性のある技術の進歩と不正対策の専門分野におけるアバターの関わり合いを概観する。決めるのは読者の皆さんだ。
 本稿の筆者達は、不正検査の面接調査の部分でアバターをテストする研究は、もしあったとしてもごく僅かだと主張する。しかしながら、アバターという概念を他の分野から不正対策へ応用する有効性を探っている。本稿で紹介される見解は必ずしもACFEの見解と一致するものではない。
                            (FRAUDマガジン編集部)

 米国アリゾナ州ノガレスの入国通関手続き所で、旅行者がキオスク(入国管理用の機械)の前に歩み寄ると、「アバター」(仮想のコンピューター制御の人間)が挨拶をする。アバターは入国管理に関する一連の基本的な質問をし、キオスクが質問に答えた人物の反応や行動の信憑性を評価する。そのシステムは、瞳孔が拡張するミリメートル単位の変化や顔の体温変化、声色や声の速さの変化を測定できるセンサーを通じて生理学的変化を検知している。
 この例はサイエンスフィクション小説からの引用ではない。国土安全保障省が出資するアリゾナ大学(UA)にある国境警備及び出入国管理の国立センター(訳者訳)は、アバターを搭載した迅速なスクリーニングが可能なキオスクをノガレスの入国通関手続き所に配置し、テストを行っている。(参照:「ごまかしは効かない。政府の嘘検知器が君を見ている(題名は訳者訳。“Deception Is Futile When Big Brother’s Lie Detector Turns Its Eyes on You,” by Adam Higginbotham, Jan. 17, 2013, Wired, http://tinyurl.com/ns9jwal)

 コンピューター制御された人間の画像にインタビューされた人は、居心地良く感じるだろうか?アバターを介して得られる情報は信頼できるのだろうか?ノガレスの入国通関手続き所のアバターの台詞は固定されている。アバターはしっかりと用意された一連の定型文の質問を問いかけ、補足的な質問はしない。しかしUAは、米国国境における入国管理局の職員の入国者への質問業務の軽減に役立ったと報告した。おそらく、より重要な点は、UAが、質問を受ける側は極めて自然な社会的行動をもってアバターを人間のように扱っているように見えると述べていることである。
 言うまでもなく、技術をもってしても人間の面接官の有効性を完璧に自動化したり再現したりすることはできないが、不正検査士は基本的な任務の一部を遂行するのにこれを利用することができるかもしれない。
 このような任務は、その後に続く不正検査の段階で役立つ基本情報を不正検査士が収集する助けになるだろうか?それともこの考えは、現実離れしすぎているだろうか?アバターによる聞き取り調査から得られる情報は裁判で証拠能力があるだろうか?本記事では、聞き取り調査におけるアバターの有効性と面接者がアバターを用いて、ラポールを形成する能力を高めたり、被面接者が開示する情報を最大限にしたりする技術に注目する。
 グラフィックアバターの技術的な進歩は、不正検査士がさらに次の問題を考え始めなければならないレベルに達している。
・不正検査士は、この技術を自分たちのニーズにどのように合わせられるか?
・アバターは、不正検査士がより効果的かつ効率的に仕事をするのをどのように支援できるか?
・コンピューター支援による技術を使用する影響はどのようなものか?

 我々の目的は、この将来性のある技術の進歩を検討できるように読者に予備知識を提供することである。我々は実行可能性と影響について何らかの確信を持っている訳ではない。研究によって不正検査における面接調査でのアバターの利用は実用的ではないことが明らかになるかもしれない。しかし、我々はこのテーマについて少なくとも調査をする時であると感じている。

面接調査の重要性(Importance of the interview)

 面接調査は不正検査に必要不可欠なものである。不正検査士はこのプロセスを習得するために熱心に学ぶ。(「面接と尋問 第2版」 “Interviewing and Interrogation, 2nd Edition,” by Don Rabon, CFE, http://tinyurl.com/omfz5py, and 「説得力のある面接:法医学的事例の分析」“Persuasive Interviewing: A Forensic Case Analysis,” by Don Rabon, CFE, and Tanya Chapman, http://tinyurl.com/q7a2m65)など、ACFEが提供する多数の書籍に加えて、ACFEのセミナーの多くは受講者がより優れた面接官になることを重視している。面接官は、経験を積むほど実効性が向上する。しかし、アバターによる自動化された面接調査は、不正検査士の努力を補強することができるだろうか?

(その2に続く)
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初出:FRAUDマガジン46号(2015年10月1日発行)

この記事の執筆者

Richard G. Brody, Ph.D., CFE
ACFE名誉理事であり、ニューメキシコ州アルバカーキにあるニューメキシコ大学の会計学のダグラス・ミンジ・ブラウン教授(Douglas Minge Brown professor)である。

Matthew D. Pickard, Ph.D.,
ニューメキシコ州アルバカーキにあるニューメキシコ大学の会計学の准教授である。

Joseph J. Agins, CFE
アリゾナ州メサのアポロ・エデュケーション・グループ(Apollo Education Group, Inc.)の倫理・コンプライアンス調査ディレクターである。ACFEの理事会のメンバーである。

※執筆者の所属等は本記事の初出時のものである。

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2018.05.02 16:30:27