第3回 年末調整こそ、業務効率化が図れる業務! ~提出される申告書の記入漏れ、ミスを防ぐには?~
令和4年の年末調整~改正点と業務効率化のポイント~ |
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シリーズの最終回は、業務効率化の大きな壁となる、記入漏れ、ミスを防ぐためのポイントについて解説します。
電子化対応の効果
年末調整業務を電子化することのメリットを挙げてみます。
1.年末調整ツール(従業員に書類を配布、収集できるツール)と人事給与ソフトと連携させることで、同じ情報を何度も入力することをなくせる 2.計算ミス、入力ミス、抜け、属人化をなくせる 3.場所・時間を選ばず、三密回避もできる 4.電子化することは結果的にBCP対策になる |
1.人事給与ソフトと連携させることで、同じ情報を何度も入力することをなくせる
人事給与ソフトは、当年分の「扶養控除等異動申告書」、「配偶者控除等申告書」に記載が必要な情報が既にデータとして持っています。特に「扶養控除等異動申告書」については、当年分を印刷できる人事給与ソフトもあります。
そのような情報を年末調整ツールと連携させることで、担当者も従業員も最小限の情報の入力、修正で済ませることができ、業務効率化につながります。
2.計算ミス、入力ミス、抜け、属人化をなくせる
第1回で解説したように、年末調整業務は毎年、法改正があり、改正点の確認や、それに合わせて従業員への案内や控除額の計算方法を変えていかなければなりません。
また、申告書に書かれている文言は、一般的に使われているものと概念が違うため、従業員にとっては分かりにくく、担当者にとっても判断の迷うような金額が記載されてくることも多くあります。
例えば「所得」を記載しなければならないのですが、「収入」ではないため、扶養親族の「収入」から申告書の裏面に記載されている計算方法に則って「所得」を導き出さなければなりません。
1年に1度しか目にすることのない、年末調整関係の申告書、さらに細かい字でびっしりと記載された説明にすべて目を通して正しく記載することは困難であり、記載ミス、計算ミスが発生することが多くなるのも仕方ないのかという気にもなってきます。
特に必要記載事項の抜けについては、法改正によって様式が変更になる令和5年の扶養控除等異動申告書を例に確認してみると、よく分かります。
赤枠で囲んだ部分が令和5年の1月1日以降に適用となる改正部分です。令和4年に比較し、該当する方は、記載しなければならない箇所が大変多くなりました。これらのすべてが自身に関係があるのかを理解し、必要な箇所に必要な事項を記載し、正しい申告書を作成することの困難さがうかがえます。
電子化ツールでは、申告書を正しく作成するための質問を「はい」、「いいえ」で回答できる分かりやすいものにし、「はい」であれば次に必要な情報を入力していくというような作りになっています。
また、「収入」と「所得」の違いについても、その金額を入力しなければならない箇所で、説明を加えるような従業員にとって調べる(申告書の裏面から説明されている部分を探し出す)という作業がなくても申告書を完成することができるため、「計算ミス」、「入力ミス」、「抜け」を減らしていくことができます。
更に、電子化ツールを利用した次年度以降は、前年の情報を引き継いでいるツールもあります。そのため、変更がある部分を入力するだけで済ませられこともメリットです。
控除額の計算にしても、証明書等に記載されている内容を正しく入力し、確認するだけで従業員も担当者も電卓で検算しなくても済み、複雑な法改正にも対応することができます。
3.場所・時間を選ばず、三密回避もできる
コロナ禍への対応、リモートワークやワーケーションへの対応等に、業務の電子化は必須です。数多くの書類の処理が発生する年末調整業務を電子化することは、担当者にとっても従業員にとっても業務効率化につながります。
4.電子化することは結果的にBCP対策になる
私たちは、多くの自然災害や、コロナ禍を経験してきました。そのような場合でも止めることのできない、そのような時だからこそ、滞りなく進めたい給与計算や年末調整業務、行政手続き等は、書類での管理ではなく、電子化されたデータをもとに業務ができるようにしていかなければなりません。
電子化することは、結果としてBCP対策につながります。
以上、3回にわたって、令和4年の年末調整の改正点と業務効率化のポイントについて解説いたしました。今年もあっという間に年末調整のスケジュールを確認する時期になり、担当者の皆様も改正点の確認や、ご準備にお忙しいことと思います。電子化することで、ぜひ業務効率化につなげていきたいですね。