第2回 どうやって集める?複数の申告書と添付書類 ~集め方でこんなに変わる手間と工数~
令和4年の年末調整~改正点と業務効率化のポイント~ |
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シリーズの第2回は、申告書や添付書類の収集方法について、工数削減のポイントについて解説致します。
年末調整で集めなければならない申告書類、添付書類は?
年末調整で集めなければならない申告書、さらに申告内容に間違いがないか確認するために必要な書類、添付が義務付けられている書類を挙げてみます。
申告書 〇給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 ※当年分 ○給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 ※翌年分 ○給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書 ○給与所得者の保険料控除申告書 ○給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
内容確認のために必要な書類、または添付が義務付けられている書類 ○前職の源泉徴収票 ○生命保険料控除証明書 ○地震保険料控除証明書 ○住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 ○小規模企業共済等掛金控除証明書 ○社会保険料控除証明書 |
年末調整のご担当者は、これら数多くの申告書を配布、添付書類とともに収集し、従業員ごとに提出された書類が何か、未提出がないか、さらに添付書類の不足がないかを確認されていらっしゃることと思います。Excelで管理表を作成していらっしゃる事例もお見受けします。
さらに、不備で差し戻す場合には、年調システムや給与ソフトに入力しやすいように従業員番号順にファイリングした申告書から、該当の申告書を抜き出して、従業員に確実に渡さなければなりません。私も以前は、抜き出した箇所に、従業員番号や氏名を書いた付箋を貼って、再提出された後の再ファイリングに備えていました。
従業員にしても、配布された申告書に添付が必要な証明書等を準備するのは、1年に1度のなれない作業のため、漏れなく提出するのは大変です。
従業員との書類のやり取りで発生する手間や工数は?
配布、収集までの流れを図で確認してみましょう。
配布、収集の手間と工数を劇的に削減できるのは、ITツールを利用して電子化することです。
皆さん、十分にご承知のことと思います。ただ、第1回でも触れたように年末調整システムは、国税庁からも無料で提供されているもの以外にも、多くのベンダーが特長のあるツールを提供しています。その中から自社に最適なものを選んでいかなければ、期待した効果が得られず、手間や工数を削減することにつながりません。
紙の場合と電子化した場合を図で比較すると、手間や工数が大幅に削減できることが明らかです。
また、コロナ禍をきっかけに「職場」の概念が大きくかわり、リモートワークやワーケーション等、時間や場所にとらわれない働き方に変化してきた「職場」も増えてきました。その場合、配布・収集を郵送にせざるを得ない場合もあります。そうなると郵送のコストがかかります。従業員の重要な個人情報が含まれた書類を普通郵便で送るということも、個人情報保護の観点から考えるあまりよろしくありません。電子化することで、郵送のコストも削減できます。
何よりも、ご担当者にとって、個人情報が含まれた書類を封緘する際に、封筒の宛名と中の書類の従業員の氏名が異なってしまうというご封入がないかと気を使う作業をなくすことができることは、大きなメリットになります。
年末調整の申告書の電子化ツールの多くは、PCだけでなく、スマートフォンでの利用もできるようになっています。添付書類もスキャンした画像やスマートフォンで撮った画像をアップすることで、担当者が確認できます。また、メールアドレスがない従業員が利用できるものもありますので、自社の従業員が利用できるものを選んでください。
年齢の高い従業員が多く、会社からPCも個人に貸与していないので、電子化は難しいというご相談を受けることがあります。その場合、会社が年末調整用にPCを用意し、一定期間、それを自由に利用できるようにしたり、初年度は入力の不明点があれば、担当者が補助できるようにしたりすることで、電子化してはどうかとご提案します。工場勤務者や年齢の高い従業員が多い1000名規模の企業でも、ご自身のPCやスマートフォンで対応できなかった方は5名以下だった事例もあります。
電子化できない理由から考えてしまうより、運用でどうカバーできるかを考えて導入することの方が良いのだと実感した事例でした。
従業員との書類のやりとりを紙と電子化で比較
電子化を推進するにあたり、費用対効果を可視化することも大切です。
電子化されたツールで提出された申告書は印刷して紙で保管する必要はありません。原本保管の義務のある添付書類のみを、従業員から別途回収し、保管しておくことで事足ります。
年末調整は電子化することで、大きな業務効率化ができる代表的な業務です。導入を検討なさっているのでしたら、ぜひ、今年から始めてみてください。
第3回は、提出された申告書をもとにすすめる年末調整業務を効率化するポイントについて解説します。