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汚職と戦う情熱 アレクサンドラ・レイジとのインタビュー(その2 全4回)

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FRAUDマガジン(以下「FM」): どのような経緯でFIFAの独立系ガバナンス委員会で働くことになったのですか?

AW: ゼップ・ブラッターがマーク・ ピース(バーゼル大学刑法・犯罪学教授)に独立系ガバナンス委員会 (IGC) を設立し、指揮してほしいと頼んだのです。私とマークは収賄防止の世界で共に働いており、長年の知り合いでしたので、彼が私に委員会に参加しないかと誘ってくれたのです。ゴールは、委員会でガバナンスの専門知識と利害関係者の両方を持つこと、グループ内で地域の多様性を保つことでした。私はTRACEで、常勤で働いていましたが、無報酬でIGCのために働くことに同意しました。

FM: 委員会にいたときのゼップ・ブラッター(前FIFA会長)の印象はどのようなものでしたか?

AW: ブラッター氏がリフォームプロセスの範囲を統制する意図を持っているとの非常に強い印象を受けました。彼は、最近のスキャンダルではなくて、スポーツの発展について足跡を残したいと語っていました。しかし彼は、「サッカーファミリー」の中で事を納めたいとも話していましたし、IGCの質問のいくつかには苛立っていました。私たちを招いたのは彼のアイデアだったと自ら明言していますが、改革への意欲は限られていたこともすぐに明らかにしました。共に働き始めてすぐに、改革をしようとしている姿が実際の改革より重要なのだということがわかってきました。

FM: 最初のFIFA関係者が逮捕されてから一年と少しが経ちました。FIFAは今では誠実に運営されていますか? 何か変わりましたか?

AW:リーダーの大部分が同じなら、実際には何も変わらないと私は思います。指導者のトップレベルの多くは活動を禁止され、逮捕されたか捜査中であることは事実です。しかし、その下のレベルにいた人物が単に上層に昇格しただけです。

FM: FIFAは最近新しい会長にジャンニ・インファンティーノを選出しました。彼は「スポーツ界にあって多くの問題を抱えた運営団体に『新しい時代』の到来を告げる」と述べました。しかしながら、インファンティーノもまた最近パナマ文書で名前があがり、収賄で告訴されているビジネスマン二人と2006年に契約を交わしていたと伝えられました。彼は自身の高潔が問われるとメディアに「遺憾」の意を示しました。あなたはこの新事実に驚きましたか?あなたはインファンティーノが現職に最適な人物だと思いますか、それともこれらの最近の疑いは、不完全な指導者が継続していることを示していると思いますか?

AW:内部関係者がFIFAを現在の泥沼から連れ出すのに最適な人物になるとは全く思いません。FIFAのルールは、内部関係者に有利になるように作られていて、新たなスタートの希望は実際のところありません。組織は内部関係者の利益になるように調整されています。これを最も良く表しているものは、インファンティーノが、209のサッカー連盟 (FA) による新会長の投票の前に最後にしたことの一つなのですが、ある部屋で全FAに500万ドルというこれまでに最も多い金額をそれぞれに約束したことです。つまり、投票のほんの数分前に彼は10億ドル以上を投票者に約束したのです。FIFAのリーダーはFAに巨額な資金を配分でき、FAが会長を権力の座にとどめるのであれば、選手やクラブ、ファンに気を配るインセンティブはどこにあるでしょうか?

FM: サッカー界をどう思われますか?汚職の手は、このスポーツのどこまで伸びていると思われますか?

AW: 我々のグループは企業レベルでの改革に重点を置き(ほぼ失敗し)ました。しかし、コンフェデレーションとサッカー連盟は、我々が見てきたように、明らかに自分たちの問題を抱えています。そして我々は、汚職、支配、組織的犯罪の世界全てとも言える八百長疑惑の問題を考えてみることさえしませんでした。

FM: なぜあなたが所属していたFIFAの独立系ガバナンス委員会は失敗したのでしょうか?

AW: 我々は2つの理由で大きな失敗をしました。まず、推奨した改革の多くが徹底的に拒絶されるか、無力化されました。しかしより重要な点は、我々がガバナンスの向上に取り組んでいた組織は、もっと基本的な問題を抱えていたということです。我々はつい最近になって知ったことがあります。例えば、あの秘密、ブラッターとプラティニを活動停止に導いた、二人の間で交わされた口約束です。このようなことが上層部で、またFIFA財務担当役員で事務局長代理のマルクス・カットナー (Markus Kattner) も承知の上で行われているのであれば、外部によるガバナンスが向上したとしても、ものになることはありません(参照http://tinyurl.com/z93bxvr)。カットナーは別の理由で5月23日に解雇されました。

FM: FIFAが良い方向に向かっていくには何が重要だと思いますか?

AW: 独立した監視でしょう。FIFAはとても誘惑の多い場所です。人々は組織に入ると、瞬く間にその場所に魅了されてしまいます。そこから抜け出す唯一の方法は、広範囲な権限を持った協力で短期間の移行組織と変化を強制できる短期間の権能を持つことです。そうしなければ、保守的な古株が単に新しい人物に変わっていくだけです。問題は、今に始まったことではありませんが、権力あるポジションにいる者だけがこのアイデアを実行できるということであり、彼らにはそのインセンティブがありません。少なくとも企業では、株主が最終的に計画をして、もう十分だと宣言することができます。サッカーのガバナンスの世界では、株主はいません。ファン、選手どころか、クラブでさえ、意見ができないのです。

(その3に続く)
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初出:FRAUDマガジン52号(2016年10月1日発行)



この記事の執筆者

Emily Primeaux, CFE
FRAUDマガジンの編集助手を務める。
※執筆者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである

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2019.07.05 16:05:47