HOME コラム一覧 言葉に架ける橋 不正調査チームにプロの通訳者を迎える(その3 全4回)

言葉に架ける橋 不正調査チームにプロの通訳者を迎える(その3 全4回)

post_visual

 通訳者は、意味の解らない単語、クライアントが過度に早口で話す、または自分の疲労のため正確な訳を伝えられない等の事情がある場合は、会話の進行を止めて、通訳中に自分が犯した誤りを伝える必要があります。
 通訳の方式は、同時通訳と逐次通訳の2種類があり、どちらを採用するか決めなければなりません。同時通訳は最も一般的ですが最も難しく、話の流れを止めることなく、聞き取りと通訳を同時に行います。CFEが法廷、会議や各種イベントで使うことの多いのはこの方法です。
 逐次通訳は、少人数のグループや1対1の打合せには最適な方法です。通訳者は、会話が小休止するまで待ち、会話の言語を母語としない人にその意味を伝えます。より会話的な方法なので、面接調査、宣誓供述調書(depositions)、弁護士とクライアントのミーティングによく使われます。もし、この遂次通訳を選択するのであれば、通常の2倍の時間がかかることを見込んでおかなければなりません。

コミュニケーション・ツールとしての通訳者(Communication Tool)

通訳者を通じたコミュニケーションの秘訣を紹介しますので役立てて頂ければ幸いです。

秘訣1(Tip 1)

 クライアントの文化に適した自己紹介を行います。もしあなたのクライアントの習慣が握手であれば握手をし、お辞儀の習慣があるならお辞儀をします。このような振る舞いによって、通訳無しでもクライアントとの信頼関係を構築し理解を得ることになります。

秘訣2(Tip 2)

 もし、まだ試していないのなら、コミュニケーションを取り易くするよう、(椅子、テーブル等)物理的なレイアウト変更も考えるべきです。例えば、1対1の面接調査の時には通訳者も含め三者の距離が互いに同じになるように、向い会わせではなくて三角形に座ることもできます。グループインタビューの場合は、通訳者がCFEの隣に座り、グループ全員とコミュニケーションを通訳できるように円形に着席して行うことできます。

秘訣3(Tip 3)

 面接調査を開始したら、クライアントのほうを見て話すことです。通訳者に自分のメッセージを伝えて貰おうという態度で話してはいけません。例えば、通訳者に対して、紛失した預金袋についてクライアントに質問するよう依頼するのではなく、クライアントに直接質問してください。そうすることでこのインタビューをコントロールしているのは通訳者ではなくあなたであることが確実になります。同様に、通訳者はクライアントの使う言葉や視点を保ったまま話さなければなりません。例えば通訳者は次のようにあなたに伝えます。「彼は、『自分は盗んでいない』と言っています」ではなく、「私は預金袋を盗んでいません」。このような方法により通訳の正確性を高めることができます。

秘訣4(Tip 4)

 インタビューが進むにつれペースを掴むと、会話がスムーズに続くようになり、通訳者は聞き取りと発言(通訳)を同時にできるようになります。もし、逐次通訳を選択しているなら、それぞれの発言の終わりに小休止を置いて、通訳者が話す時間を与えるべきです。もし、クライアントが長く要領を得ない回答を繰り返すようであれば、次の2つの方法で対応することができます。
1. クライアントに、会話を短く区切ってくれるように依頼することです。
2. 自分の言葉の選択が適切かどうか再検証し、「はい」「いいえ」で答えられる質問を開始します。これによって通訳者は集中力を維持し、高度な正確性を維持することができます。

秘訣5(Tip 5)

 普通、私たちは自分の受けた文化的教育のレンズを通して他者を見ています。しかし、クライアントの信念、価値観、規範は、あなたが持っているものと全く異なることを忘れてはいけません。クライアントとやり取りや会話について枠組みを作るとき、相手の文化やその意味するもの、その人の文化背景が行動に与える影響について考えなければなりません。例えば、インタビュー中にアイコンタクトを維持することは、ある文化においては攻撃的だとみなされることがあります。逆に、別の文化では集中して聴いている証拠だと解釈されることもあります。

秘訣6(Tip 6)

 経験豊富な通訳者は、口調、抑揚、スピード、声の大きさ、感情、その他 話している人のあらゆる性質を伝えることができるのを理解しておきましょう。その理由は、もちろん、話し方(speech patterns)が単語と同様に意味を伝えるからです。対象となる言語にそれら(話し方)を保持することで、通訳の正確性がさらに増すのです。

秘訣7(Tip 7)

 通訳者は、時にはクライアントとしてではなく通訳者自身として話したいこともあることを認識しましょう。通訳者は次のように発言するでしょう。「これは通訳者としての発言です。クライアントにもう一度今の回答を言ってくれるよう依頼してもよろしいですか?」。通訳者は、相手の話す言葉やフレーズが理解できず、意味を明らかにする必要がある時はこのような形で話を中断しなければなりません。また、このような繰返しや説明を要請する場合には、事前にCFEに許可を得なければなりません。なぜなら、どんな会話もCFEの直接の指示がなければ、通訳者とクライアントの間で行ってはならないからです。

(その4に続く)
---------------------------------------
初出:FRAUDマガジン51号(2016年8月1日発行)

企業の不正リスク対策

Mitchell R. Davidson, CFE, CPA, CMA, CIA
アリゾナ州フェニックスのNavigant Consulting Inc.の上級コンサルタントである。
翻訳協力:佐藤 恭代 CFE、CIA、CPA(ワシントン州)
※執筆者・翻訳協力者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

企業の不正リスク

記事の一覧を見る

関連リンク

不正リスク(バックナンバー一覧)

記憶に残る事例Part2 もっと多くの指導されるべきためになる話(その1 全4回)

迫り来るミレニアル世代を標的にした不正の潮流(その1 全4回)

二度と騙されないぞ。しかし彼らは企てる。(その1 全3回)

言葉に架ける橋 不正調査チームにプロの通訳者を迎える(その1 全4回)

言葉に架ける橋 不正調査チームにプロの通訳者を迎える(その2 全4回)

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら

コラム
/column/2019/img/thumbnail/img_24_s.jpg
 通訳者は、意味の解らない単語、クライアントが過度に早口で話す、または自分の疲労のため正確な訳を伝えられない等の事情がある場合は、会話の進行を止めて、通訳中に自分が犯した誤りを伝える必要があります。 通訳の方式は、同時通訳と逐次通訳の2種類があり、どちらを採用するか決めなければなりません。同時通訳は最も一般的ですが最も難しく、話の流れを止めることなく、聞き取りと通訳を同時に行います。CFEが法廷、会議や各種イベントで使うことの多いのはこの方法です。 逐次通訳は、少人数のグループや1対1の打合せには最適な方法です。通訳者は、会話が小休止するまで待ち、会話の言語を母語としない人にその意味を伝えます。より会話的な方法なので、面接調査、宣誓供述調書(depositions)、弁護士とクライアントのミーティングによく使われます。もし、この遂次通訳を選択するのであれば、通常の2倍の時間がかかることを見込んでおかなければなりません。
2019.04.12 16:28:40