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信頼の裏切り 電子購買システムの悩み(その2 全4回)

コンプライアンス その他
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 裁判所の文書は、一般に公開されていないが、問題の核心は不正が発生したかどうかというより、非常に多くの官僚が禁止されている利益相反に参加していた事実であることを報道記事は示している(参照:「FIRは電子入札不正の容疑で22人のBMC職員を告訴」“FIR lodged against 22 BMC staffers in e-tender scam,” by Ahmed Ali, The Times of India, Nov. 20, 2014, http://tinyurl.com/pve3rxd)。BMCの事例は、信頼の裏切りが引き起こす永遠の問題は先端技術によって適切に軽減されるという希望を粉砕した。
 ザックは、この事例を興味深く見守っている。 「いくつかの場面で、BMCの不正実行犯は、締結前の契約の入札のために真夜中に電子調達システムをオープンにしたが、それは彼らと共謀し、便宜を受けた納入業者だけのためのものだった」と彼は言う。
 これは、正当な納入業者が入札に参加するのを妨げるのに効果があった。彼らは、通常の営業時間中にシステムにアクセスすることができなかったからだ。 BMCは、現在では通常の営業時間内だけ入札のためにシステムをオープンするようにしており、未締結の契約への入札は、全ての利害関係者に公開されている。

リスクアラート:人が近くで見ている!(Risk alert: Humans seen nearby!)

 「電子調達モジュールもしくは他の新しいシステムを導入した組織は、潜在的なリスクではなく、期待できる利点にばかり関心を向けています」とザックは述べている。「全ては、我々がいかにしてより速く、より効率的に、より正確にできるかに関することばかりです」。しかし、と彼は付け加える。リスク・エクスポージャーが経営陣の注意を引くのは不正実行者がそれを利用して利益を得た後になってという事が頻繁に起きている。
 「人間の行動は非常に複雑であるため、信頼の裏切は、低減するのが最も困難な不正リスクです」とザックは述べている。 「もちろん、従業員や取引先に倫理的であることを教育し、奨励することが重要です。しかし、彼らがそうなると仮定するのは禁物です」

電子のしっぺ返し?(E-backfire?)

 「モノやサービスの購入は組織の中で最も重要な機能の一つです」とザックは述べている。「ですから、組織は電子調達システムへの切り替えを意図し、潜在的なメリットは非常に期待を集めます」
 オンライン調達では、契約の機会(一般的に入札と呼ばれる)は、より広範囲の納入業者に、より明確な形で示されるので競争を促進する。また、入札の準備と公開などの業務は、迅速化・簡素化される。さらに、人的エラーの低減と透明性の向上は、不正リスクを低下させる。組織が最適に設計・運用する電子調達システムにそのような効果を期待するのは当然である。もちろん、そのようになっていない場合が多いのだが、不正が発見されるまでは、ユーザーはそのことに気づかない。
 ザックは以下のように述べている。実際、電子調達システムもしくは他の新しいテクノロジーの導入は、以下の5つのうち1つ以上の点で、組織のリスク・エクスポージャーに影響を与える。
 ・特定の不正リスクを排除する
 ・不正リスクの発生可能性を減らす
 ・既存の不正リスクの特性を変更する
 ・既存の不正リスクの発生可能性を高める
 ・新しい不正リスクを作り出す
 彼は、最も望ましくない、最悪の可能性の例を1つ挙げてくれた。「もし、会社が適切な統制を追加することなく、紙ベースの調達システムを電子調達システムに変更した場合、不正な従業員が正当な入札業者が契約の機会を知るために登録するのを妨げて、入札を行うのをうっかり許容することになります」とザックは言う。 「紙ベースのシステムでは、正当な入札を偽って不適格なものとすることは可能ですが、可能性のある入札者を完全に『締め出す』のは極めて困難です。電子調達システムの統制が脆弱だと、リスクは減少するどころか増加します。そのため、不正実行者は、リスク環境を理解していない人々によって設計され導入されたシステムを何よりも歓迎します」。
 それ故に、最初に不正リスクアセスメントを実施し、統制の追加や強化などアセスメントが示す何らかの改善策の導入をせずに、電子調達モジュールまたは他のソフトウェアを導入してはならないと彼は付け加えている。 新しい、変化した、または追加されたリスクを検出し軽減するための最良の方法の1つは、不正リスクアセスメントを継続的かつ周期的なプログラムとして設定することであると、ザックは述べている。(参照: ACFE Fraud Examiner’s Manual, “Fraud Risk Assessment” on page 4.735 「不正検査士マニュアル2015年 インターナショナルエディション日本語版」4.733ページ)

(その3に続く)
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初出:FRAUDマガジン48号(2016年2月1日発行)

この記事の執筆者

RobertTie, CFE,CFP
ニューヨークのライターであり、FRAUDマガジンの寄稿者。
Eメール:robertxtie@gmail.com
翻訳協力:山内哲也、CFE、CIA、CISA
※執筆者・翻訳協力者の保有資格等は本記事の初出時のものである。

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