HOME コラム一覧 申し訳ございません、おかけになった「不正」へは現在おつなぎすることができません。パート2 (その4 全4回)

申し訳ございません、おかけになった「不正」へは現在おつなぎすることができません。パート2 (その4 全4回)

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この記事は許諾を得て、「贈収賄事例集:テーブルの下からの眺め “Bribery and Corruption Casebook: The View from Under the Table” 」Laura Hymes, CFE, and Dr. Joseph T. Wells, CFE, CPA編、John Wiley & Sons Inc.社、2012年 より引用したものである。この事例における人名と組織名は変更した。

FBIへの照会(Referral to the FBI)

 調査を終えると、私はFBIに連絡した。会社の小切手が米国郵便でニュージャージー州からペンシルバニア州に送付されていたため、私は郵便不正の法律の管轄はFBIだと分かった。私はFBIにフォレンジックの調査メモとこれが不正であり会社の管理不行き届きによるものではないと示す全ての証拠品を提出した。幸運なことに、私の調査の「贈り物の包装紙」はFBIに訴えかけたようでそれから犯罪調査が開始された。後に捜査官は私とビールを飲みながら「あなたは私たちのために仕事の90%をしてくれていた」と言ってくれた。
 証拠として提出されたITCとTESの銀行口座の記録を見ると、口座への入金後ほとんどすぐに対応する現金の引き出しが記録されていた。言い換えれば、ジェイクはNyTellから受け取ったお金を洗浄していた。FBIは即座にNyTellの支払った金額が、家の改装や高級車、住宅ローンの支払やクレジットカードの支払、ラスベガスやドミニカ共和国への旅行、ボルティモア・レイブンズのシーズンチケットの支払に使用されたことを突き詰めた。ダンがFBI捜査官と起こしているのと同じくらいの面倒事を彼の妻と起こしていることを明らかにするために、FBIはダンの愛人が自宅近くの高級なコンドミニアムに囲われていたことも明らかにした。
 2か月後、ペンシルバニア州の中部地区地方裁判所は、ダンとジェイクを郵便不正とマネーロンダリングに関わる複数の罪で起訴した。起訴状には、彼らの家や車、銀行口座の差押えを許可する刑事罰による没収も含まれていた。
 それにもかかわらず、ダンは無実を主張した。彼の説明は「マーシャルが私をだました」から「私がNyTellから盗んだと思われている金額よりも、節約した金額の方が多い」といったものにまで及んだ。何回かの休廷を経て、ダンとジェイクは陪審に賭けているかのように見えたが、内部の調査とFBIの調査は水も漏らさぬものであった。最終的にダンとジェイクは、やむを得ないと諦め、連邦検事との司法取引の交渉をした。
 ブリオーニのスーツを着て判事の前に立つダンは今や破産者だった。解雇されてから妻は彼のもとを去り、資産は差し抑えられていた。弁護士に支払う報酬は親戚のお金で支払った。しかし、ダンは「ミスをし」「手を抜いた」だけだと主張した。自らの責任を認めようとしないダンに検察もあきれていた。彼と比較すると、ジェイクは自分の責任を果たした。彼は、これが不運で賢いとは言えない方法だった、そしてそうでなければ自分の人生は模範的であったはずだと判事に説明するために、最善を尽くした。
 しかし、判事の物の見方は異なっていた。ジェイクは連邦刑務所での30か月の刑期を宣告された。ダンはNyTellにおける信用あるポジションを悪用したこともあるので、37か月の刑期を宣告された。判事は、二人に連帯してNyTellに150万ドルの賠償をするようにも命じた。
それは、ダンとジェイクが決して払うことのできない電話会社からの請求書だった。

教訓(Lessons Learned)

ダンとジェイクから学んだ教訓に基づいて、NyTellは社内の方針と手続の多くを変更した。
・買掛金担当者は、発見に対する認識を高めるため、抜き取りによる請求書の正当性検査を実施している。抜き取り検査には、請求書を提出した業者に対する連絡も含まれる。
・支払承認者は、部下が正当性を確認したことに安心して依拠することはできない。承認者はそれぞれが各請求書の正当性を確認する責任がある。
・プロジェクトの職務は分離され、予算や購買、承認と情報の入手を一人に独占させてはならない。
・会計監査役は統括しているプロジェクトについて理解しなければならない。
・会社の外部業者は事前に審査を受け、業者の一元管理表に記載されなければならない。業務開始前に必ず契約書と業務記述書がファイルされていなければならない。
・不正の兆候に会計部門のスタッフが気付くのを手助けするために、毎年不正発見のための研修をする。
・不正の懸念を報告する義務を含め、内部通報制度の利用が増加するように会社が促進する。

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初出:FRAUDマガジン44号(2015年6月1日発行)

執筆者情報

Meric Bloch, J.D., CFE, CCEP-F
Jabil Circuit社のグローバルコンプライアンス部門のシニア・ダイレクターである。300件以上の不正と重大な違法行為の調査の経験がある。不正調査に関連した著作や講演も多い。
翻訳協力:荒木理映、CFE、CIA

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