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申し訳ございません、おかけになった「不正」へは現在おつなぎすることができません。パート2 (その3 全4回)

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この記事は許諾を得て、「贈収賄事例集:テーブルの下からの眺め “Bribery and Corruption Casebook: The View from Under the Table” 」Laura Hymes, CFE, and Dr. Joseph T. Wells, CFE, CPA編、John Wiley & Sons Inc.社、2012年 より引用したものである。この事例における人名と組織名は変更した。

 さらに、ダンはITCの請求書の正当性を確認したにもかかわらず、ITCが提供した具体的なサービスについて説明できなかった。彼はコンサルティング業務を証明するタイムシートを一度も見たことはなく、どの請求書にもコンサルタントが特定されていなかった。ダンはコンサルタントの時給を設定しておらず、誰が時給を設定したかも知らなかった。ダンは請求書に記載された時給と業務時間が正確かどうか全く分からないと認めた。ダンはそれを把握するための質問も一度もしていなかった。
 この自分に不利な自白にもかかわらず、ダンは、TESは必要だったと主張した。HALにプロジェクトのリソースが足りなかったため、TESは必要なスタッフの増強や、ケーブルの敷設、ハードウェアのレンタルサービスを提供したのだとダンは主張した。しかし、厳密な調査をいくつかすると、このプロジェクトにサービスを提供したTESの人間と会ったこともなく、誰も知らないことを認めた。サービスが提供される前に料金の設定もされていなかった。ダンは、TESがサービスを提供したのか、それがどのようなサービスだったかについても、主要なプロジェクトメンバーに一度も質問しなかった。
 プロジェクトの幹部であるダンは、自分が説明できないサービスに対する自分が知らない二つの会社からの100万ドル以上の請求書を承認したことを事実上認めた。彼は機転の利く人間だったため、自分が墓穴を掘り、その穴から出てこられなくなったことを理解した。
 調査を終えるため、私は、ダンとのインタビューの後で、ITCとTESの経営陣と連絡をするためにジェイクの手助けを依頼する電子メールを送信した。電子メールには、いくつかの請求書の正当性を確認するために、タイムシートやその他の情報が必要だと説明した。
 ジェイクは彼自身のメールからすぐに返信した。そこには「ITCとTESに関しては、どちらも私の会社であり、私が全ての請求書と請求を取り扱っています」と書かれていた。しかし、ジェイクは「海外旅行中にラップトップ型パソコンが盗難に遭い、失われてしまったため」タイムシートを提供できなかった。
 数時間後、私は返信した。「盗難」のため、私はジェイクに、1)プロジェクトにサービスを提供したITCとTESの社員を特定すること、2)そのサービスが提供されたことを確認できるであろうNyTellの従業員とコンサルタントを特定すること、3)プロジェクトに提供した大規模なサービスに関連してTESが作成した書面があればコピーを提供するよう依頼した。想定されたことだが、ジェイクはこのメールに返信してこなかった。
 調査の対象外ではあったが、ダンはジェイクと出会う前に別のスキームでNyTellを騙していたと信じるに足る理由があった。ライフスタイル、しかるべき報酬を受け取っておらず、正当に評価されていないと感じているが信頼されている従業員、全ての情報と重要な職務の両方をコントロールできる唯一の人物という兆候はあったが、誰もが見逃していた。彼が予算を設定し、経費の使用状況を追跡していたので、いつITCとTESの請求書をすぐに提出するための十分なゆとりがあるか分かるのだった。
 調査が終わるとすぐにNyTellはダンを解雇し、ジェイクとの契約を終了した。ダンのキャリアはめちゃくちゃになり、世界中を旅して集めたこまごまとした雑貨とペーパーウェイトを入れた箱を会社の執務室から運び出しながら、彼は「父が生きて全部これを見ることがなくてよかった」とつぶやいた。

(パート2 その4に続く)

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初出:FRAUDマガジン44号(2015年6月1日発行)



執筆者情報

Meric Bloch, J.D., CFE, CCEP-F
Jabil Circuit社のグローバルコンプライアンス部門のシニア・ダイレクターである。300件以上の不正と重大な違法行為の調査の経験がある。不正調査に関連した著作や講演も多い。
翻訳協力:荒木理映、CFE、CIA

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2018.07.05 18:24:29