このように、一般消費者の意識改革とともに、企業が取引先を選ぶ価値観も大きく変化しています。そして、その企業に求められる経営手法も大きく変化せざるを得ない状況になっているのです。当然ながら、お客様が変われば、そのビジネスパートナーである税理士事務所・会計事務所も変わらなくてはなりません。つまり、相手と比較されて選ばれるのではなく、お客様にとっての『たった一つのビジネスパートナー』にならなくてはならないのです。
そのモデルが、これからお話する「非競争」のビジネスモデルなのです。
デフレ状況下で業績を上げるために必要なことは、非常にシンプルです。つまり客単価UPです。その一つは、買上点数を増やすこと、もう一つは商品そのものの価格が高いサービスを提供すること。
買上点数を増やすためには、商品(サービス)の品揃えを強化し、一顧問先にたくさんのサービスを提供するしかありません。代行的業務(記帳代行、申告代行、給不計算代行・・・など)の買上点数を増やしていくには、工場化された分業システムを導入し、工程管理をきっちりと行っていかなくてはなりません。各々の専任や専門家も調達しなくてはなりません。さらに言えば、ある程度のボリューム(業務量)がないと、生産性は上がりません。
現実問題として、よほどのビジネスセンスがないと、成果をあげることは難しい・・・と言っても過言ではないでしょう(もちろん、このモデルで成果を出している方もいらっしゃいますが・・・)。
そうすると残る方法は、「商品そのものの価格が高いサービスを提供する」ということになります。
答えは簡単です。
「経営コンサルティング業務」を導入し、自社の商品として展開する・・・・。
「なーんだ・・・・」という声が聞こえてきそうですが、その「なーんだ」に真剣に取組むときが来ているのです。もちろん、今までも「経営コンサルティング業務」を自社のサービスに取込もうとされてきた事務所も多いのは承知しております。安くはない経営計画のソフトを購入したり、経営コンサルティングの勉強会にスタッフを派遣したり、多くの時間とお金を投入されてきたと思います。
でも、あまり成果に繋がっていない・・・。
アプローチが間違っていたわけではないと思います。税理士事務所・会計事務所にとって「コンサルティング商品」と言えば、やはり『経営計画+MAS監査』であることに間違いはありません。私もそう思っています。ただ、お客様にとって「買いやすい経営計画」かと言えば、残念ながらそうではなかった・・・。というのが、今までうまくいかなかった本質的な理由でしょう。
『非競争』の状態を作り出すための道はたった一つ!
では、具体的に何が足りなかったか?
端的に言えば、経営計画の中でお客様が一番ほしい部分が欠如していた・・・のです。
一番ほしい部分・・・・?
「業績を上げるための方策」です。
今まで、税理士事務所・会計事務所では、売上を上げるための経営コンサルティングはできない・・・と言われてきましたし、今でもそう考えてらっしゃる方も多いと思います。
しかし、本当にそうでしょうか?
税理士は税務の専門家であって、経営の専門家ではないから・・・
B/Sをいじるのは得意だけど、P/Lの一番上をいじるのは不得手・・・
業績UP=営業・・・税理士は営業は苦手だし、そもそも経験がない・・・
業績UPの方法は、顧問先の社長のほうが詳しいし・・・
いろいろな理由(というかできない言い訳)はあるでしょう。しかし、皆様も本質的には理解しているはずです。企業経営で一番重要なのは、「業績を上げること」だと。
もちろん、「資金繰り」を改善して欲しい、というニーズは数多くありますし、税理士事務所・会計事務所の得意領域として、この部分のコンサルティングは行わなくてはなりません。でも、いまや「資金繰り」を改善するためには、「業績UPの仕組・構造」にメスを入れなくては、顧問先を守ることもできないし、結果として事務所を守ることもできない・・・という時代に突入してしまったのです。税理士事務所・会計事務所として、「税務会計の専門家」から「経営の専門家」へ変化しなくてはならないということです。そして従業員さんで言えば、「監査担当者」から「経営コンサルタント」へ進化することを意味しています。
今の税務会計に加えて、業績UPの仕組・構造について、改善提案ができる「経営コンサルティングサービス」を付加することができれば、先ほどお話した、「価格競争」とは無縁の安定した事務所経営ができるこことは間違いありません。なぜなら、その存在はお客様にとって『他にはない、たった一つの存在』になるからです。
このままでは、税理士事務所・会計事務所の存在は、『経営の一分野である税務会計の外注先』になってしまいます。もちろんそれを認めたくはないでしょうが、現実問題として、今の税理士事務所・会計事務所が、『単なる外注先』になりつつあるのは、残念ながら事実です。
そうではない状況、つまり、『社会的価値の高い理念を確立し、独自のビジネスモデルを有し、その結果として、持続的な成長ができて、お客様も従業員が素晴らしい事務所であると誇りの持てる組織・・・すなわちグレートカンパニーを目指す』という経営にシフトすることが、今一番大切なことなのではないかと思うのです。
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