HOME コラム一覧 不完全な採用調査が大きなトラブルにつながる 倫理に関する重大な決断が必要(その2 全4回)

不完全な採用調査が大きなトラブルにつながる 倫理に関する重大な決断が必要(その2 全4回)

post_visual

報告オプションのベストプラクティス (Best practices for reporting options)

 大多数の雇用主が、そしてあきれたことに大半の身元調査会社が理解していないことは、合衆国法典15編1681 k (15 U.S.C.§1681k of the FCRA) の下で採用の見込みに悪影響を及ぼす可能性のある公的記録に関し、CRAは3つの報告オプションを持っていることである。
 1. 善良だが素人である:所与の法定報告期限内に起きた有罪判決を報告すること。例えば、いくつかの州では、CRAは、消費者が身元調査の実施に同意した日から起算して7年前の期間に限り有罪判決を報告するかもしれない。不幸にも、多くの素人は、単純に有罪判決は報告可能だと考えるが、もし最終判決日が7年の報告期限と重なるなら、実際には7年の規則に先立つ過去の有罪判決は、例外なく報告可能である。
 2. より良いが卓越していない:特定の法定報告期間(例えば、7年の報告期間を課す州のひとつ)と重なるかも知れない有罪判決を10年遡って検索すること。
 3. ベスト・プラクティスにして卓越している:成人年齢(18歳)にまで遡り、特定の法定報告期間と重複するかもしれない有罪判決や破産宣告を特定するため、住居、雇用、または裁判所管轄地から、または管轄地への移動を検索する。またすべての関係する管轄地を検索することが、完全な有罪判決確認を確実に行う唯一の方法であることをエンド・ユーザーに対し強く推奨する。
 もちろんオプション3は、CRAが最も完全な情報を確定する上で、最も広範な検索条件を可能にするので、ベスト・プラクティスであるといえる。
 私のクライアントが利用したCRAは、フセンファーフェルの犯罪記録について最初に調査した際、3つのオプションのすべてを無視してしまい、それ故、フセンファーフェルの本質を知る格好の機会、たとえその機会が22日間であったとしても、それを与えてくれたはずの有罪判決を見逃してしまった。
 調査会社が適用可能な報告オプションに気づかないか、それらを無視するか、あるいはクライアントに対し報告可能な有罪判決につながる発見をアドバイスできなかったかのいずれかのときに、調査会社は倫理を喪失した。もし用心深いリクルーターが不審を抱かなければ、フセンファーフェルをまた権力の座につかせる様なことになったであろう。

Ethical basics for criminal records providers (犯罪記録提供者に対する倫理的基礎)

 1 .FCRAの遵守を確実にするためには、エンド・ユーザーに報告可能な情報の範囲を理解し、アドバイスする必要がある。
 2. 以下の情報源から最も完全かつ正確な有罪判決の情報を間違いなく入手できる調査手段を理解する。
  ・裁判所書記官オフィス (Court clerks’ offices)
  ・地方、州、連邦政府の公的記録のオンライン・データベース
  ・ナショナル・バックグラウンドデータ/コアロジック (National Background Data/CoreLogic) やレクシスネクシス(LexisNexis)といった様な、リード・ジェネレーション型の民間または公的団体が運営するデータベース
 3. 公的データベースではないものの限界、例えば情報の深さや安定性やファイル保存の幅を理解し、エンド・ユーザーに伝達する。
 4. すべての入手可能な有罪判決情報を捕まえるために、検索プラットフォームには徹底を期する。
 5. 重罪や軽犯罪について裁判所が提供可能な情報を理解し、そしてエンド・ユーザーの基準、またはそれがない場合は報告基準を間違いなく充足する有罪判決情報の最大範囲を決めるためにそれをクライアントにアドバイスすること。
 6. 適用される有罪判決情報を素早くクライアントに報告する。

Poor background check of a violent bus driver (暴力的なバスドライバーに対して行ったお粗末なバックグラウンドチェック)

 あるバスドライバーがシフトを終え、バスを止め駐車する。年老いて身体の不自由な1人の乗客が、遠くまで歩かなくてもよい様に、そのドライバーにあと100ヤード先まで行ってくれる様に懇願する。バスのドライバーは、その乗客に対し、ぶっきらぼうに、自分はシフトを終えたので、ここでバスを降りるように命じる。
 その乗客は、人種差別的中傷を使い、自分の不平を表現する。ドライバーは、ユニフォームのシャツを脱ぎ捨て、バスを降り、その乗客を情け容赦なく殴る。ドライバーは逮捕され、有罪判決を受け、刑務所に送られる。
 バス会社がそのドライバーを雇い入れたとき、会社が実施したバックグラウンドチェックが不十分であったため、同意日の20年前に発生したものの、事件発生の州の制定法で決められた7年の報告期限を迎える7日前に最終判決を受けた3件の武装強盗に関する有罪判決の情報を見逃してしまった。
 最終判決を受けたのは、ドライバーが自らのバックグラウンドチェック実施の同意を行った日から遡る6年と358日前のことであった。そのドライバーが14年間の服役と5年の仮釈放期間を受けることとなった、その恐ろしい暴力事件の有罪判決をクライアントに報告するため、バックグラウンド調査会社が知り得た唯一の方法は、前述のベストプラクティスであるオプション3であっただろう。

(初出:FRAUDマガジン56号(2017年6月1日発行))
(その3に続く)

この記事の執筆者

Roger W. Stone, CFE
採用調査会社であるAPSCREEN社の創業者。ACFEの終身会員であり、ACFE Editorial Advisory Committeeのメンバーである。
※執筆者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

企業の不正リスク対策

記事の一覧を見る

関連リンク

不正リスク(バックナンバー一覧)

購買業務の難しさ 「信頼というベール」が 不正の発見を阻む(その1 全4回)

倒産事例における不正の発見 支払不能日をいつに決定するかで不正利得を回収する(その1 全4回)

不完全な採用調査が大きなトラブルにつながる 倫理に関する重大な決断が必要(その1 全4回)

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2020/img/thumbnail/img_24_s.jpg
 大多数の雇用主が、そしてあきれたことに大半の身元調査会社が理解していないことは、合衆国法典15編1681 k (15 U.S.C.§1681k of the FCRA) の下で採用の見込みに悪影響を及ぼす可能性のある公的記録に関し、CRAは3つの報告オプションを持っていることである。 1. 善良だが素人である:所与の法定報告期限内に起きた有罪判決を報告すること。例えば、いくつかの州では、CRAは、消費者が身元調査の実施に同意した日から起算して7年前の期間に限り有罪判決を報告するかもしれない。不幸にも、多くの素人は、単純に有罪判決は報告可能だと考えるが、もし最終判決日が7年の報告期限と重なるなら、実際には7年の規則に先立つ過去の有罪判決は、例外なく報告可能である。 2. より良いが卓越していない:特定の法定報告期間(例えば、7年の報告期間を課す州のひとつ)と重なるかも知れない有罪判決を10年遡って検索すること。 3. ベスト・プラクティスにして卓越している:成人年齢(18歳)にまで遡り、特定の法定報告期間と重複するかもしれない有罪判決や破産宣告を特定するため、住居、雇用、または裁判所管轄地から、または管轄地への移動を検索する。またすべての関係する管轄地を検索することが、完全な有罪判決確認を確実に行う唯一の方法であることをエンド・ユーザーに対し強く推奨する。 もちろんオプション3は、CRAが最も完全な情報を確定する上で、最も広範な検索条件を可能にするので、ベスト・プラクティスであるといえる。 私のクライアントが利用したCRAは、フセンファーフェルの犯罪記録について最初に調査した際、3つのオプションのすべてを無視してしまい、それ故、フセンファーフェルの本質を知る格好の機会、たとえその機会が22日間であったとしても、それを与えてくれたはずの有罪判決を見逃してしまった。 調査会社が適用可能な報告オプションに気づかないか、それらを無視するか、あるいはクライアントに対し報告可能な有罪判決につながる発見をアドバイスできなかったかのいずれかのときに、調査会社は倫理を喪失した。もし用心深いリクルーターが不審を抱かなければ、フセンファーフェルをまた権力の座につかせる様なことになったであろう。
2020.04.10 16:14:35