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倒産事例における不正の発見 支払不能日をいつに決定するかで不正利得を回収する(その3 全4回)

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債務超過を確定する上でのCFEの役割 (ROLE OF CFES IN DETERMINING INSOLVENCY)

CFEは、倒産手続きにおいて以下の役割を果たすことができる。
1. DIPや管財人は、CFEを本当の債務超過日を確定するための専門家として雇うことができ、彼らは、破産財団の利益のために不正資産移動や優先弁済からの回収を追及することができる。
2. 債権者は、DIPや管財人が主張する債務超過日への反論を支援するためにCFEを専門家として雇うことができる。

不正に関する債務超過の定義 (DEFINITION OF INSOLVENCY AS IT RELATES TO FRAUD)

 米国破産法101条32項A(http://tinyurl.com/he5ft5m)は、「債務超過とは、企業の債務総額が市場価格で評価した当該企業の資産の価値を(譲渡、隠匿、廃棄されたものを除き)上回ることである」と定めている。
 米国連邦法26編108条D3項 (http://tinyurl.com/gsl64qu)では、債務超過を「債務額が資産の市場価格を上回ったもの」と定義している。この条文では、納税者が債務超過か否か、債務超過額については、倒産の直前の資産と債務額によって決定されると定められている。
 これらの定義は、意味は非常に似ているが、全く同じということではない。

前述の債務超過の定義を使用した場合の本質的な欠点 (INHERENT WEAKNESSES OF USING THESE INSOLVENCY DEFINITIONS)

 倒産や内国歳入庁の定義のみを債務超過日の決定に用いる場合、以下の問題がある。
 ・債務超過日後に企業がプラスの純利益を得た場合、債務超過の認定が困難になる。
 ・企業が倒産申立前の一時点で債務超過になったからといって、債務超過日と倒産申立日の間常に債務超過だったとはいえない。
 ・場合によっては、プラスのキャッシュフローは、企業が債務超過でないと主張される余地がある。

 ビジネスに再投資してプラスの純利益を得た場合、その企業は、債務を上回る資産を市場価格で有することになる。
 債務超過日の後で、資産の市場価格を上昇させ債務の市場価格を下落させる以下のような肯定的な事象が発生する可能性がある。
 ・資産の市場価格が債務の市場価格上回るのに十分な事業からの収入。
 ・資産の市場価格が債務の市場価格を上回るのに十分な投資が個人または事業者によって行われた。
 ・ある市場の変化がある資産の市場価格を上昇させた。
これらの事象は、企業が後に破産申請をするとは思えないほど長く続くこともあるが、以下に示す類型であることもある。
 ・事業からの収入が倒産前の一定期間は黒字だが、後に損失になる。
 ・投資額が一定の期間、企業を資産超過にするが、事業上の大きな損失により、倒産申立前の段階で、市場価格の債務額が資産額を上回る。
 ・プラスの市場変化の後のマイナスの変化がある資産の価格を下落させる。
債務超過日と破産申告日の間のいずれかの時点であっても企業が資産超過状態にあったことは、債権者の強力な論点となる。

市場価値で測った資産額が負債額を超えたかを判断するため財務諸表を調整する (ADJUSTING THE BALANCE SHEET TO DETERMINE IF FAIR MARKET VALUE OF ASSETS EXCEEDS THE LIABILITIES)

 GAAP(一般に認められた会計原則)により作成された企業の貸借対照表や財産状態表は、取得原価により表示される項目と現在価格により表示される項目の組合せである。企業の債務超過日を決める際、貸借対照表は、帳簿価格から評価額により再計算される必要がある。
 帳簿価格から評価額への変換の前提は、債権者側と企業側双方の専門家の間で厳しく議論される。この専門家がCFEである可能性があり、実際CFEであることが多い。
 「”Determining Insolvency in Preference and Fraudulent Conveyance Actions,” in the American Bankruptcy Institute Journal by Sharyn B. Zuch and Richard P. Finkel, Vol. XX, No. 9, November 2001(米破産協会雑誌20巻9号(2001年11月)(優先的かつ不正な資産譲渡における資産超過の判定)」 (参照:http://tinyurl.com/jrqhgnb) という記事に掲載されたこの変換の優れた例を以下に示す。

(初出:FRAUDマガジン55号(2017年4月1日発行))
(その4に続く)

この記事の執筆者

Roger W. Stone, CFE
イリノイ州シャンペーンのManagement Accounting Services社のオーナー兼経営者である。主に、債務超過の判定と法廷会計に関するサービスを事業者と弁護士に提供している。
※執筆者の所属、保有資格等は本稿初出時のものである。

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