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均衡を揺るがす 有罪・無実の偏見をもつことなかれ (その3 全4回)

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 トンプソンにかけられた容疑や容疑に対するトンプソンの(彼女の弁護人に対する)説明を十分に理解してから、私は、アクションプランを緻密に立てた。

 事実関係のマトリックスを作成する。自由度の高い調査や報告の仕組みこそが不正検査士が導き出す最終考察、結論や勧告意見を構築していくものとなる。それは、調査に基づいた不正検査士の法則、仮説としてスタートし、初期の調査戦略を決定していく。ここで不正検査士は、重要人物、場所、事実や時系列を特定していくのだ。不正検査士は、こうした情報を活用して、可能性のある不正検査の結果を絞り込み、証拠を評価し、そして、法則や結論の可能性に対して証拠を分析し、明らかにしていくのである。
 トンプソンに疑いのかかっている不正行為についての結論に至った際に警察やサービスラインが依拠していた推測内容を確定する。
 嫌疑を裏付けるはずの証拠がすべて存在しているかどうかを確認する。万一存在しないならその理由を確認する。
 もし開示されていたならトンプソンの立場に有利になるかも知れない情報で警察やサービスラインから提供された情報の中に存在しないものを特定する。
 警察やサービスラインの調査アプローチを検討し、調査の公正さ、独立性、客観性や先入観の要素を評価する。
 トンプソン個人や家族の経済状況を調査する。それには、金遣いのパターンや癖、個人や家族の借財、クレジットカード出費のパターン、ポイントカードの履歴や小売店での立替払履歴を含む。
 トンプソンがサービスラインで仕事をしていた時のことを知る第三者を見つけてインタビューを行い、彼女のライフスタイルに関する見方について情報を提供し得る人物を探し出す。

事実は辻褄が合わなかった(Facts just didn’t add up)

 事実関係のマトリックスから、私は、調査のため重要な情報を握っているかも知れない人物を特定した。まず、情報開示プロセスを通じて警察が提供してくれた資料からスタートし、その上で必要になるかもしれない他の情報が何かを判断していった。
 私は、この事件のよって立つ理論をはっきりさせるため一連の疑問を自らにぶつけるともに、この疑問に答えられる人物を選別した。私自身、トンプソンから直接事情を聴いたことはなく、書面によるやりとりや弁護士を介しての連絡のみである。このやり方で彼女の回答における法律上の秘匿特権を保持することができたし、私は遠慮なく質問を行うことも情報を得ることもできたのだ。
 彼女の堅実な経済状況は、財産、収入、家族状況や金遣いのパターンから明らかになった。私の分析の多くは、照会を通じて提供された資料を読み切ることやスプレッドシートに比較データを入力することによるものである。私は、全てのデータを電子データにスキャンし、キーワード判別のための検索をかけた。(意味のない書類の山に埋没しないために)分析段階で極めて重要なことは、当初のマトリックスに立ち戻って新たに発見された資料を照らし合わせることだった。そのたった一つの文書こそ、調査計画の概略であり、ルートマップであり、調査ガイドであるのだ。もし、定期的にマトリックスに立ち戻らなかったら、大量の文書、数字や無関係の情報によって簡単に軌道を外れ、行く手を阻まれていたことだろう。

(その4に続く)
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初出:FRAUDマガジン45号(2015年8月1日発行)

この記事の執筆者

David Petterson, CFE
ACFEの名誉理事であり、フォレンジックアカウンティングサービス(Forensic Accounting Services Ltd)の取締役である。同社は、ニュージーランドを本拠として財務調査や訴訟支援業務を行っている。
翻訳協力者:神谷泰樹、CFE、CRMA
※執筆者の所属、翻訳協力者の保有資格等は本記事の初出時のものである。

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