97)AI時代の財務分析指標とは?②
前回に引き続き、今回も「固定資産投資効率」について考えていきたいと思います。前回は、固定資産には利益に貢献する資産と、そうではない資産があることを確認しました。今回は、その「価格」について整理します。
決算書、特に貸借対照表を解りにくくしている大きな要因の一つに、『固定資産の価格』が挙げられます。例えば、あなたの会社が工場の底地を所有しているとします。決算書の土地の価格は、購入時点での土地の価格が原則これまでも、これからも記載され続けます。これは本来おかしなことです。
周囲に何もない時代に購入した土地が、開発が進んだ現在も同じ価格ということはありません。バブル時に高騰した地価は、その崩壊後に相当下落しましたが、決算書には購入時の価格でしか記載されません。この現実を踏まえ、固定資産投資効率を考えてみます。
話をわかりやすくするために、同じ広さで、同じ設備を使って、同じ量の製品を製造・販売している隣り合わせの会社が2社あったとします。普通に考えればこの2社の生産力は同じはずですが、先程のように何らかの理由で地価に価格差が生じており、その数値を基準に固定資産投資効率を計算すれば、結果は異なる事になります。
もちろん、高い土地を買った会社と、安いときに買った会社の投資効率が異なるのはおかしなことでは無いと考えることも出来ます。問題はそこではありません。
土地と違って、機械設備や車両等は減価償却しますので、取得価格が決算書にいつまでも計上されることはありませんが、そもそも減価償却期間の設定を実態に合わせているような企業は少ないでしょうから、そういった前提で設備の投資効率を計算しても生産性を正しく表現しているとは言えなくなります。
なんだかややこしい話になってきたかもしれませんが、ここまででお伝えしたいのは、一口に固定資産投資効率を見ると言っても、そもそも固定資産の中身とその投資額が適正でなければ、固定資産投資効率そのものを比較検討してもあまり意味が無いということです。
では、固定資産投資効率には意味が無い!という話になりそうですが、そうではありません。これから益々、コンピューターやロボットといった設備が活躍時代になることを考えると、固定資産投資効率を検証することは企業にとって大変重要になります。前回と今回の前提を踏まえて、この指標をどう活用するのか?を次回考えてみたいと思います。