96)AI時代の財務分析指標とは?
93〜95回と3回に渡って「労働分配率」について考えてきました。労働分配率は社員一人ひとりが生みだす付加価値であり、会社の底力を表しています。また、その裏側にあるパラドクスをどのように解決していくのかが経営者にとって大変重要なテーマであり、会社の成長をダイレクトに表現することを確認しました。
今回取り上げるテーマは「固定資産投資効率」です。労働分配率の「社員一人ひとりが生み出す付加価値」に対して、固定資産投資効率では「固定資産が生みだす付加価値」を確認する事ができます。設備産業(利益を出す主体が「人」ではなく「機械等」である業種)においては、労働分配率と同じ意味合いを持ってくる重要な指標です。
計算式は『付加価値/固定資産』となります。ここで大切なのは他の指標と同様、決算書に記載されている固定資産でそのまま計算してもあまり意味がないということです。付加価値は過去触れていますので、今回は『固定資産』について考えてみます。
固定資産とは、土地や建物といった不動産はもちろん機械や車両等であり、決算書でもそのように分類しています。しかし、ここでは視点を変えて、固定資産を次の2つの考え方で分類して捉え直してみてください。その分類とは「利益を生む資産」と「利益を生まない資産」です。
製造設備や車両運搬具は利益を生み出すでしょうし、社屋や工場の土地や建物も利益に貢献しています。一方、別荘や遊休地、稼働していない設備やゴルフ会員権は、活用している内容によっては利益を生むとはいい難いかもしれません。
「利益(=価値)を生むか、生まないか」は経営者の価値観によって、捉え方が180度変わります。そういう意味でも、一度自社の資産についてじっくりと考えて頂く機会を設けて頂いても良いと思います。
さて、皆さんの会社の固定資産はどういった状況になっていますか?全て利益に貢献しているという会社もあれば、そうでない資産が多いという会社もあるかもしれません。是非見直してみてください。次回は、この前提を踏まえ、更に固定資産投資効率について掘り下げます。