HOME コラム一覧 暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その4 全4回)

暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その4 全4回)

post_visual

説明責任、危険の兆候そして不正防止のための課題 (Accountability, red flags and fraud prevention issues) の続き

4. 内部統制と権限の分離 (Internal controls and segregation of duties)

 内部統制のレビューを実施すること。もちろん、一人が管理組合の運営に関するすべて、業者の選定、作業の監督、修繕に関するあらゆる意思決定などを行っているべきではない。しかしながら、比較的小規模の自己運営型管理組合は、他の人がやりたがらないという理由から、しばしば一人で運営することになる。あるいは比較的規模の大きい管理組合でも、有能といわれている管理者を一人だけ採用し、細かなこと全てを任せてしまうということが起こる。これは、災害のレシピである。
 コンドミニアムの維持のために集められ、使用される金額はかなりの額にのぼるため、ほとんどの横領者の狙いは現金となる。従って、現金に関する適切な権限の分離が極めて重要となる。
 異なる理事メンバーがすべての請求書を承認しているべきである。帳簿係が小切手の準備をすることが多いだろうが、管理組合の役員がそれにサインし、他の誰かが銀行口座の残高照合を行うべきである。管理組合は、帳簿係が口座の動きを確認できるようオンラインバンキングを手配しても、資金移動を可能にしてはいけない。加えて、高額の小切手は、2名の理事のサインを求めるべきである。繰り返すと、管理組合は、現金の管理を決して一人の人間に任せるべきではない。
 もし、管理組合が最近は会計帳簿の外部監査を受けていないのであれば、会計システムを念入りに調査する必要があるだろう。実際の支出と予算額を比較すること。もし、何かが不適切に見えたら、支出の傾向を分析する。
 明らかな理由なく増加している支出を探しなさい。(参照:補足記事 (Sidebar)「典型的な管理組合の統制上の課題と問題」「重要な権限分離および求められる内部統制」)

5. 積立金 (Reserves)

 多くの管理組合は、新しい屋根や建物の塗り替えのような大規模修繕向けの積立のため、定期預金証書および普通預金口座またはそのいずれかを使用している。これらの口座の会計、銀行取引記録を詳しく調べること。もし記録が存在しなければ、注意すること。
 管理組合が大規模修繕の為の分担金を課している場合には、誰が自分の分を支払っていないかチェックすること。

6. 連邦政府及び州政府の要求事項 (Federal and state requirements)

 たとえ管理組合に課税対象の収入がほとんどなかったとしても、毎年の納税申告が適切になされているかどうか確認すること。少なくとも情報の申告は提出されているべきである。
 管理組合は、サービスの提供者に対するForm1099(訳注:個人で活動する事業主(Independent Contractor)、および弁護士等(Lawyer)の外部サービスを利用した際、当該サービスの提供者に対していくら支払いをしたのかを記録するための書式)の準備や従業員に対する適切な源泉徴収も行っていなければならない。管理組合が、屋根の張替えや塗替えなど次回の大規模プロジェクトの時期や費用を見積もるため、積立金の調査を最近行ったかどうか確認すること。いくつかの米国の州では、積立金調査および年次監査またはそのいずれかが求められている。管理組合は法人であるため、一般的に年次報告書や理事の氏名、その他の情報を州へ提出しなければならない。

管理組合の支援 (Helping hands for HOAs)

 もちろん、管理組合が不正検査士に財務状況の調査を依頼するならば、理事会や組合の誰かが懸念を持っていることになる。高い維持費や、なぜ運営コストがこんなにもかかるのかといったことは懸念を引き起こす。しかし、理事会は維持費に関して所有者に理由の詳細を説明していないだけかもしれない。
 あるいは、資産管理者か帳簿係が実際に管理組合の資金を不正に管理あるいは流用していることもあり得る。もしあなたが呼ばれたなら、やるべきことは管理組合の運営を理解し、状況を評価することだろう。不正が発見されるかどうかにかかわらず、適切な会計システムを構築するために必要ならば、より良い内部統制や資格を持った会計士の助言を得ることを勧めることで、状況の改善を支援することができるのである。

---------------------------------------
初出:FRAUDマガジン45号(2015年8月1日発行)

執筆者情報

Linda Lee Larson, D.B.A., CFE, CPA
退任した会計学准教授である。
※執筆者の所属等は本記事の初出時のものである。

翻訳協力者:田邉 慶周、CFE、CIA

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

企業の不正リスク対策

記事の一覧を見る

関連リンク

不正リスク(バックナンバー一覧)

暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その1 全4回)

暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その2 全4回)

暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その3 全4回)

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2017/img/thumbnail/img_24_s.jpg
 内部統制のレビューを実施すること。もちろん、一人が管理組合の運営に関するすべて、業者の選定、作業の監督、修繕に関するあらゆる意思決定などを行っているべきではない。しかしながら、比較的小規模の自己運営型管理組合は、他の人がやりたがらないという理由から、しばしば一人で運営することになる。あるいは比較的規模の大きい管理組合でも、有能といわれている管理者を一人だけ採用し、細かなこと全てを任せてしまうということが起こる。これは、災害のレシピである。 コンドミニアムの維持のために集められ、使用される金額はかなりの額にのぼるため、ほとんどの横領者の狙いは現金となる。従って、現金に関する適切な権限の分離が極めて重要となる。 異なる理事メンバーがすべての請求書を承認しているべきである。帳簿係が小切手の準備をすることが多いだろうが、管理組合の役員がそれにサインし、他の誰かが銀行口座の残高照合を行うべきである。管理組合は、帳簿係が口座の動きを確認できるようオンラインバンキングを手配しても、資金移動を可能にしてはいけない。加えて、高額の小切手は、2名の理事のサインを求めるべきである。繰り返すと、管理組合は、現金の管理を決して一人の人間に任せるべきではない。 もし、管理組合が最近は会計帳簿の外部監査を受けていないのであれば、会計システムを念入りに調査する必要があるだろう。実際の支出と予算額を比較すること。もし、何かが不適切に見えたら、支出の傾向を分析する。 明らかな理由なく増加している支出を探しなさい。(参照:補足記事 (Sidebar)「典型的な管理組合の統制上の課題と問題」「重要な権限分離および求められる内部統制」)
2018.07.05 18:24:31