HOME コラム一覧 暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その3 全4回)

暴かれたコンドミニアム不正:「気楽な」コンドミニアム生活に潜むリスク (その3 全4回)

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説明責任、危険の兆候そして不正防止のための課題 (Accountability, red flags and fraud prevention issues)

 管理組合は、ミスや不正を防止するための統制により会計システムを強化すべきである。もしあなたが不正検査士として管理組合を調査するために呼ばれたなら、見るべきいくつかの重要なポイントがある。

1. 建物の外観 (Property appearance)

 建物を歩き、手入れのされていない共用スペースや明らかな建物のメンテナンスの遅れに注意すること。そして、その原因を特定する。単純に、管理組合はより良い庭園管理業者を雇う必要があるということかもしれない。単に、毎月積み立てられた維持費が不十分ということかもしれないし、維持費の滞納者がいるのかもしれない。支出に対する適正な予算管理ができていない、あるいは維持費の設定が低すぎるということを示しているのかもしれない。管理組合資金の個人流用の可能性を調査する前に、すべての論理的で公正な理由を除外していく必要がある。

2. 資産管理上の課題 (Property management issues)

 管理組合を実質的に運営しているのが誰かを特定すること。また、資産管理者、帳簿係、その他の従業員や理事会のメンバーと会い、管理組合がどのように運営されるかを示す契約、約款、規則、留保条項といった法的文書のコピーを求めること。コンドミニアム所有者や特に購入を検討している者は、これらのルールを注意深く読むべきだが、多くの人はそれをしていない。
 信頼できる資産管理者や資産管理会社が管理組合を運営しているか? 管理組合が自己運営型の場合、どのように運営されているのか? 特に資産のメンテナンスについての決定に誰が責任を持っているのかを確認する必要がある。例えば、小規模の管理組合は、敷地のメンテナンスの為に庭園管理業者と契約を結んでいることが多い。側溝や窓の清掃などの日常業務や、塗り替えや屋根の張替え、私道の再舗装などの定期的な業務についても契約があるかもしれない。
 管理組合は、そのすべての仕事を信頼できる請負業者に入札によって外注すべきである。一人の個人がそれらの決定を行っていないことを願いたい。管理組合はこれらの議題を議論するため、最低でも四半期ごとに理事会を開催すべきである。そうでなかったら要注意である。さらに、すべてを安く抑えていることを自負している理事会の場合は、メンテナンスを遅らせてコンドミニアムの資産価値を低下させ、不正を招いているかもしれない。
 幾つの区分が売りに出されているのか、もしあるならいくつの区分が差し押さえられているのかを把握すること。また、ディベロッパーや管理組合に関連する他の団体に対する係争中の訴訟がないだろうか? 銀行は、もし管理組合にリスクがあるように見えれば、購入検討者へのローンを断っているかもしれない。

3. 記録の管理 (Record keeping)

 会計帳簿、年次予算、最近の納税申告、直近の監査や、あらゆる積立金調査のコピーを入手すること。加えて、最近の理事会の議事録を注意深く読むこと。
管理組合の会計帳簿は手作業であることもクイックブックス(QuickBooks)のようなソフトウェアパッケージであることもある。あるいはひどい場合には、実質的にあなたが帳簿を再作成しなければならないかもしれない。
 資産管理会社は、通常帳簿を管理すべきであることを知っているし、大抵はそうしている。自己運営型の管理組合は、自分の帳簿係が経験のある会計士でない限り、外部の帳簿係を雇うべきである。管理組合の会計係と他の知識のある管理組合メンバーの両者もしくは一方は、帳簿係の月次報告を見直す必要がある。
 また、管理組合は、所有者に対して財務報告(貸借対照表と損益計算書)を定期的に送り、年次監査に対価を払うべきである。管理組合は、他の多くの環境よりも相対的に資金の流用や横領、不正をはたらきやすい状況にあることを踏まえて、注意深くあらねばならないのだ。


(その4に続く)
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初出:FRAUDマガジン45号(2015年8月1日発行)

執筆者情報

Linda Lee Larson, D.B.A., CFE, CPA
退任した会計学准教授である。
※執筆者の所属等は本記事の初出時のものである。

翻訳協力者:田邉 慶周、CFE、CIA

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