「騙すつもりはなかった」 不正行為の正当化と故意 (その4 全4回)
‘I didn’t intend to deceive anyone’ Fraud rationalization and the guilty mind
また、SECの調査により、サリバンからエバースへの留守電話メッセージが発見されたが、その内容はエバースの主張と相反するものだった。
「やあ、バーニー。スコットだ。今月のMonRevも悪化する一方だなあ。最新版はすでに君と僕が手を加えたはずだけど・・・でも、出て来た数字は予定と全然違う。本当に手を入れたとは思えなかった。年の初めから今まで粉飾をしているから僕達は自分で大きな墓穴に陥っているよ」
(参照: “Report of Investigation,” Special Investigative Committee of the Board of Directors of WorldCom, Inc., by Dennis R. Beresford, Nicholas deB. Katzenhach, C.B. Rogers, Jr., March 31, 2003, at http://tinyurl.com/mmh5n3a.)
無謀な行為(Reckless conduct)
無謀な行為とは、故意に無視して行動したことが、第三者を正当化できない危険に晒すことである。ある状況下で合理的な人が払う標準的な注意から大きく逸脱するケースが代表的なものだ。例えば、ある州では、酒気帯び運転の結果の死亡に刑事責任を課す。このような行為は「無謀な殺人」に分類されている。
(参照: “Man Pleads Guilty in Death of Illinois Officer,” WGIL, Aug. 27, 2014, http://tinyurl.com/nogc5pt.)
有価証券取引の不正行為を禁止する法律の下では、メンズ・レアの中の「無謀な行為」は刑事的過失責任を形成するのに十分なものである。例えば、不正行為者の行動に不注意以上のものがあり、不十分な意思決定能力の類型を示し、他人に害を与えるような例である。
有価証券詐欺の申立てをするために、米国政府は異なるメンズ・レアを使って不正行為者に対する告発を表現することを認めている。
(参照:“What Were They Thinking? Insider Trading and the Scienter Requirement,” by Donald Langevoort, the Georgetown University Law Center, 2012, at http://tinyurl.com/lycn7kz.)
例えば、有価証券の売却に関与したと供述をした不正実行者は、投資家を騙す、操作する、搾取するなどの結果に終わった故意または無謀な行為を行ったと示すことができる。(http://tinyurl.com/lycn7kz)。
また政府の調査は、投資家の判断を誤らせようという不正実行者の動機を示すあらゆる事実や組織が知っていてかつ追求しなかった事実について不正の兆候が存在したことを示す事実に焦点を当てる。
(参照: “Red Flags for Fraud,” by Steven J. Hancox, State of New York Office of the State Comptroller, at http://tinyurl.com/75lksbu.)
例えば、エバースに対するSECの訴えは、メンズ・レアの別の使い方を示唆している。「ワールドコムが行っている本当の回線費用の会計処理方法がワールドコムの監査人に開示されていなかったことを、エバースは知っていたか、或いは知らないことに過失があった」 (http://tinyurl.com/nnk2noj)
あるCEOは投資家に対して通常の情報開示をしていたが、情報の正確性に関する最新情報を更新しなかった。このことは検察官が開示内容に重要な不正確性が含まれていると主張した場合、無謀な行為に該当する可能性がある。犯罪者は投資を検討している人達を騙すことに関して計画的な意思がなかったとしても、CEOがリスクを開示しなかったことは無謀な行為とみなされる。不正調査担当者は、単なる過失以上の重要な虚偽記載を行っている傾向を示す供述を不正実行者と思われる人から収集することができる。例えばエバースは在職中に「ワールドコムは財務的に健全である」と公の場で何度も発言しているが、実際にはそれは会社を良く見せかけるために作り出された架空の収益だった。
(http://tinyurl.com/nnk2noj)
正当化を理解する(Understanding rationalizations)
全ての犯罪者と同様に、不正実行者は自分達の犯罪行為を正当化するために、モラルとは程遠い正当化を行う。もしある人に有罪判決に求められるメンズ・レアが欠けているなら、その不正に関して有罪とはいえない。メンズ・レアの分類に詳しくなってスキルアップすれば、犯罪者がどのようにして法律的な正当化を見出して刑事的責任を軽減しようとするのかが理解できるようになるだろう。
本稿の筆者は、米国の法制度の関係者が、連邦裁判所管轄および州裁判所管轄の事件に本稿の様々な心理状態を適用する時は色々な法的差異を解釈するかもしれないことを強調している。法律上の微妙な差異に関係なく不正実行者に1つだけの心理状態を当てはめることはできないことを考慮していただきたい。本稿の題材のいずれも法的助言と考えてはならない。弁護士へ相談されることをお勧めする。
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初出:FRAUDマガジン44号(2015年6月1日発行)