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90)社員の可能性を引き出せているか?を確認する

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 今回から『生産力』のお話に移ります。生産力は「目標達成に向けた収益活動が効率的になされているか」を確認する指標です。特に「人」や「設備」という経営資源が活かせているのか?について問われることになります。

 まず取り上げる指標は「一人当たり付加価値」です。計算式は『付加価値/社員数』となります。社員を活かした経営ができているか?ということが問われる指標です。この指標を明らかにするためには、「付加価値」と「社員数」の定義が重要になります。

 「付加価値」に関しては、コラムの82回、83回で掘り下げていますので、そちらを参考にして下さい。「社員数」については業態や勤務形態を考慮して、短時間の社員が多ければ2人で1人として換算したり、季節労働者がいる場合は年間の平均人数を計算するといった工夫を
行います。

 次に、上記の計算の結果導き出された「一人当たり付加価値」が何を意味するのかを考えてみます。例えば同じ製品を製造しているA社とB社があるとします。どちらも1,000万円の付加価値を出しているとして、A社の社員は1.5人(パート含む)、B社は3人だとすれば、明らかにA社の方が社員を活かすことに成功しています。その要因としては様々なことが考えられます。
例えば…

 ・原材料を安くおさえる事に成功している
 ・製品の売価を高く設定出来ている(完成度、特異性等)
 ・効率がよく多くの製品製造をしている
 ・ミス、ムダ、ロスが発生しない(少ない)      等々

 これらの要因は、全てそこで働く人の思考力に裏付けられた創意工夫による成果といえます。そう考えると、人的資源を単なる労働力(機械で代替可能なもの)ではなく、より付加価値を高める(機械に代替できない思考力。つまり人間の本来の付加価値)という方向に投下できているかを表すのが「一人当たり付加価値」なのです。

 他業種と比較するという視点もありますが、前期の自社の一人当たり付加価値と比較してより「人的資源の付加価値を引き出す」事に成功しているかを確認してみて下さい!

執筆者情報

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白川 正芳

株式会社楠本浩総合会計事務所代表取締役
一般財団法人B/S経営をすゝめる会 監事
一般財団法人M&Aで日本を再編成する会 理事
全国会計人共同体 副代表

1997年、株式会社楠本統合戦略マネージメント入社。株式会社楠本浩総合会計事務所へ転籍後、楠本税理士事務所へ7年間出向。その後、2009年35歳で代表取締役に就任。社外内部役員として多くの顧客の支持を集める。事業承継・組織再編・M&A・公益法人を活用した経営改善の支援等々、複雑な手術を手掛ける。

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2017.10.06 09:26:50