89)財務分析とその視点
以前書いたように、人間が健康診断をいくら精緻に行っても、それだけでは健康にならないのと同じで、会社が決算分析をいくら精緻に行っても、財務状態が改善することはありません。当り前なのですが、結構この誤解をしている人は多いように思います。
そうならないために大切なのは、『診断の目的』を明らかにすることと、その『指標の意味』について事前に学んでおくことです。このコラムでは診断の目的については『ゴーイング・コンサーン』だと定義しております。
次に『指標の意味』についてですが、指標の意味がわからなければ、結果が示す問題の重大性や、改善方法が分かりません。これも人間の身体に例えれば、例えばγGDPが何で、正常値はどの程度で、悪い場合はどんな問題が考えられ、どうすれば良くなるのかがわからなければ、分析結果には何の意味も価値もありません。財務診断もこれと同じです。
指標の意味と、正常値とその改善方法がわからなければ、結果改善することは無いのですから財務分析そのものには意味も価値もなくなってしまいます。
そこで、このコラムでは第80回以降、財務診断で最も一般的な『6要素診断』に基づき、その分析指標が持つ意味の解説を続けています。既に『総資本経常利益率』『付加価値率』『売上高営業利益率』『売上高経常利益率』『売上高支払利息率』については見てきましたが、これは会社の『収益力』を見るための診断指標です。
ここで改めて6要素診断の全体像として『2つの視点』と、『6つの要素』について確認しておきます。
第一の視点…『攻撃力』
『収益力』…自社のビジネスモデルが社会にどの程度必要とされているかを確認します。
『生産力』…目標達成に向けた収益活動が効率的になされているかを確認します。
『成長力』…過去と現在の自社と比べ、ビジネスモデルが成長しているかを確認します。
第二の視点…『守備力』
『安定力』…資金の調達、運用、回収といった一連の経営活動のバランスを確認します。
『健全力』…環境の変化に対応できる体力があるか否かを確認します。
『資金力』…儲けたお金が次の儲けに無駄なく活用されているかを確認します。
この要素に基づいて、次回以降更に掘り下げてまいります!既に『収益力』についての確認は終わりましたので、次回以降『生産力』について確認してまいります。