株式公開用語ノ基礎知識
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 作成書類関係

 フローチャート  Iの部  IIの部
 有価証券通知書  大量保有報告書  計算書類
 EDINET  有価証券報告書  決算短信
 有価証券届出書  事業報告  株主資本等変動計算書
 注記表・連結注記表  連結計算書類  臨時計算書類
 最終事業年度    


 フローチャート

 伝票や証憑の作成・受渡・承認・保管、物品の受渡等の業務手順をフローチャート形式で示したもの。JASDAQ上場の際に提出が必要とされるIIの部において必要となります。フローチャートを作成しておくと、業務が均質化するとともに業務引継が容易になります。また、公認会計士の監査の際に内部統制の状況を説明する資料としても役立ちます。マイクロソフト社のVisioとそのテンプレートの使用により、フローチャートの作成が容易になります。

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 Iの部

 「上場申請のための有価証券報告書(Iの部)」の略。金融商品取引法で規定されている有価証券報告書と異なり、各取引所において定められている有価証券上場規程が作成根拠となり、証券取引所に提出することとなります。

 東京証券取引所の場合、有価証券上場規程3条2項5号に有価証券上場申請書には、新規上場申請者の商号または名称、その属する企業集団及びその経理の状況その他の当取引所が定める事項を記載した「上場申請のための有価証券報告書」を2部添付する必要がある旨定められています。

 そして、有価証券上場規程に関する取扱い要領2(2)には、有価証券上場規程第5号に規定する「上場申請のための有価証券報告書」は、Iの部及びIIの部から成るものとするとした上で、新規上場申請者(外国会社を除く。)がマザーズへの上場を申請する者である場合には、「上場申請のための有価証券報告書」はIの部とするとされています。すなわち、マザーズへの上場申請に際してはIIの部の作成は不要とされています。

 また、有価証券上場規程に関する取扱い要領2(2)aにはIの部の具体的な記載方法が述べられています。それによると「上場申請のための有価証券報告書(Iの部)」は、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(昭和48年大蔵省令第5号。以下「開示府令」という。)第8条第2項に規定する「第2号の4様式」(「第二部」から「第四部」まで)に準じて作成するものとし、「第2号の4様式」の「第二部」に準じて掲げたものの次に、開示府令第15条第1号イに規定する「第3号様式」の「第二部」に掲げる事項を、当該様式に準じて記載するものとする、とされています。

 このように、Iの部の具体的記載は「企業内容等の開示に関する内閣府令」にある様式を組み合わせて作成することから、同じく「企業内容等の開示に関する内閣府令」を作成根拠とする有価証券届出書や有価証券報告書と似たような書類となるわけです。
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 IIの部

 「上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」の略。新興企業向けの市場(マザーズ、ヘラクレス、JASDAQ、セントレックス、アンビシャス、Qボード)においては、JASDAQにおいてのみ提出が必要となります(JASDAQでは、上場申請のための報告書といいます)。
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 有価証券通知書

 金融商品取引法第4条第5項の規定による通知書をいい、一定の要件を満たす場合、財務局等への届け出が必要になります。有価証券届出書と異なり、投資家の投資判断に資するためにその提出が必要となるわけではないことには注意が必要です。

 提出期限は根拠条文により異なります。府令4条通知書の場合、募集(売出し)が開始される日の前日まで、府令6条通知書の場合、取締役会、発起人会又は株主総会の決議から遅滞なく提出する必要があります。

関東財務局「有価証券通知書について(概要)」はこちら
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 大量保有報告書

 株券の大量保有者(発行済株式の5%超を保有する者)は、大量保有者となった日から五日(日曜日その他政令で定める休日の日数は算入しません)以内に、株券等保有割合に関する事項、取得資金に関する事項、保有の目的その他の内閣府令で定める事項を記載した報告書(これを大量保有報告書といいます)を財務局等に提出する必要があります。要件に該当する株主はIPO後迅速に提出しなければなりません。
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 計算書類

 会社法上、貸借対照表、損益計算書、その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいいます(会社法435条2項)。そして、会社計算規則で「その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるもの」は株主資本等変動計算書及び個別注記表であると規定しています(会社計算規則91条1項)。株式会社は計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成する必要があります(会社法435条2項)。また、株式会社は、計算書類を作成したときから10年間、当該計算書類及び附属明細書を保存する必要があります(会社法435条4項)。

<計算書類の監査>
 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書について、監査役設置会社では監査役の監査を受ける必要があります(会社法436条1項)。さらに、会計監査人設置会社では計算書類とその附属明細書について会計監査人の監査を受ける必要があります(会社法436条2項)。

<計算書類の取締役会での承認>
 取締役会設置会社では、計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書について取締役会での承認が必要となります(会社法436条3項)。

<計算書類の株主総会での承認>
 計算書類は定時株主総会の承認を受ける必要があります(会社法438条2項)。なお、事業報告は定時株主総会での報告事項となります。会計監査人設置会社の場合、下記の一定の要件(承認特則に関する要件)を満たすと、計算書類が報告事項となります(会社計算規則163条)。
 一  承認特則規定(会社法439条及び441条4項)に規定する計算関係書類についての会計監査報告の内容に会社計算規則154条1項第2号イに定める事項(無限定適正意見)が含まれていること。
 二  前号の会計監査報告に係る監査役、監査役会又は監査委員会の監査報告(監査役会設置会社にあっては、会社計算規則156条1項の規定により作成した監査役会の監査報告に限る。)の内容として会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認める意見がないこと。
 三  会社計算規則156条2項後段又は同157条1項後段の規定により第一号の会計監査報告に係る監査役会又は監査委員会の監査報告に付記された内容が前号の意見でないこと。
 四  承認特則規定に規定する計算関係書類が会社計算規則160条第三項の規定により監査を受けたものとみなされたものでないこと。
 五  取締役会を設置していること。

<IPO準備会社と計算書類>
 IPOを想定していない会社の場合、貸借対照表・損益計算書をいわゆる税務会計に基づき作成するとともに、営業報告書や附属明細書を作成しないケースがよく見受けられます。自社の状況を適切に把握するとともに、あるべき決算書を作成し直す手間・コストを回避するためにも、企業会計に基づく決算書の作成と、営業報告書・附属明細書を適法に作成することが求められます。

<会社法の施行期日と計算書類の関係>
 計算書類の根拠法は、会社法の施行期日(平成18年5月1日)前後で異なることとなります。すなわち、会社法施行期日前に決算期が到来した事業年度分については商法が適用され、施行期日後に決算期が到来した事業年度分については会社法が適用されます。よって、会社法施行期日前に決算期が到来した事業年度分については、商法の規定にしたがい、営業報告書、貸借対照表、損益計算書、附属明細書、利益処分案(損失処理案)といった、いわば旧計算書類等を整備しておく必要があります。
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 EDINET

 EDINETとは、Electronic Disclosure for Investors’ NETworkの略。有価証券報告書有価証券届出書はEDINETを通じて提出することとなります。このメリットは提出側よりむしろ閲覧側にあります。以前は有価証券報告書をみようとすると大きな書店で購入するか、財務局や証券取引所等で閲覧するしかありませんでした。EDINETの導入により、今では自宅にいながら有価証券報告書を閲覧することができるようになりました。もっとも、現在の仕様では、取り出したデータの加工が容易でないのという問題がありますので、XBRLの採用が待たれるところです。

EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)はこちら
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 有価証券報告書

 有価証券の発行者である会社は、その有価証券が次に該当する場合、事業年度経過後三ヶ月以内に有価証券報告書を内閣総理大臣(財務局)に提出する必要があります(金融商品取引法24条1項:提出に関しては例外もあります)。

 一  金融商品取引所に上場されている有価証券
 二  流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券
 三  その募集又は売出しにつき金融商品取引法第四条第一項本文若しくは第二項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。)
 四  当該会社が発行する有価証券(株券、金融商品取引法第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等その他の政令で定める有価証券に限る。)で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上であるもの(前三号に掲げるものを除く。)

 有価証券報告書の様式は企業内容等の開示に関する内閣府令に定められており、通常は第三号様式によることになります。また、その記載にあたっては企業内容等開示ガイドラインに準拠するとともに、財務諸表に関しては財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財規)に従うことになります(中間財務諸表については中間財規、連結については連結財規及び中間連結財規)。
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 決算短信

 取引所の規則で開示が要請される資料。東証の場合、「当該上場会社の事業年度若しくは中間会計期間又は連結会計年度若しくは中間連結会計期間に係る決算の内容が定まった場合」は、直ちにその内容を開示しなければならないと規定しています(上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則2条1項3号)。各証券取引所は迅速な開示を要求しており、事業年度終了後45日以内に多くの会社が開示を終えています。決算短信の平均開示日数は年々短縮しており、東証の場合、平成17年3月決算の決算短信(連結)の平均開示所要日数は43.5日となっています。

東証の決算短信の様式はこちら
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 有価証券届出書

 金融商品取引法4条1項には、「有価証券の募集又は売出しは、発行者が当該有価証券の募集又は売出しに関し内閣総理大臣に届出をしているものでなければ、することができない。」(*)とあり、さらに、同5条1項には「前条第一項又は第二項の規定による届出をしようとする発行者は、その者が会社である場合(当該有価証券の発行により会社を設立する場合を含む。)においては、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した届出書を内閣総理大臣に提出しなければならない。」とあります。この「届出書」が、有価証券届出書のことで、通常は企業内容等の開示に関する内閣府令8条に定める第三号様式で作成されます。また、その記載にあたっては企業内容等開示ガイドラインに準拠するとともに、財務諸表に関しては財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(財規)に従うことになります(中間財務諸表については中間財規、連結については連結財規及び中間連結財規)。

*:金融商品取引法4条1項には但し書きがあるため、注意が必要です。
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 事業報告

 会社法上、株式会社は事業報告を作成する必要があります(会社法435条2項、会社法施行規則118条以下)。よく誤解されがちですが、正しくは「事業報告」であって「事業報告書」ではありません。事業報告は、やや乱暴な言い方ですが、商法における営業報告書に相当するものです。もっとも、記載内容は相当改正されていますので、注意が必要です。事業報告は定時株主総会での報告事項となります。

事業報告の内容はこちらをごらんください。
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 株主資本等変動計算書

 会社法上、株式会社は計算書類の一環として株主資本等変動計算書を作成する必要があります(会社法435条2項、会社計算規則91条1項)。株主資本等変動計算書は純資産の内訳の期首の金額、期中の変動、期末の金額を明らかにする計算書類です。「等」というのは、株主資本の内訳(資本金、資本剰余金、利益剰余金等)に加えて、評価・換算差額等や新株予約権といった株主資本以外の純資産項目を意味しています(なお、連結株主資本等変動計算書の場合、少数株主持分についての記載も必要となります)。また、金融商品取引法上の開示でも作成が必要となります。

 具体的な様式例については、企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」においては、純資産の各項目を横に並べる様式例(一覧性がありますが、冊子にした場合、当該ページだけ向きが異なるというデメリットがあります)と縦に並べる様式例(ページの向きに関する問題点はクリアされますが、一覧性に欠けるというデメリットがあります)の2つが示されています。

 もっとも、金融商品取引法上の開示では縦に並べる様式例は認められておらず、横に並べる様式例に統一されることになりました。この点、金融庁では株主資本とそれ以外の項目を上下に並べる開示例もOKとしています。これにより、「当該ページだけ向きが異なるというデメリット」は解消可能となりました。

<関連ニュース>
2006/04/25 金融庁、縦型株主資本等変動計算書を認めず
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 注記表・連結注記表

 会社法上、株式会社は計算書類の一環として注記表を作成する必要があります(会社法435条2項、会社計算規則91条1項)。注記表は、次に掲げる項目に区分して表示する必要があります(会社計算規則第129条)。

 一  継続企業の前提に関する注記
 二  重要な会計方針に係る事項(連結注記表にあっては、連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項)に関する注記
 三  貸借対照表等に関する注記
 四  損益計算書に関する注記
 五  株主資本等変動計算書(連結注記表にあっては、連結株主資本等変動計算書)に関する注記
 六  税効果会計に関する注記
 七 リースにより使用する固定資産に関する注記
 八  関連当事者との取引に関する注記
 九  一株当たり情報に関する注記
 十  重要な後発事象に関する注記
十一  連結配当規制適用会社に関する注記
十二  その他の注記

 注記に際しては、B/S、P/L、株主資本等変動計算書等の特定の項目に関連する注記については、リファレンス等を振ることにより、その関連を明らかにする必要があります(会社計算規則130条)。それぞれの詳細については、会社計算規則131条以下に記されています。

 なお、会社計算規則129条2項によると、会計監査人の設置等の区別により、注記表への記載が不要の項目が示されています(下表参照。○は該当あれば記載が必要)。

  個別注記表 連結注記表
会計監査
人設置会
会計監査人設置
会社以外の株式
会社
公開会
公開会
社以外
一 継続企業の前提に関する注記 不要 不要
二 重要な会計方針に係る事項 連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項
三 貸借対照表等に関する注記 不要
四 損益計算書に関する注記 不要 不要
五 株主資本等変動計算書に関する注記 連結株主資本等変動計算書に関する注記
六 税効果会計に関する注記 不要 不要
七 リースにより使用する固定資産に関する注記 不要 不要
八 関連当事者との取引に関する注 不要 不要
九 一株当たり情報に関する注記 不要
十 重要な後発事象に関する注記 不要
十一 連結配当規制適用会社に関する注記 不要 不要 不要
十二 その他の注記

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 連結計算書類

 会計監査人設置会社は、連結計算書類を作成することができる旨、会社法444条1項に規定されています。ここで、連結計算書類とは、会社計算規則93条に定める次の4つの計算書類をいいます。

 一 連結貸借対照表
 二 連結損益計算書
 三 連結株主資本等変動計算書
 四 連結注記表

 なお、事業年度の末日において大会社であって、金融商品取引法24条1項の規定により有価証券報告書を作成・開示している会社は、連結計算書類の作成が義務となります(会社法444条3項)。
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 臨時計算書類

 株式会社は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日を臨時決算日とした上で、臨時決算日における財産の状況の把握のために、臨時計算書類を作成することができます。臨時計算書類を作成することで、期中の利益を分配すること等が可能となります。臨時計算書類は次の2つからなります。

 一 臨時決算日におけるB/S
 二 臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係るP/L

 臨時計算書類は監査役の監査、会計監査人の監査が必要となり、取締役会設置会社においては取締役会の承認が必要となります。
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 最終事業年度

 各事業年度に係る会社法435条2項に規定する計算書類につき株主総会の承認(同438条2項。会計監査人設置会社においては取締役会の承認(同436条3項))を受けた場合における当該各事業年度のうち最も遅いもの(同2条24号)をいいます。


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