HOME コラム一覧 第28回 新型コロナ対策にも使える!中小企業の防災・減災対策を促す事業継続力強化計画とは?

第28回 新型コロナ対策にも使える!中小企業の防災・減災対策を促す事業継続力強化計画とは?

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近年台風などの大規模災害が立て続けに発生し、多くの地域が甚大な被害に見舞われました。そして新型コロナウイルス感染症によってほとんどの企業が大きな打撃を受けました。地震、津波、疫病等のリスクがいつ発生するのか、完全に予測することは不可能です。万が一災害に遭った場合、経営基盤が脆弱な中小企業や小規模事業者は事業をまともに継続させることが難しくなります。
そのため、被災しても事業を継続できるような仕組みを構築する必要があります。その仕組みによって、自社の存続だけではなく取引先の経済的損害を防ぎ、従業員の安全を確保することにもなります。リスクを想定して防災対策をしていた企業とそうでない企業の間では、被災してから事業再開までのスピードに大きな差が出ます。
そこで中小企業庁では、災害等のリスクに備えた事前対策を行うよう中小企業・小規模事業者に促すため、「事業継続力強化計画」の策定を奨励しています。今回はこの「事業継続力強化計画」について解説します。
2011年3月11日の東日本大震災以前、「できるだけ在庫を圧縮させてスリム化することこそ最良の経営手法」という考えが評価されていました。しかし東日本大震災によって、被災した企業のほとんどは物流や製造等の諸機能がマヒし、事業を再開するまで多大な経費と時間を要しました。そのため多くの企業は「在庫は悪」という考え方から脱却し、「災害に備えた在庫」という考えを持つようになりました。
この「災害に備えた在庫」が主流になりつつあること、及び近年多発する大規模災害を背景にして、中小企業庁では、中小企業が防災・減災に関する取組を「事業継続力強化計画」として策定し、それを国が認定する制度を創設しました(2019年7月16日施行)。
「事業継続力強化計画」は、「事業継続力強化の目的の検討(地域経済への貢献、従業員に対する責務等)」、「災害リスクの確認・認識(ハザードマップ活用による被害規模や自然災害リスクの検討等)」、「初動対応の手順(人命の安全確保、被害の確認、発信手段等)」、「人、物、カネ、情報を災害から守るための施策(設備の耐震化、保険の加入等)」、「平時の推進体制(定期的な防災訓練実施等)」といった観点を踏まえて策定することが奨励されています。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.15参照
また2021年度については、新型コロナウイルス感染症の予防対策、感染者が出た場合の対応等も踏まえた事業計画の策定を推奨しており、新型コロナのみを想定した計画の策定も可能です。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.19参照
「事業継続力強化計画」が経済産業大臣に認定されると、「経営革新計画」や「経営力向上計画」と同じくさまざまな優遇措置を受けることができます。税制面では、防災・減災関連等設備の取得価額について20%の特別償却がなされます。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.82参照。 金融面では、計画の実行に必要な経費について日本政策金融公庫による低利融資を受けられます。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.80参照。 また、計画が認定された企業は専用のロゴマークを活用でき、自社HPや名刺でのPRが可能になります。さらに、一部の損害保険会社や共済団体では中小企業庁と連携して、事業者のリスク管理体制の整備具合等に応じて保険料の割引を行っています。
しかし「事業継続力強化計画」の本来の目的は、あくまで災害が発生してもすぐ立ち直ることができる体制を整備することにあります。優遇措置を狙って無理に防災・減災計画を策定しても、実際の災害発生時に役に立たない可能性もあります。
中小企業庁では、中小企業の防災・減災対策等に詳しい専門家を派遣して計画策定をハンズオン支援する制度も設けています。支援や補助金を活用したり、中小企業診断士や防災コンサルタント等のアドバイスを仰いだりしながら、本来の目的に沿った「事業継続力強化計画」の策定を目指すことをおすすめします。
また、「事業継続力強化計画」に沿った取組を支援する助成金・補助金も各地で公募されています。たとえば東京都中小企業振興公社のBCP実践促進助成金は、「事業継続力強化計画」に基づいて作成したBCP(事業継続計画)に沿って、備蓄品やデータバックアップ用サーバー、自家発電装置、マスク、消毒液等災害または新型コロナに備えた設備導入を行った場合、最大1500万円(助成率は中小企業1/2、小規模事業者2/3)が助成されます。「事業継続力強化計画」策定の際は、このような助成金・補助金が所在する自治体で公募されていないか確認してみましょう!

事業継続力強化計画

登場した背景

・東日本大震災以降、リスクに備えた防災・減災対策の必要性が多くの事業者に共有される。

・近年の大規模災害の多発を受けて、防災及び復興に関する政府・自治体の施策が増加した。

策定の際に

必要な観点

・事業継続力強化の目的の検討(地域経済への貢献、従業員に対する責務など)

・災害リスクの確認・認識(ハザードマップ活用による被害規模や自然災害リスクの検討など)

・初動対応の手順(人命の安全確保、被害の確認、発信手段など)

・人、物、カネ、情報を災害から守るための施策(設備の耐震化、保険の加入など)

・平時の推進体制(定期的な防災訓練実施など)

・新型コロナウイルス感染症対策

受けられる

優遇措置

・防災・減災関連等設備の取得価額の20%特別償却 ・公官庁系金融機関による低利融資 ・提携する損害保険会社や共済団体による保険料割引 

・認定ロゴマークの活用 等

執筆者情報

株式会社ナビット

わたしたち株式会社ナビットは補助金・助成金情報検索サイト「助成金なう」を運営しております。
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近年台風などの大規模災害が立て続けに発生し、多くの地域が甚大な被害に見舞われました。そして新型コロナウイルス感染症によってほとんどの企業が大きな打撃を受けました。地震、津波、疫病等のリスクがいつ発生するのか、完全に予測することは不可能です。万が一災害に遭った場合、経営基盤が脆弱な中小企業や小規模事業者は事業をまともに継続させることが難しくなります。そのため、被災しても事業を継続できるような仕組みを構築する必要があります。その仕組みによって、自社の存続だけではなく取引先の経済的損害を防ぎ、従業員の安全を確保することにもなります。リスクを想定して防災対策をしていた企業とそうでない企業の間では、被災してから事業再開までのスピードに大きな差が出ます。そこで中小企業庁では、災害等のリスクに備えた事前対策を行うよう中小企業・小規模事業者に促すため、「事業継続力強化計画」の策定を奨励しています。今回はこの「事業継続力強化計画」について解説します。2011年3月11日の東日本大震災以前、「できるだけ在庫を圧縮させてスリム化することこそ最良の経営手法」という考えが評価されていました。しかし東日本大震災によって、被災した企業のほとんどは物流や製造等の諸機能がマヒし、事業を再開するまで多大な経費と時間を要しました。そのため多くの企業は「在庫は悪」という考え方から脱却し、「災害に備えた在庫」という考えを持つようになりました。この「災害に備えた在庫」が主流になりつつあること、及び近年多発する大規模災害を背景にして、中小企業庁では、中小企業が防災・減災に関する取組を「事業継続力強化計画」として策定し、それを国が認定する制度を創設しました(2019年7月16日施行)。「事業継続力強化計画」は、「事業継続力強化の目的の検討(地域経済への貢献、従業員に対する責務等)」、「災害リスクの確認・認識(ハザードマップ活用による被害規模や自然災害リスクの検討等)」、「初動対応の手順(人命の安全確保、被害の確認、発信手段等)」、「人、物、カネ、情報を災害から守るための施策(設備の耐震化、保険の加入等)」、「平時の推進体制(定期的な防災訓練実施等)」といった観点を踏まえて策定することが奨励されています。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.15参照また2021年度については、新型コロナウイルス感染症の予防対策、感染者が出た場合の対応等も踏まえた事業計画の策定を推奨しており、新型コロナのみを想定した計画の策定も可能です。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.19参照「事業継続力強化計画」が経済産業大臣に認定されると、「経営革新計画」や「経営力向上計画」と同じくさまざまな優遇措置を受けることができます。税制面では、防災・減災関連等設備の取得価額について20%の特別償却がなされます。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.82参照。 金融面では、計画の実行に必要な経費について日本政策金融公庫による低利融資を受けられます。「事業継続力強化計画 策定の手引き」P.80参照。 また、計画が認定された企業は専用のロゴマークを活用でき、自社HPや名刺でのPRが可能になります。さらに、一部の損害保険会社や共済団体では中小企業庁と連携して、事業者のリスク管理体制の整備具合等に応じて保険料の割引を行っています。しかし「事業継続力強化計画」の本来の目的は、あくまで災害が発生してもすぐ立ち直ることができる体制を整備することにあります。優遇措置を狙って無理に防災・減災計画を策定しても、実際の災害発生時に役に立たない可能性もあります。中小企業庁では、中小企業の防災・減災対策等に詳しい専門家を派遣して計画策定をハンズオン支援する制度も設けています。支援や補助金を活用したり、中小企業診断士や防災コンサルタント等のアドバイスを仰いだりしながら、本来の目的に沿った「事業継続力強化計画」の策定を目指すことをおすすめします。また、「事業継続力強化計画」に沿った取組を支援する助成金・補助金も各地で公募されています。たとえば東京都中小企業振興公社のBCP実践促進助成金は、「事業継続力強化計画」に基づいて作成したBCP(事業継続計画)に沿って、備蓄品やデータバックアップ用サーバー、自家発電装置、マスク、消毒液等災害または新型コロナに備えた設備導入を行った場合、最大1500万円(助成率は中小企業1/2、小規模事業者2/3)が助成されます。「事業継続力強化計画」策定の際は、このような助成金・補助金が所在する自治体で公募されていないか確認してみましょう!
2021.08.24 16:29:03