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【起業の失敗あるある】人を雇用するときの手続きと助成金

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労働条件を必ず通知しよう

人を雇用するためには、労働基準法をはじめ、さまざまな法律の決まりを守らなければいけません。そんな決まりの中でも最も初めに雇用する側として対応しなければならないのが、労働条件の通知です。

労働条件とは、その名の通り、このような条件で働いてくださいという事項です。労働条件の中でも、特に重要なものは、書面で通知する必要があります。具体的には、次の5つの項目は、必ず書面で通知しなければなりません。

(1)無期契約か有期契約かといった労働契約の期間に関すること
(2)就業の場所や従業すべき業務に関すること
(3)始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇など労働時間に関すること
(4)給料の計算や支払いの方法や支払日に関すること
(5)退職手続きに関すること

通知する方法については、一般的に「労働条件通知書」という書類を作成して、雇用する従業員に渡します。また、上記の通知する条件のほか、働く上で守るべきルール(秘密保持のことなど)を含めて、「雇用契約書」という形で書類を取り交わすこともあります。伝えたいことだけは伝えても、法律上決められた上記の事項を通知し漏れるということにならないように、必ず最初に従業員と取り交わす書面に上記の事項が網羅されているかどうかを確認しましょう。

残業させる場合には、36協定も必ず締結しよう

労働条件通知書と関係がある重要な書類があります。それが「時間外労働・休日労働に関する協定書」いわゆる36(さぶろく)協定です。

そもそも、労働基準法上は、原則として従業員は1日8時間以上働くことはできません。この法律上の制限を超えて残業してもらうためには、36協定の締結が必須です。いくら残業代を支払っていても、そもそも36協定を提出していないと、1日8時間を超えて働くこと自体が違法になるのです。そして、36協定は労働基準監督署に提出して初めて効力が発生します。知らない間に違法なことをやっていたなんてことにならないように、36協定は作成するだけでなく、必ず労働基準監督署に提出しましょう。忘れがちな失敗ポイントなので、注意しましょう。

労働保険に加入しよう

雇い入れたあとは、労働保険に加入しましょう。労働保険とは、従業員のために雇う側に加入義務がある公的な保険であり、労災保険と雇用保険の2つを合わせたものをいいます。

まず労災保険とは、従業員が仕事中や通勤中にケガをした場合などに、従業員が診療費や休んでいる間の給料の保障などを受けることができます。労災保険は、アルバイトであろうと正社員であろうと、雇う側が加入しなければならない保険です。どれだけ勤務時間が短くても、仕事中にケガをすることはあり得るからです。
さらに、雇用保険とは、従業員が退職した後に失業保険などを受けるための保険です。次の要件を満たす人を雇用する場合には、加入する必要があります。
1) 1週間に20時間以上働く予定であること
2) 31日以上雇用する予定であること
上記の要件は国籍を問いません。特に飲食店などでは、外国籍の従業員を雇用することも増えてきていますが、とにかく従業員を一人でも雇えば労災保険、上記の要件を満たす人を雇えば雇用保険に加入する義務があるということを覚えておきましょう。ただし、学生(夜間や通信、定時制以外)については、雇用保険の適用除外となります。アルバイトで大学生や高校生を雇って、20時間以上シフトに入ってもらったとしても、基本的に雇用保険に加入させる必要はないということです。

ちなみに、健康保険や厚生年金保険については、個人事業主は(自分を含まない)常勤する従業員が5人以上であれば加入義務が発生します。ただし、飲食店などのサービス業では個人事業主である限り、雇う人数にかかわらず健康保険や厚生年金保険への加入義務はありません。

上記の保険は、要件を満たす限り従業員本人の希望に関係なく加入しなければなりません。社会保険の未加入なんてことにならないように、特に加入を望まないような従業員にはしっかりと説明して理解してもらいましょう。

助成金の要件はしっかりと確認しよう

人の雇用や教育などに関連して助成金を受給できる場合があります。基本をよく知っておきましょう。
一口に助成金といっても、その受給要件はそれぞれ違います。ここでは、個別の助成金の説明については割愛しますが、助成金の申請を行う上で大事なのが手続きの順番と申請の期限です。

まず、手続きの順番です。例えばある助成金を受給するためには、取り組みを行う前に、事前にハローワークに書類を提出して承認を受けなければならないというものがあります。こうしたことを確認せずに、承認を受ける前に取り組みをしてしまったばかりに、助成金が受給できなかったということもあり得ます。

また、申請期限については1日でも過ぎると受理が行われません。「○○の日から2か月以内」のように、どんな助成金にも申請期限が定められています。助成金の支給申請をする場合は、どのような順番で取り組みを行えばよいのかということ、そして申請の期限はいつなのか、ということを必ず事前に確認してスケジュールを組み立てましょう。受給できるはずなのに手続きをしなかったから受給できなかったというのがありがちな失敗ポイントです。よく注意しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「事業は人なり」といいます。優秀な人材を採用教育して定着してもらう。それが経営のコツともいえます。失敗ポイントで落とし穴にハマらないように十分に注意して、従業員とともに、事業を発展させていきましょう。

【起業の失敗あるある】開業に必要な資金(初期投資の適正金額) に続く

執筆者情報

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代表者 中野 裕哲

起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士・社労士・行政書士法人V-Spirits

起業コンサルタント®、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引主任者

起業コンサルV-Spiritsグループ代表。ドリームゲート起業面談相談9年連続日本一。
多数の起業本、起業のWeb記事も執筆・監修する人気アドバイザー。
「まるごと起業支援(R)」で、あちこち相談せずとも、起業の疑問も不安も一度で解消。
著書「失敗しない起業 55の法則」「マンガでやさしくわかる起業」「図解 知識ゼロからはじめる起業の本」など。

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人を雇用するためには、労働基準法をはじめ、さまざまな法律の決まりを守らなければいけません。そんな決まりの中でも最も初めに雇用する側として対応しなければならないのが、労働条件の通知です。労働条件とは、その名の通り、このような条件で働いてくださいという事項です。労働条件の中でも、特に重要なものは、書面で通知する必要があります。具体的には、次の5つの項目は、必ず書面で通知しなければなりません。(1)無期契約か有期契約かといった労働契約の期間に関すること(2)就業の場所や従業すべき業務に関すること(3)始業及び終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇など労働時間に関すること(4)給料の計算や支払いの方法や支払日に関すること(5)退職手続きに関すること通知する方法については、一般的に「労働条件通知書」という書類を作成して、雇用する従業員に渡します。また、上記の通知する条件のほか、働く上で守るべきルール(秘密保持のことなど)を含めて、「雇用契約書」という形で書類を取り交わすこともあります。伝えたいことだけは伝えても、法律上決められた上記の事項を通知し漏れるということにならないように、必ず最初に従業員と取り交わす書面に上記の事項が網羅されているかどうかを確認しましょう。
2020.04.20 17:08:59