HOME コラム一覧 【起業の失敗あるある】銀行口座の開設

【起業の失敗あるある】銀行口座の開設

post_visual

法人を新規に設立した際に、必ずと言っていいほどしなければならない手続き、それは「銀行口座の開設」です。法人で事業を行うためには、日々の支払いや売上入金のための銀行口座が必要となるからです。ただ、実は、銀行口座の解説は初っぱなから失敗を起こしがちなポイント。今回は、失敗しがちな注意点などを解説していきます。

銀行口座の開設の仕方

とりあえず銀行に行ってみよう!の前に、必要書類や手続きを確認しましょう。

《事前に準備するもの》
① 銀行取引に使用する印鑑 (できれば実印は避けましょう)
② 現金 (0円では口座開設できない金融機関が多いです)
③ 法人の履歴事項全部証明書 (原本)
④ 定款 (原本)
⑤ 代表者の本人確認資料 (原本)
⑥ 事務所等の賃貸借契約書 (原本)
⑦ 売上や支払いの見込みを証明できる書類 (請求書など)

ざっと挙げただけでも上記のようなものを持参することをお勧めしています。
「これは必要でしょう」と思えるものと、「こんなものが口座開設に要るのか?」というものがあるかと思います。
実は、一昔前と比べると銀行口座開設の難易度がグーンと上がっているのです。
それは何故なのでしょうか。

口座開設できない?!

なぜ銀行口座の開設がこんなにも難しくなってしまったのか、それは銀行側の立場になってみればわかります。

2000年を過ぎたあたりから「オレオレ詐欺」をはじめとした「振り込め詐欺」が横行してきました。また、その詐取された資金が反社会的勢力の資金源となっていることを重く見た警察などにより法改正がなされ、犯罪収益移転防止やマネーロンダリング防止のために、口座開設人の本人確認を厳格にしました。新規に口座開設しにきたお客様が反社会的勢力の一味であるか否か、また過去に反社会的勢力に預金口座を売却・譲渡した者でないかを秘密裏に確認しています。もちろん、上記のチェックに該当すれば口座の開設は出来ません。

また、特に信金、信組などは口座開設の際に現地の実地調査をルールとして採用していることも多く、上記のような直接的な事例に該当しなくても、詐欺口座に悪用されがちなバーチャルオフィスや実態確認のできないオートロックのマンションなどは敬遠されがちです。これに加えて、信金、信組などでは金融庁などからの指導により「支店の管轄エリア内の顧客に対する口座開設」をルール化していることもしばしば見られ、道路一本で「エリア外」と判定され口座開設できないなどの事例も多発しています。銀行が法律や監督官庁、警察などのお役所の意向を汲み取った結果、厳しい口座開設基準が形成されてしまった、という経緯があります。

口座開設できない主な理由

それでは具体的にどのような事例で口座開設を拒否されたのでしょうか。
ケースごとに見ていきましょう。

1)事業実態が確認できない
様々なケースがありますが、最近多いのはバーチャルオフィスで本店登記しているケースです。バーチャルオフィスを利用する理由は「そもそも事務所や店舗が不要な業態」「自宅で登記をすると名刺に自宅を書かなくてはいけない」「家賃は払えないが、おしゃれな街に登記したい」など様々ですが、銀行側からするとバーチャルオフィスには営業実態がないことは明白(WEB検索すれば一発でバレます)であり、「事業実態を確認することができない」という判断になります。

特に信金や信組では、本店登記地に訪問することで実態確認をしているケースが多く、そうなるとバーチャルオフィスでは対応できない事態となります。シェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペースなども同様のリスクを抱えますが、その会社独自のブースや応接室での対応が可能であれば、実態確認としてくれる銀行もあるようです。

また、そのバーチャルオフィスなどから反社会的勢力登録者が出たとなれば、その施設ごと口座開設拒否となることも想定されますので、バーチャルオフィスでの登記を検討している方はご注意ください。

2)エリア外と判断される
最近では信金や信組レベルだけでなく、地銀やメガバンクまでも支店の管轄エリアを明確化しています。道一本でエリア外と判断され、隣の別支店(同じ銀行ではある)に行くように指示されたケースもあります。また、例えば本店登記地(郊外の自宅で登記)と事業実態(都心のオフィスを賃貸)の場所が離れているケースなどは、どちらの管轄支店で口座開設すべきかの判断が支店や金融機関ごとに分かれるなど、支店をたらいまわしになるケースも聞いたことがあります。

基本的には、事業実態があり、代表者とコンタクトを取りやすい最寄りの支店が口座開設しやすいように感じています。そもそも、「●銀行●支店の管轄エリアはこの範囲です」と明確に周知されていないので、電話か窓口で聞いてみるしか手立てがないのが実態です。

3)事業実態のある場所の契約が不明瞭
事業実態の場所が自宅であったり、自社で賃貸した事務所や店舗であれば特に問題はないのですが、世の中には様々なケースが存在します。

例えば、「知人の会社のオフィスに間借り」したり、「知人から事務所を又借り」しているケースです。
いずれも所有者(大家さん)とその会社が直接「賃貸借契約」を締結していないことが問題視され、また、契約関係が存在していないことから「その場所に事業実態がない」と判断されることがあります。
そもそも、大家さんと実際の賃借人との原契約に「転貸の禁止」などが盛り込まれていることが多く、原契約に違反した形でその会社の事業実態がある、という解釈をされ口座開設できないケースもあります。

このような疑義をかけられないためにも、口座開設時には「事務所等の賃貸借契約書」を持参することをお勧めしています。

4)口座開設ができないと…
口座開設ができなければ、法人名義での経済活動に大きな制限がかかることになります。現代の日本では代金の決済は振り込みやクレジットカード決済が主流となっています。今後はキャッシュレス決済なども普及してくるでしょう。そのいずれにも法人名義の銀行口座が必要であり、銀行口座がなければ日々の決裁を「現金のみ」で行う事業者となります。そのような事業者は一般的に信用を得ることは難しいでしょう。

また、近年多くなっているトラブルの代表格としては「公庫融資を受ける」際のトラブルでしょう。
日本政策金融公庫(以下、公庫)に審査を申込み、審査を通過したとしても銀行口座がないと借入金を口座に入金することができません。公庫は決済銀行ではないので、預金口座を発行できません。そのため、必ず民間の金融機関での口座開設を必須となります。「融資の審査を通過したのに、口座開設の審査を通過できない」というケースは年々増加しています。

まとめ

法人設立後の事業活動を円滑に行うために必要な「銀行口座開設」。その銀行口座開設にはとかく「住所」が重要であるといえます。「本店登記地」と「事業実態のある住所」の2点を法人設立時には注意しましょう。

【起業の失敗あるある】人を雇用するときの手続きと助成金 に続く

執筆者情報

profile_photo

代表者 中野 裕哲

起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士・社労士・行政書士法人V-Spirits

起業コンサルタント®、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引主任者

起業コンサルV-Spiritsグループ代表。ドリームゲート起業面談相談9年連続日本一。
多数の起業本、起業のWeb記事も執筆・監修する人気アドバイザー。
「まるごと起業支援(R)」で、あちこち相談せずとも、起業の疑問も不安も一度で解消。
著書「失敗しない起業 55の法則」「マンガでやさしくわかる起業」「図解 知識ゼロからはじめる起業の本」など。

この記事のカテゴリ

この記事のシリーズ

起業の失敗あるある

記事の一覧を見る

関連リンク

【起業の失敗あるある】会社設立(共同代表編)

税務・会計に関する情報を毎週無料でお届けしています!

メルマガ登録はこちら


コラム
/column/2020/img/thumbnail/img_50_s.jpg
法人を新規に設立した際に、必ずと言っていいほどしなければならない手続き、それは「銀行口座の開設」です。法人で事業を行うためには、日々の支払いや売上入金のための銀行口座が必要となるからです。ただ、実は、銀行口座の解説は初っぱなから失敗を起こしがちなポイント。今回は、失敗しがちな注意点などを解説していきます。
2020.04.17 15:54:09