【起業の失敗あるある】会社設立(共同代表編)
学生起業なども含めて、最近では起業すること自体のハードルは非常に低くなってきています。そんな中、近年で特に増加しているのが2人以上での起業。それぞれに違うキャリアやノウハウを持っており、複数人でチームを組んで起業するというのがよくあるケースといえます。複数人で起業すること自体は、ノウハウや経験、人脈を共有することができ効率的である一方で、いくつか気を付けなければならないこともあります。今回はこのことについて解説します。
代表者も複数人?!
複数人でチームを組んで起業する際に、「じゃあ、代表は誰にする?」と必ず議論になります。法人として登記する以上、必ず代表者を決めなければならないからです。必ずしも1人に決めなくても良いため、代表者が複数人となるケースもしばしばあります。
日本人の「和をもって尊し」の文化の下では、率先してだれか一人が代表を名乗り出ることが難しいこともあり、メンバーでの議論が大してなされないまま主要メンバーの2人が共同で代表を務めるといったケースが散見されます。既に「複数代表で登記を完了」している状態でご相談に来られた場合、私たち専門家の立場としては少し身構えてしまうのが正直なところです。経験則として、事業開始後にいくつかの問題が起こることが多く。また、事前に確認しておきたい事項が多いためです。
共同代表で起こりがちなトラブル
どのようなパターンであっても、「一緒に会社をやろう」と思い立った関係性なわけですから、起業当初は両人の関係性は良好なケースがほとんどです。しかし、経営にあたり多くのストレスを抱えると、この代表者間の関係性が揺らいでくることもしばしばあります。
原因は様々ですが、
①業況が悪く、資金面でのストレスを抱える
②お互いのミッションに対する成果の不満
③コミュニケーション不全
などが主な原因となるでしょう。
代表者が二人の場合、どちらも「自分が正しい」と思い、お互いに譲歩することができず空中分解に至るケースが多くなっています。代表者が三人以上の場合、どうしても派閥ができてしまい、少数派が離脱するケースが多くなります。事業がうまくいっていればストレスも少ないのですが、経営は最初からそんなにうまくは行かないものです。共同代表にすべきか、一度立ち返ってみるのも良いでしょう。
複数代表の形態と、そのトラブル事例
では、実際に共同代表となっているケースはどのようなパターンが多いのでしょうか。
具体的には、以下のようなパターンが多いかと思います。
1)夫婦で共同代表のパターン
これは一般的にありうるパターンかと思います。家計も一緒なのだから、事業も一緒にというパターンです。また、法人設立の際に夫婦両名が出資をしたことを理由に共同代表としているケースも聞いたことがあります。
このケースでは業績が悪くなった際に、夫婦共倒れになる可能性が高く、リスキーであるといえます。
融資を受ける際には代表者は夫婦とも連帯保証人となることが考えられ、債務を履行できなくなった際に逃げ道がありません。
2)友人で共同代表のパターン
学生時代の友人や会社の同僚などと起業するケースです。夫婦とは違い、基本的に他人なので両者間に何かしらの軋轢が生じた際にはトラブルとして顕在化してしまいます。いくら古くからの友人、親友であったとしてもお金が絡むとこれまでの関係性が吹っ飛んでしまうこともしばしば。
お金の持ち逃げや連絡不通・行方不明などのトラブルも頻発しています。また、信用上の事故や反社会的勢力との関係性など、友人関係では事前に把握しづらい情報が隠れていることもあります。
3)恋人同士で共同代表のパターン
稀にですが見るパターンです。私たち外部の人間から見ると「別れたらどうするつもりなの??」と感じてしまいます。もちろん、ご本人たちは別れることなど想像もしていませんが。
このケースでは不思議と、彼氏と彼女の事業領域が重なっておらず、それぞれが別の事業を運営しているケースが多いのも特徴かと思います(経験則ですが)。そのため、各人の事業のシナジーも少ないことや別れた際の問題などを理由に、(設立前にご相談があれば)あまりお勧めはしていません。
4)先輩・後輩で共同代表のパターン
会社や学校の先輩・後輩で共同代表のパターンです。実際には結構多いパターンとなります。共同代表と言いつつも、先輩・後輩間でしっかりと力関係があることが多く、事業を進めていくうちに共同代表の体を成さなくなっていくケースも多いような気がしています。
ただ、上下関係がしっかりとあることで規律は形成されやすく、経営の意思決定のスピードも早いのが特徴といえるかもしれません。このケースでは、上限関係があるならばそもそも共同代表ではなく、先輩が代表・後輩が取締役などと階級に上下を付けるのが自然なことも多く、設立前にご相談いただいた場合は実際の決裁権限に即した登記内容に寄せるように助言することがあります。
5)それぞれ専門性のある役割分担で共同代表のパターン
例えば、営業と開発、実務家とマーケッターなど得意領域の違う方々が共同代表を務めるケースです。
このケースではそれぞれが高い専門性や人脈などを有しているケースが多く、シナジーがハマれば一気に事業がスケールする可能性を秘めています。但し、それぞれが高いスキルと個性を持っているため、空中分解しやすいのもこのパターンが多いような気がします。
6)現経営者・承継者で共同代表のパターン
これは事業承継の一環として、引継ぎの過渡期にみられるケースです。承継者が内部昇格なのか、外部から招聘したのかで関係性は変わってきますが、「事業を承継する」という大きな目標を共有していることが多く、比較的ビジネスライクな関係性といえます。
このケースではこれまでのケースと違い、現経営者をスムーズに勇退させることがミッションとして追加されます。代表的なものとして、現経営者個人の連帯保証の解除、現経営者個人所有の不動産の抵当権解除、株式の承継の方法などが課題として挙げられます。
まとめ
これまで見てきた通り、共同代表といえども基本的には他人同士です。
起業当初は同じ目標を目指していた同志ですが、経営をしていく上での様々なストレスにより両者間の関係性に亀裂が入ることもしばしば。チームを組んで起業する際にも、代表者を1人に限定し、そのほかのメンバーは創業メンバーとして取締役などに収まる方が、事後の事業運営もスムーズになるのではないでしょうか。どちらの方法にもメリットとデメリットが必ずあります。貴社はどちらが当てはまるのか、法人設立前に一度立ち止まって見るものいいのではないでしょうか。