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【起業の失敗あるある】開業に必要な資金(初期投資の適正金額)

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事業を始める場合、一定以上の資金がないと開業できません。それはわかっているものの、実際、いくら必要なのか試算するというとき、正確な数字をはじき出すことに苦労する、そんなケースが多いものです。そこで、今回は、開業するときに必要な資金を計算する方法とよくある失敗や注意点について解説いたします。

開業資金とは

事業を始める場合には、多かれ少なかれ初期投資が必要です。法人を設立するのにはもちろん登記費用が掛かりますし、個人の開業であってもペン1本購入すればそれは初期投資資金が必要であることを意味します。ペン1本は極端な例ですが、開業する際には主に以下のような費用が発生します。

・法人設立費用
・事務所や店舗などへの入居費用
・事務所や店舗内の内装費用
・事務所や店舗内の備品購入費用
・許認可の取得費用
・初期在庫の購入費用
・従業員の採用経費
・ホームページ作成などの初期広告費用
・車両の購入費用
・工場内で使用する制作機械の購入費用
・試作品製作や開発費などの費用

これらのように「開業するためのそもそも必要な費用」をイニシャルコストと言います。
上記のような費用は開業する際に比較的頭に浮かびやすく、いくら準備しなくてはいけないか計算が容易です。

その他にも見えづらい経費としてランニングコストというものがあります。
事業をスタートしてから、日常的に発生するコストのことです。

例えば、
・家賃、駐車場
・水道光熱費
・人件費、役員報酬、社会保険料
・広告費
・商品などの仕入れ
・保険料
・旅費交通費
・交際費・会議費
・消耗品費、新聞図書費
・外注費
・顧問報酬
・元本返済・支払利息
などが挙げられます。

開業前ではぼんやりとしかイメージがわかず、事業をスタートしたら「思ったよりもかかる」ということもしばしば見受けられます。事業が軌道に乗るまでは、ランニングコストが大きな足かせとなります。当面のランニングコスト分は「運転資金」として準備しておきましょう。

このように「イニシャルコスト」だけではなく、「ランニングコスト」もしっかり意識することで、十分な「開業資金」を準備することができます。

融資と自己資金割合

必要な開業資金の金額が見えてきたら、その資金を実際に準備しなくてはなりません。しかし、開業資金の全額を自己資金で賄える方はそうそう居ないものです。そのため、自己資金では不足している部分を「融資」によって賄うことが一般的です。自己資金に、融資で借りたお金を加えて事業をスタートさせるのです。

まず、自己資金はどのくらい準備した方がいいのでしょうか。また、融資はいくらくらい借りられるのでしょうか。当然ですが、融資は返済が必要な資金です。大きな金額を借りれば、大きな返済が待っています。裏を返せば、「返せる分だけの金額しか、借りることができない」ということです。
当たり前ですが、忘れがちなことです。

では、一般的にどれくらいなら借りられるのか。つまり、いくらくらいなら返済できるのか。開業資金としては、目安として「自己資金の2倍の借り入れ以内」にとどめることをお勧めします。

つまり、開業資金が1500万円必要な場合は、自己資金500万円+借入金1000万円が目安となります。借入金1000万円を5年返済で借りた場合、年間の返済額は200万円となります。
(1000万円割÷5年)

要は、その事業で年間200万円の純利益を達成すれば、返済は滞らないことを意味します。事業内容にもよりますが、1500万円の費用を投じて、年間200万円も儲からない事業をリスクを負ってわざわざ開業しようとは思わないでしょう。また、一方では自己資金500万円で2.5年分の返済は出来る資金計画とも言えるため、2.5年で軌道に乗らない事業もわざわざ開業しようとはなりませんよね。

このようなことからも、一般的に自己資金1/3+融資2/3の割合が適切なラインとされています。

設備投資の回収期間

イニシャルコストで設備(機械や車両など)を導入する費用を計上している場合、初期投資を何年で回収することを目標にしたらいいのでしょうか?

設備には耐用年数というものがあり、法的にその設備が壊れるまでの期間の目安があります。その法定耐用年数を目安に回収時期を設定する方法が一般的です。

税務上、導入した設備は法定耐用年数に応じて減価償却を行います。

例えば、耐用年数5年の設備を1000万円で購入したとします。購入した設備は買った期だけで使うものではないので、買った年だけで経費にすることはできないと決まっているのです。そのため、1000万円の設備を5年間かけて、税務上のルールに従って毎年経費として計上していくことになります。

なので、この設備には平均して200万円/年の利益を生んでもらわなければ設備投資を耐用年数の5年間で回収することは出来なくなってしまいます。イニシャルコストで設備導入をご検討の方は、法定耐用年数内で設備資金が回収可能かを見直してみましょう。

つまり設備導入費用を融資で賄う際には、減価償却費の範囲内で設備借入の年間返済額が収まらない場合は過剰投資と言えるでしょう。

まとめ

開業を検討する際には「イニシャルコスト」以外にも、「ランニングコスト」の存在にも目を向けましょう。また、設備投資をする際には、耐用年数を意識して、減価償却費の範囲内で返済が収まるように注意しましょう。自己資金の不足や過剰な設備投資は資金繰りを悪化させる代表的な要因です。開業資金を計画的に準備するように心がけましょう。

【起業の失敗あるある】公庫融資と民間金融機関融資 に続く

執筆者情報

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代表者 中野 裕哲

起業コンサルV-Spiritsグループ/税理士・社労士・行政書士法人V-Spirits

起業コンサルタント®、税理士、特定社会保険労務士、行政書士、
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士、宅地建物取引主任者

起業コンサルV-Spiritsグループ代表。ドリームゲート起業面談相談9年連続日本一。
多数の起業本、起業のWeb記事も執筆・監修する人気アドバイザー。
「まるごと起業支援(R)」で、あちこち相談せずとも、起業の疑問も不安も一度で解消。
著書「失敗しない起業 55の法則」「マンガでやさしくわかる起業」「図解 知識ゼロからはじめる起業の本」など。

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2020.06.03 09:03:15