【起業の失敗あるある】会社設立(資本金編)
資本金の金額一つで設立後に大きな影響がある
会社設立の手続においては、役員構成をどうするのか、本店の住所をどこにするのかなど決めるポイントがたくさんあります。そんなポイントの中でも重要なものの一つが資本金をいくらにするかです。資本金は、金額によっては消費税などの税金を左右したり、創業融資に影響したりします。
資本金の決め方一つで、会社のスタート時に大きく影響するのです。間違った資本金の決め方をしたために大きく損をしてしまうということがないように、どのようなことに注意しておけばよいのかということをしっかりと把握しておきましょう。
資本金の金額次第で、最初から消費税の納税義務が発生する
よくある失敗の一つが、消費税に関することです。消費税は基準期間といわれる2期前の売上が1,000万円を超える場合に納税義務が生じます。そのため設立1期目と設立2期目について、基本的に消費税はかかりません。基準期間である2期前そのものが存在しないからです。
ただし、1期目と2期目は、すべての会社で消費税がかからないというわけではありません。1期目と2期目、それぞれの期の初日の資本金額が1,000万円以上の場合は、消費税の納税義務が発生するという例外があるからです。資本金は多いほうがよさそうということで、1,000万円以上の資本金額を設定してしまったために、納めなくてもよかった消費税を納めることになってしまったということがないようにしましょう。
もちろん、許認可の関係などで、どうしても資本金が1,000万円以上必要というケースもあります。このような場合は、1期目から消費税の納税義務が発生するということは念頭に置いておきましょう。
資本金が少ないと創業融資や銀行口座開設に影響が出ることも
前段は資本金の金額が大きいことでの失敗例を見てみました。今度は少なすぎることでの影響を見てみましょう。
消費税の1,000万円と異なり、資本金が少ないというのはいくら以下なのかという明確な基準があるわけではありません。一般的には100万円というのが一つの目安になっています。金融機関によっては、資本金の金額が少なすぎると、口座開設の審査で引っかかってしまうことがありますし、創業融資の際にも、借りられる金額に影響することがあります。
そもそも、資本金が少なすぎると、会社設立費用や初期費用だけで資本金が枯渇してしまい、すぐに社長からの借り入れをするということにもなりかねません。資本金が多すぎることと同じように、資本金が少なすぎても、会社設立後にその点をリカバーすることは難しいのです。
それでは、最低どのくらいの資本金を用意しておけばよいのでしょうか?資本金の金額を計算するために、まずは開業時にかかる設備資金と、毎月の運転資金を計算してみます。
開業資金は、一般的には開業時にかかる設備資金と最低3か月の運転資金の合計を目安に用意しましょう。ただし、売上が上がるまで3か月以上かかると予想される場合や、売上の回収まで3か月以上かかりそうな場合は、もう少し多めにみたほうがいいでしょう。
こうして算出された開業資金が当初準備すべき資金です。資本金として入れられる金額が開業資金以上あれば、開業資金をすべて資本金でまかなうことも考えられます。しかし手持ちのお金が開業資金ぎりぎりの場合には、持っているお金をほとんど資本金にして事業を行うのは、万が一失敗した際のリスクを考えると、やめたほうが賢明でしょう。
やはり、手元に生活資金を残すためにも、公的な創業融資も合わせて利用するのが良いでしょう。例えば、開業資金が300万円と算出できたら、自己資金150万円、創業融資150万円といったように、一部を借入でまかなうことで、できるだけ多くのお金を手元に残すことを考えましょう。手元資金が底を尽きてしまうと、事業を継続することすらできなくなります。このケースでは、150万円が資本金として計上されることになります。
会社を設立する前に、必要な開業資金を算出して、資本金として入れられる金額と創業融資で賄える金額をしっかりと把握しておくことが失敗しない重要なポイントです。融資に強い税理士に相談するなどして、事前の準備を怠らないようにしましょう。
「1円で会社が作れる」という言葉に騙されないようにしよう
今ではあまり目にすることも無くなりましたが、新会社法施行時には、資本金1円でも会社が作れるなどといったハナシもありました。これは、資本金が1円でも会社設立の登記ができるようになったということです。もちろん、会社設立の際の登録免許税などの費用は資本金1円の会社であろうと、通常通り必要なので、1円あれば会社設立の登記ができるわけではありません。資本金が少なすぎることでの弊害を説明しましたが、これで分かる通り、1円の会社などもってのほかです。
1円で会社を運営できるわけがありませんので、すぐに社長の財布から会社にお金を貸し付けることになります。安易に言葉のイメージに流されないようにしましょう。しっかりと資金計画を練ってから会社設立をすることが失敗しないための条件の一つです。