HOME コラム一覧 フリーランサーなどの所得税の取扱い

フリーランサーなどの所得税の取扱い

税務
post_visual

 人々の働き方が多様化してきたといわれて久しい。

 終身雇用の定着と定期昇給、退職金による老後の安定、労働組合の意義など、今では懐かしい感じさえする。右肩上がりの日本経済の終焉とともに、人々の働き方に対する考え方が徐々に変化してきた。その右肩上がりを支えてきた世代の人々とその右肩上がりの中で育った次の世代の人々の職業観の違いも大きく影響していると思われる。

 起業形態としては会社方式と個人方式があるが、小規模事業の場合、もともと個人事業として起業されたものが法人形態に発展的に組織変更するケースが多かった。しかし、法人形態の方が有利と考えられるようになり、会社方式による起業が多くなってきた。その一方で、会社方式によらず、個人方式の方にも契約社員や派遣社員、フリーランサーなど多様化が進んできているようである。

1 個人の生活費の稼ぎ方の多様化

 個人の生活費の稼ぎ方としては、使用人として特定の会社に雇用されるのが一般的である。正社員のほか、パートタイマー、アルバイター、フリーター(フリーアルバイター)と呼ばれる人々もこの形態に属する。使用人として特定の会社に雇用されるケースの場合は、当該特定の会社と使用人との間で、直接「雇用契約」が締結される。近年多くなったいわゆる契約社員(有期雇用契約)もこの形態に属する。

 また、人材派遣会社の使用人の立場で、他の会社に派遣されて働いて生活費を稼ぐ、いわゆる派遣社員も多くなった。この場合は、当該人材派遣会社と使用人との間で、直接「雇用契約」が締結され、人材派遣会社とその使用人が派遣される他の会社との間では、「労働者派遣契約」が締結される。

 契約社員や派遣社員が多くなった現象は、使用人側の事情ではなく、右肩上がりの日本経済の終焉にあがなう会社側の事情との因果関係が大きく影響していると思われる。使用人として特定の会社に雇用されて働くにしても、人材派遣会社の使用人の立場で他の会社に派遣されて働くにしても、いずれも会社に従属して働くことに変わりはない。

 これに加えて、この頃脚光を浴びているのが、いわゆる「フリーランサー」である。特定の企業などに所属することなく独立した働き方をすることを「フリーランス」といい、そのような働き方をする人をフリーランサーと称している。

 フリーランサーの場合は、フリーターや契約社員、派遣社員などとは全く異なる。フリーランサー場合には、フリーランサーから一定の役務提供を受ける特定の会社とそのフリーランサーとの間で、「請負契約・業務委託契約」が締結される。契約社員や派遣社員の場合には、所属する会社に従属して使用人として役務の供をすることになるのに対して、フリーランサーの場合には、役務提供をする会社との関係は、事業者対事業者として独立しており、フリーランサーの立場は、個人事業者である。

2 フリーランサーの業務の多様性

 フリーランサーの立場は、個人事業者である。その意味では、個人で営んでいる商品小売業や医師・歯科医師、税理士、芸能者などの事業者と同じ立場である。ただ、今日一般的にフリーランサーとして分類されている職種としては、ITエンジニア、Webデザイナー、イラストレーターなどといったカタカナ職種を指しているようである。これを例示すると次のようなものがある。

(1) IT、Web系
 アプリケーションエンジニア(システムエンジニア)、Webデザイナー、Webライター、ユーチューバー、ブロガー、アフィリエイター

(2) クリエイティブ系
 イラストレーター、グラフィックデザイナー、カメラマン、コピーライター、アニメーター、コラムニスト

(3)ネット販売系
 せどり、オークション

(4)その他
 コンサルティング、セミナー、インストラクター

3 契約形態別の所得区分と副業の場合の所得区分

 契約社員や派遣社員の立場は使用人であるから、その収入に係る所得は、給与所得に該当する。フリーランサーの立場は、個人事業者であるから、その収入に係る所得は、事業所得に該当する。

 ところで、事業所得の基因となる「事業」とは、一般的に、営利性・継続性があり、かつ、事業としての社会的客観性を有するものをいうとされている。この「営利性・継続性、事業としての社会的客観性」という要件は、「事業所得と譲渡所得」、「事業所得と一時所得」及び「事業所得と雑所得」を区分する上での基準となるが、「事業所得と給与所得」を区分する上では、これらの要件のほかに、「自己の計算と危険において、独立性をもってなされるものであること」が要件とされている。

 前者の「営利性・継続性、事業としての社会的客観性」という要件は、土地売買、株式売買、商品売買などにおいて、また、後者の「自己の計算と危険において、独立性をもってなされるものであること」の要件は、外交員、弁護士などにおいて、事業の判定を行う際の基準となっている。

 フリーランサーの場合は、「自己の計算と危険において、独立性をもってなされるものであること」の要件は満たすものと考えられるが、「営利性・継続性、事業としての社会的客観性」の要件については、「事業としての社会的客観性」を満たしているか否かの問題がある。その業務が一般的に事業といえる程度の規模等を有していないときは、それによる所得は、事業所得ではなく、雑所得に該当することになる。したがって、フリーランサーの業務の実態によっては、事業所得になる場合と雑所得になる場合とがあり得ることになる。

 フリーランスを本業としたくても、スキルや知名度などの程度によっては生活していける程度の収入が得られないことが多くあると思われるところ、特に副業として業務を行っている場合の所得は雑所得に該当するものと考えられる。

4 所得金額の計算方法と必要経費の範囲

 所得金額の計算方法は、事業所得の場合も雑所得の場合も、収入金額から必要経費を差し引いて計算することになっているので、基本的には異ならない。ただし、雑所得の場合には、資産損失の金額の必要経費算入に限度があるとか、家族専従者の給与の必要経費不算入、雑所得以外の他の所得との赤字黒字の差引計算不可などの制約がある。

5 副業の場合の必要経費の計算上の問題点

 所得金額の計算方法は上記のとおりであるが、副業として業務を行っている場合には、本業と副業いずれにも共通の費用があり得る。例えば、本来はフリーランスを本業としたいところ十分な収入が得られないため、同種の業務を派遣社員として人材派遣会社に提供している場合には、フリーランスによる所得は雑所得、派遣職員の所得は給与所得になる。この場合、調査研究やスキルアップのための費用などには、いずれの所得にも共通部分が存在することになる。

 給与所得の計算については、必要経費を控除できない代わりに所定の給与所得控除額を控除することができる。雑所得の計算については、必要経費の実額を控除することになるが、副業として営んでいる場合に「年間の必要経費の総額」を雑所得の計算上控除することが認められるか否かの問題がある。

 方法としては、「年間の必要経費の総額」から「給与所得の計算上控除した給与所得控除額」を差し引いた残額を雑所得の必要経費とすることが考えられる。また、「年間の必要経費の総額」をそれぞれの収入金額の比率で按分し、雑所得に対応する部分の額を雑所得の必要経費とすることが考えられる。あるいは、「年間の必要経費の総額」から給与所得を得るために実際に要した額のみを控除した残額を雑所得の必要経費とすることが考えられる。

 筆者としては、この第三の方法でよいのではないかと考えている。

執筆者情報

profile_photo

税理士 小田 満

 国税庁勤務22年の後、町田・横浜南・板橋の各税務署長を経て、平成19年税理士登録。
 主な著書は、「図表でわかる新税制による金融商品課税の要点解説」、「Q&A プロ選手・開業医・芸能人等の特殊事情に係る所得税実務」など多数。

関連リンク

フリンジ・ベネフィット~お国柄色々 前編

フリンジ・ベネフィット~お国柄色々 後編

コラム
/column/2018/img/thumbnail/img_31_s.jpg
 人々の働き方が多様化してきたといわれて久しい。 終身雇用の定着と定期昇給、退職金による老後の安定、労働組合の意義など、今では懐かしい感じさえする。右肩上がりの日本経済の終焉とともに、人々の働き方に対する考え方が徐々に変化してきた。その右肩上がりを支えてきた世代の人々とその右肩上がりの中で育った次の世代の人々の職業観の違いも大きく影響していると思われる。 起業形態としては会社方式と個人方式があるが、小規模事業の場合、もともと個人事業として起業されたものが法人形態に発展的に組織変更するケースが多かった。しかし、法人形態の方が有利と考えられるようになり、会社方式による起業が多くなってきた。その一方で、会社方式によらず、個人方式の方にも契約社員や派遣社員、フリーランサーなど多様化が進んできているようである。
2018.12.21 17:25:56