分配可能額を算定ミスして違法配当
配当や自己株式の取得は、不当な財産流出により会社債権者が害されるのを防ぐため、会社法および会社計算規則が定める分配可能額の範囲内で行う必要がある。そこで配当や自己株式取得に関する内部統制として事前に分配可能額を算定しておき、その範囲内で配当や自己株式の取得を行うのが通常であるが、内部統制が充実しているはずの上場会社であってもこの分配可能額の算定にあたりうっかりミスを起こすケースが散見されるので要注意だ。
2018年8月1日に分配可能額の算定をミスして違法に配当していたことを公表したのはJASDAQ上場の多摩川ホールディングス。同社は、2018年3月31日を基準日として同年6月末に総額21百万円を分配済みであるが、分配可能額の算定にあたって自己株式の控除を行っていなかった。同社が2019年3月期第1四半期決算の準備の過程であらためて配当時の分配可能額を算定してみると、結果として違法配当であったことが明らかとなった。
同社では6月28日開催の定時株主総会で新たに選任された社外取締役と社外監査役を中心とした社内調査委員会を設置して、原因究明にあたる方針。
なお、支払い済みの配当金について株主に返還を求めることはないとしている。
自己株式保有時に分配可能額を算定ミスするケースは他の上場会社でもいくつか例があり(HOYA、アルメディオなど)、“ありがち”なミスと言える。分配可能額が十分ではない会社では算定ミスが違法配当(違法自己株取得)に直結しかねない。上場準備会社が違法配当をしていたことが明らかになれば上場予定時期に影響が生じるのは不可避と言えよう。上場準備会社の総務担当者は注意しておきたいところだ。