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ディスクロージャーワーキング・グループが報告書を公表

会計・経理 経営
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 金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(座長 神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)は、2018年6月28日に「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」(以下、WG報告)を公表した。これは、有価証券報告書における開示を念頭に、その他の開示(会社法開示、上場規則、任意開示等)との関係にも配意しつつ、企業情報の開示の包括的な検討を行うというもの。

 WG報告によると、有価証券報告書の「経営戦略・ビジネスモデル」に関して、英国での「戦略報告書」に相当する情報を提供すべきであるとしている。これは英国の「戦略報告書」とは、2013年から会社法に基づき作成が義務付けられている開示資料(年次報告書の一部)で、財務報告評議会(FRC)が作成したガイダンスによると、戦略的経営(企業の目的や経営戦略、ビジネスモデル)、事業環境(主要リスク等)、業績(主要業績評価指標(KPI)等)を相互に関連付けて記載することを求められている。

 またWG報告では、MD&Aの記載の充実も求めている。すなわち、「セグメント分析に際しては、経営管理と同じセグメントに基づいて、セグメントごとの資本効率も含め、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報」「資本の財源及びキャッシュ・フローに関する情報については、投資判断に不可欠な情報であり、どこからどのように資本やキャッシュを調達しているのか、経営戦略の遂行上、調達した資本やキャッシュをどのように設備投資や研究開発に振り分けていくのか、といった情報」「会計上の見積り・仮定は、投資判断・経営判断に直結するものであり、経営陣の関与の下、より充実した開示」を求めている。

 ガバナンスに関しては、「提出企業の機関設計に応じ、取締役会や委員会等の構成(名称、人数、メンバー、社内・社外役員の別、委員長の属性等)、委員会等の設置目的、権限等を記載」「会計監査人の監査継続年数を開示」することを提案している。とりわけ「会計監査人の監査継続年数の開示」は、数十年間同じ会計監査人を選任し続けている上場企業に対して、会計監査人を交替するよう投資家からの圧力が強まることが予想されている。

 WG報告では、役員報酬の開示についても「経営陣の報酬内容・報酬体系と経営戦略や中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるよう、役員の報酬プログラムの開示において、固定報酬、短期の業績連動報酬(賞与)、中長期の業績連動報酬(ストックオプション等)それぞれの算定方法や固定報酬と短期・中長期の業績連動報酬の支給割合、役職ごとの支給額についての考え方を定めている場合にはその内容など、報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載」「役員報酬の算定方法にKPI等の指標が関連付けられている場合には、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法や、報酬総額等を決議した株主総会の年月日等についても記載」「実際の報酬が報酬プログラムに沿ったものになっているかや、経営陣のインセンティブとして実際に機能しているかを確認できるようにするため、海外における開示も参考に、トータルシェアホルダーリターンなどとも関連付けながら報酬プログラムに基づく報酬実績について、当期の報酬額に決定した理由、当期のKPIの目標値と実際の達成度、固定報酬と業績連動報酬の支給割合を定めていない場合には当期の支給割合の実績、役職ごとに支給された報酬の状況等を開示」といった提案が行われている。

 その他、WG報告では政策保有株式の銘柄を現行の30銘柄から増やすことなども提案している。金融庁では、WG報告の提案を受けて、開示府令等を改正するとともに、任意開示に備えて、来年春ごろをめどにプリンシプルベースのガイダンスを整備する予定だ。



この記事の執筆者

日本IPO実務検定協会
財務報告実務検定事務局

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 金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(座長 神田秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授)は、2018年6月28日に「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」(以下、WG報告)を公表した。これは、有価証券報告書における開示を念頭に、その他の開示(会社法開示、上場規則、任意開示等)との関係にも配意しつつ、企業情報の開示の包括的な検討を行うというもの。 WG報告によると、有価証券報告書の「経営戦略・ビジネスモデル」に関して、英国での「戦略報告書」に相当する情報を提供すべきであるとしている。これは英国の「戦略報告書」とは、2013年から会社法に基づき作成が義務付けられている開示資料(年次報告書の一部)で、財務報告評議会(FRC)が作成したガイダンスによると、戦略的経営(企業の目的や経営戦略、ビジネスモデル)、事業環境(主要リスク等)、業績(主要業績評価指標(KPI)等)を相互に関連付けて記載することを求められている。 またWG報告では、MD&Aの記載の充実も求めている。すなわち、「セグメント分析に際しては、経営管理と同じセグメントに基づいて、セグメントごとの資本効率も含め、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報」「資本の財源及びキャッシュ・フローに関する情報については、投資判断に不可欠な情報であり、どこからどのように資本やキャッシュを調達しているのか、経営戦略の遂行上、調達した資本やキャッシュをどのように設備投資や研究開発に振り分けていくのか、といった情報」「会計上の見積り・仮定は、投資判断・経営判断に直結するものであり、経営陣の関与の下、より充実した開示」を求めている。  ガバナンスに関しては、「提出企業の機関設計に応じ、取締役会や委員会等の構成(名称、人数、メンバー、社内・社外役員の別、委員長の属性等)、委員会等の設置目的、権限等を記載」「会計監査人の監査継続年数を開示」することを提案している。とりわけ「会計監査人の監査継続年数の開示」は、数十年間同じ会計監査人を選任し続けている上場企業に対して、会計監査人を交替するよう投資家からの圧力が強まることが予想されている。  WG報告では、役員報酬の開示についても「経営陣の報酬内容・報酬体系と経営戦略や中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるよう、役員の報酬プログラムの開示において、固定報酬、短期の業績連動報酬(賞与)、中長期の業績連動報酬(ストックオプション等)それぞれの算定方法や固定報酬と短期・中長期の業績連動報酬の支給割合、役職ごとの支給額についての考え方を定めている場合にはその内容など、報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載」「役員報酬の算定方法にKPI等の指標が関連付けられている場合には、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法や、報酬総額等を決議した株主総会の年月日等についても記載」「実際の報酬が報酬プログラムに沿ったものになっているかや、経営陣のインセンティブとして実際に機能しているかを確認できるようにするため、海外における開示も参考に、トータルシェアホルダーリターンなどとも関連付けながら報酬プログラムに基づく報酬実績について、当期の報酬額に決定した理由、当期のKPIの目標値と実際の達成度、固定報酬と業績連動報酬の支給割合を定めていない場合には当期の支給割合の実績、役職ごとに支給された報酬の状況等を開示」といった提案が行われている。  その他、WG報告では政策保有株式の銘柄を現行の30銘柄から増やすことなども提案している。金融庁では、WG報告の提案を受けて、開示府令等を改正するとともに、任意開示に備えて、来年春ごろをめどにプリンシプルベースのガイダンスを整備する予定だ。
2018.07.24 16:41:13