引当金計上ロジックのメンテナンス
上場準備企業が監査法人のショートレビューでよく指摘される項目として、「引当金が計上されていない」というものがある。引当金は、会計上、要件を満たすのであれば必ず計上しなければならない(重要性が乏しいものを除く)。一方、税務上は引当金を計上する余地がほとんどない。そのため、税務用の決算しか行っていない上場準備企業では「引当金が計上されていない」旨の指摘を受けることとなる。
ショートレビューでの指摘を受け、上場準備企業では各種引当金の計上を余儀なくされる。貸倒引当金も会計上の観点から見積もりを行い、税務上の損金限度額以上に貸倒引当金を計上することになる。また、賞与支払いを予定している企業であれば賞与引当金の計上も必要になる。その他、確定給付の退職金制度があれば退職給付引当金の計上が必要になり、業種やサービス内容によっては返品調整引当金やポイント引当金なども計上しなければならない。
引当金は見積もり計算に基づき計上されるものであり、計上にあたってはいくつかの仮定を積み上げて算定される。当初の導入時には一定のロジックを積み重ねて見積もり計上したものの、導入してから数年が経過すると、担当者も替わり、後任の担当者は引継ぎを受けたルールに従って機械的に引当金を積んでいるだけという企業も少なくない。そのような企業では、環境やビジネスモデルの変化に伴い、見積もり計算のロジックが陳腐化している可能性がある。引当金の見積もり計算にあたっては、所定の算式通りの見積額になっているかどうかだけでなく、算式自体を変更しなければならないのではないかを常にチェックするようにしたい。