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遺産分割でよく争いになるケース①

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第1.父親が死んでから初めて隠し子がいたことが発覚した事例

 あるご家族のお話です。A男さん、B男さん、C男さんは普段からとても仲の良い3兄弟でした。父親が亡くなって、父親の事業を引き継ぎ、3人で仲良く事業を続けていこうと思っていたその矢先のことでした。遺産分割協議書を作成するにあたり、戸籍を取り寄せてみたところ、何と父親に隠し子のD男さんがいたことが発覚。A男さんらは、父親からD男さんの存在は全く知らされておらず、D男さんも生まれてから一度も父親とは会ったことはありませんでした。
 残念ながら、今回のケースでは遺言がありませんでした。そこで、相続人全員で遺産分割協議をする必要があり、まず、A男さんらはD男さんと連絡を取るのに苦労した上に、D男さんとその他の子らが遺産分割内容について対立し、なかなか話が前に進まないという事態に陥りました。そのうち、A男さん、B男さん、C男さんも意見が対立するようになり、結局、子どもらが大いに揉めて、家庭裁判所での遺産分割調停にまで発展し、大好きだった父親を最終的には恨む結果になってしまいました。今回、父親は一体どうすべきだったのでしょうか?

第2.遺産をもらうためには認知が必要。非嫡出子って?嫡出子とどう違う?

 D男さんが「認知」された子であれば、A男さん、B男さん、C男さんと同じように相続人となります。
 「認知」とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、父親が自分の子どもであるとして「認知届」を子どもの本籍地または住所地の市役所に提出し、自分の子であることを認知することで行われます。
 認知された子であるかどうかは、戸籍を見るとわかります。

 認知された子のことを日本の法律では「非嫡出子」と言い、一方、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子どもは「嫡出子」といいます。
 
 では、この「非嫡出子」と「嫡出子」は、法律上、相続において何か取り扱いが異なるのでしょうか。答えは「否」です。
 同じ親から生まれた子どもである以上、その親が法律上の婚姻関係にあろうとなかろうと、相続においては何ら影響はなく、「非嫡出子」も「嫡出子」も相続人となり、相続分も同じになります。

 つまり、本件の、A男さん、B男さん、C男さん、D男さんは、父親の財産をそれぞれ4分の1ずつ相続することになります。

第3.親が生前に子どものためにやっておくべきこと

 今回のケースのように、腹違いの子どもがいる場合には、親は子ども達があとあと揉めないように生前に何らかの対策をとっておかなければなりません。

 ただでさえ、今まで知らなかった腹違いの兄弟姉妹がいたことが、相続の場面で初めて明らかになるのです。
 心中穏やかでないことは容易に想像がつきます。

 子ども達が相続で争わないよう、子ども達が互いに不信感を抱かないよう、遺産の行方を示してあげなければ、遺された子ども達は相続で大いに争い、お互いを憎むことになるでしょう。

 また、いくら血がつながっているとはいえ、今まで会ったこともない兄弟姉妹に会うことは、子ども達にとっては苦痛なことです。
 本妻の子どもであれ、愛人の子どもであれ、人間として違いは全くないのですが、やはりお互いをよく思っておらず、両者の間には大きな溝がある場合がとても多いのです。

 そこで、親としては、D男さんには、生前に遺産の前渡しとして、相続分に相当する金銭を与えて、家庭裁判所の許可を得てあらかじめ遺留分を放棄してもらい、その証拠を残しておくということが一つの方法として考えられます。
 ちなみに、遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる割合のことをいい、遺留分が侵害された相続人は、「遺留分減殺請求」をすることによって自分の遺留分を取り戻すことができます。

 D男さんに遺留分を放棄してもらうことによって遺留分減殺請求の問題をあらかじめ回避し、遺言にもその旨をきちんと書いておくのです。そうすれば、A男さん、B男さん、C男さんは遺言に従って遺産分割をすればよく、今回のケースのように、別途、全員が集まって遺産分割協議をする必要はなくなります。

 また、どうしても遺産の前渡しができない場合には、遺産分割手続きで、子ども同士が顔を合わせなくて済むように事前に遺言書を作り、遺言の内容を実現してくれる遺言執行者まで定めておくことが争いを防ぐことにつながるでしょう。

 詳しいことはぜひ専門家である弁護士にお尋ねください!!

執筆者情報

弁護士 芳賀 由紀子

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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2018.04.05 09:10:36