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ダイバーシティとコーポレートガバナンス

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 2017年3月,経済産業省はダイバーシティ2.0行動ガイドラインを策定しました。これは,少子高齢化による生産年齢人口の現象,先進的なテクノロジー活用による第四次産業革命による産業構造の変革といった外部環境の変化を踏まえて,経営戦略上の観点から人材の重要性に言及したものです。そのため,このガイドラインでは,ダイバーシティを,「多様な属性の違いを活かし,個々の人材の能力を最大限引き出すことにより,付加的価値を生み出し続ける企業を目指して,全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組み」であるとし,ダイバーシティを,企業が持続性を有するための取り組みとして位置づけています。そして,ダイバーシティを実践するためのアクションとして,経営戦略への組み込み,推進体制の構築,ガバナンスの改革,全社的な環境・ルールの整備,管理職の行動・意識改革,従業員の行動・意識改革,労働市場・資本市場への情報開示と対話が挙げられています。
 今回は,このうちガバナンスの改革について触れたいと思います。ガバナンスの改革では,取締役会の構成員の多様性を確保することにより取締役会の監督機能を高め,取締役会がダイバーシティ経営の取組みを適切に監督することが指摘されています。取締役会には,取締役の職務執行を監督する役割が期待されていますが,実際にはその役割が十分に果たされていないと思われる事例が見受けられます。このような取締役会の監督機能の低下を改善する方法として,社外取締役の採用が挙げられます。コーポレート・ガバナンスコードでは,社外取締役に期待される役割として,経営の方針や経営改善についての助言,経営の監督,利益相反の監督,ステークホルダーの意見の適切な反映という事項を定めています。社外取締役には,個別の業務執行事項に留まらず,広く経営戦略上の意思決定に対する助言を求めることができます。このように,社外取締役の就任により取締役会を再構成することで,より適切な意思決定が可能となります。また,このような社外取締役の採用は,投資家の視点からの資金調達面を容易にすることにも繋がります。
 法律による規制以外で,どの時点において社外取締役を採用するかの判断は難しいですが,組織として持続化のステージに到達した企業においては,検討する必要があるかと思います。

執筆者情報

弁護士 日髙 太一

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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 2017年3月,経済産業省はダイバーシティ2.0行動ガイドラインを策定しました。これは,少子高齢化による生産年齢人口の現象,先進的なテクノロジー活用による第四次産業革命による産業構造の変革といった外部環境の変化を踏まえて,経営戦略上の観点から人材の重要性に言及したものです。そのため,このガイドラインでは,ダイバーシティを,「多様な属性の違いを活かし,個々の人材の能力を最大限引き出すことにより,付加的価値を生み出し続ける企業を目指して,全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組み」であるとし,ダイバーシティを,企業が持続性を有するための取り組みとして位置づけています。そして,ダイバーシティを実践するためのアクションとして,経営戦略への組み込み,推進体制の構築,ガバナンスの改革,全社的な環境・ルールの整備,管理職の行動・意識改革,従業員の行動・意識改革,労働市場・資本市場への情報開示と対話が挙げられています。 今回は,このうちガバナンスの改革について触れたいと思います。ガバナンスの改革では,取締役会の構成員の多様性を確保することにより取締役会の監督機能を高め,取締役会がダイバーシティ経営の取組みを適切に監督することが指摘されています。取締役会には,取締役の職務執行を監督する役割が期待されていますが,実際にはその役割が十分に果たされていないと思われる事例が見受けられます。このような取締役会の監督機能の低下を改善する方法として,社外取締役の採用が挙げられます。コーポレート・ガバナンスコードでは,社外取締役に期待される役割として,経営の方針や経営改善についての助言,経営の監督,利益相反の監督,ステークホルダーの意見の適切な反映という事項を定めています。社外取締役には,個別の業務執行事項に留まらず,広く経営戦略上の意思決定に対する助言を求めることができます。このように,社外取締役の就任により取締役会を再構成することで,より適切な意思決定が可能となります。また,このような社外取締役の採用は,投資家の視点からの資金調達面を容易にすることにも繋がります。 法律による規制以外で,どの時点において社外取締役を採用するかの判断は難しいですが,組織として持続化のステージに到達した企業においては,検討する必要があるかと思います。
2017.09.29 09:13:30