HOME コラム一覧 ある日の税務調査で従業員の不正経理、横領行為が発見された、さあどうするか?

ある日の税務調査で従業員の不正経理、横領行為が発見された、さあどうするか?

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A氏  皆さん、税務調査と聞いて、どんなことが思い浮かぶでしょうか?
B氏  エエ、何だろう?

A氏  税務調査を受けて、良かったという点、メリットはありますか?
B氏  そもそも、そんな質問するヤツは誰だ?
どんなつもりでそんな質問するんだ?
メリットなんてちゃんちゃらおかしい!!

税務調査と聞いて、10人中、8人か9人が嫌なもの、
良かった点、メリットなんて、そんなものあるはずがないと言われるのではないでしょうか。

そんな中にも1人くらいは
C氏  税務上の判断について、税務署の方と意見交換が出来て、とても勉強になりました。

B氏  この年で勉強なんか、それも税務署のご指導での勉強なんかまっぴらだ。

 
ある法人X社にある日所轄税務署の税務調査が入りました。

その日税務調査に来た若い税務署員の方のご指摘は次のとおりです。
 X社の従業員Zが取引先Y社の従業員Wとグルになって、Wに取引実体のない架空伝票を発行させて受け取り、取引先Y社に商品代金支払をしないのに、支払ったように見せかけるために、取引先Y社からの領収証を偽造して、勤務先X社の会計責任者を欺罔して、X社から金を引き出して、不正行為を繰り返したというものでした。

X社社長の困惑
内心のつぶやき
 この若い税務署員はお取引先会社様に反面調査でもするのだろうか?
うちの会社(X社)は別に悪いことはしていないのに。
もしも反面調査でもされたら、
わが社従業員の不正行為がお取引先様に知られることになる、わが社の恥、信用問題だ、なんてことだ!!
この税務署員、忌々しい奴だ!!

確かに、X社社長は何も悪いことはしていない。
悪いのはX社従業員Zです。
こういう奴こそ「獅子身中の虫」という言葉がふさわしい。
X社社長、そのZのことは忘れて、目の前の若い税務署員のことを怒っているはちょっとおかしい。

反面調査とは、税務調査の一種です。
ある会社が税務調査の対象となったとき、同会社の関係銀行や取引先会社に税務署員が赴いて調査を行うことです。
反面調査はむやみやたらにしていいわけではありません(国税庁「税務運営方針」)、これについてはまた別の機会に述べたいと思います。

取引、例えば売買では独り相撲はありません、売り手があれば、これに対して買い手がいる、必ず複数の関係者がいます。

 この事例では、ひょっとすると、この日の若い税務署員が、X社の取引先Y社に税務調査に入ったとき、やたらにX社あての同社受領済みの納品伝票の控えがあり、他のY社取引会社分と合計した納品数がY社が仕入れた製品数を超えて、数が合わないことに疑問を持って、X社を反面調査に来たのかもしれません。

さらにX社社長を驚かせたのは、その若い税務署員の次の言葉
若い税務署員いわく
「 御社(X社)の従業員は、今期だけでなく、過去3期にわたって、御社(X社)の取引先Y社の架空伝票を利用して、X社に架空の代金を支払わせて、その代金相当額を詐取しています。
  そのため、御社(X社)は、今期含めて4期の各期について、その従業員に対する詐欺被害による損害賠償請求権がその各不正行為ごとに発生し、各期末ごとにその期に発生した損害金額合計をX社としては、「益金」として計上しなければなりません。
  ところが、御社(X社)は、過去3期の法人税の確定申告においてこの損害賠償請求権を「益金」として計上しておらず、これは不申告に当たり不申告加算税、隠ぺい仮装があれば、重加算税の納付も必要となるかもしれません。
  これを上司に報告し、さらに精査したいと存じます。」

X社社長は、わが耳を疑いました。
「エ・・・、「益金」、おいおい「損金」の間違いじゃないのか? うちの会社(X社)は被害者じゃないか」

 X社社長も冷静になってみれば、長年にわたって、従業員Zの不正行為に気付かず、この若い税務署員にわが従業員が「獅子身中の虫」であることを教えられてといえます。

 このように税務調査では、税務署員は、関係取引会社での調査も踏まえて、調査に入るので、ある従業員不正行為の見逃しを経営者に教えてくれるといったこともあります。

 経営者の中には、税務調査での税務署員の指摘で、わが会社の財務についての問題点を教えてくれるとして、それをメリットと受け止める方もいらっしゃるそうです。

 この事例では、この若い税務署員の言うことをただハイハイと受け入れてよいのか、
俗に「なく子と地頭にはかなわぬ」と言って、黙ってしまっていいのか、「貸し倒れ損失はどうか?」「そもそも不申告になるのか?」「不申告加算税はともかく、重加算税まで納付しなければならないのか」「これらの各問題について、所轄税務署に対して書面を提出する必要はないか?」
など、たくさんの問題があり、これらについても別の機会にお話したいと思います。

 皆さんの顧問税理士はしっかりされていると思います。
税理士さんは、税額の計算はバッチリ、弁護士なんかとてもかなわない。

 しかしながら、税務訴訟での勝率の低さを考えれば、最初の税務調査が納税者の言い分を税務署にわかってもらう最後の機会です。
税務署は、税務訴訟になれば、100戦100勝をしなければならない宿命を背負っています。
税務署にとってヤバイ、納税者にもそれなりの理がある事案については、税務訴訟に入るのはリスクであり、逆に言えば、税務調査は、納税者にとって、税務署に柔軟な態度をとってもらえるチャンスといっても過言ではありません。

 こう言ってはなんですが、税理士さんは税の申告は専門家ですが、税務署相手に税法の理屈を書面にして、戦うことは慣れておられないのではないか?

 税金の理屈は税理士さんがくわしい、その理屈を書面に書き表して、税務署相手に戦うのは弁護士の得意とするところ、税務調査における税理士さんと弁護士のコラボが必要となる時代だと思います。

執筆者情報

弁護士 永留 克記

弁護士法人ALAW&GOODLOOP

会計事務所向け法律顧問
会計事務所向けセミナー

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コラム
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A氏  皆さん、税務調査と聞いて、どんなことが思い浮かぶでしょうか?B氏  エエ、何だろう?A氏  税務調査を受けて、良かったという点、メリットはありますか?B氏  そもそも、そんな質問するヤツは誰だ?どんなつもりでそんな質問するんだ?メリットなんてちゃんちゃらおかしい!!税務調査と聞いて、10人中、8人か9人が嫌なもの、良かった点、メリットなんて、そんなものあるはずがないと言われるのではないでしょうか。そんな中にも1人くらいはC氏  税務上の判断について、税務署の方と意見交換が出来て、とても勉強になりました。B氏  この年で勉強なんか、それも税務署のご指導での勉強なんかまっぴらだ。 ある法人X社にある日所轄税務署の税務調査が入りました。その日税務調査に来た若い税務署員の方のご指摘は次のとおりです。 X社の従業員Zが取引先Y社の従業員Wとグルになって、Wに取引実体のない架空伝票を発行させて受け取り、取引先Y社に商品代金支払をしないのに、支払ったように見せかけるために、取引先Y社からの領収証を偽造して、勤務先X社の会計責任者を欺罔して、X社から金を引き出して、不正行為を繰り返したというものでした。X社社長の困惑内心のつぶやき この若い税務署員はお取引先会社様に反面調査でもするのだろうか?うちの会社(X社)は別に悪いことはしていないのに。もしも反面調査でもされたら、わが社従業員の不正行為がお取引先様に知られることになる、わが社の恥、信用問題だ、なんてことだ!!この税務署員、忌々しい奴だ!!確かに、X社社長は何も悪いことはしていない。悪いのはX社従業員Zです。こういう奴こそ「獅子身中の虫」という言葉がふさわしい。X社社長、そのZのことは忘れて、目の前の若い税務署員のことを怒っているはちょっとおかしい。反面調査とは、税務調査の一種です。ある会社が税務調査の対象となったとき、同会社の関係銀行や取引先会社に税務署員が赴いて調査を行うことです。反面調査はむやみやたらにしていいわけではありません(国税庁「税務運営方針」)、これについてはまた別の機会に述べたいと思います。取引、例えば売買では独り相撲はありません、売り手があれば、これに対して買い手がいる、必ず複数の関係者がいます。 この事例では、ひょっとすると、この日の若い税務署員が、X社の取引先Y社に税務調査に入ったとき、やたらにX社あての同社受領済みの納品伝票の控えがあり、他のY社取引会社分と合計した納品数がY社が仕入れた製品数を超えて、数が合わないことに疑問を持って、X社を反面調査に来たのかもしれません。さらにX社社長を驚かせたのは、その若い税務署員の次の言葉若い税務署員いわく「 御社(X社)の従業員は、今期だけでなく、過去3期にわたって、御社(X社)の取引先Y社の架空伝票を利用して、X社に架空の代金を支払わせて、その代金相当額を詐取しています。  そのため、御社(X社)は、今期含めて4期の各期について、その従業員に対する詐欺被害による損害賠償請求権がその各不正行為ごとに発生し、各期末ごとにその期に発生した損害金額合計をX社としては、「益金」として計上しなければなりません。  ところが、御社(X社)は、過去3期の法人税の確定申告においてこの損害賠償請求権を「益金」として計上しておらず、これは不申告に当たり不申告加算税、隠ぺい仮装があれば、重加算税の納付も必要となるかもしれません。  これを上司に報告し、さらに精査したいと存じます。」X社社長は、わが耳を疑いました。「エ・・・、「益金」、おいおい「損金」の間違いじゃないのか? うちの会社(X社)は被害者じゃないか」 X社社長も冷静になってみれば、長年にわたって、従業員Zの不正行為に気付かず、この若い税務署員にわが従業員が「獅子身中の虫」であることを教えられてといえます。 このように税務調査では、税務署員は、関係取引会社での調査も踏まえて、調査に入るので、ある従業員不正行為の見逃しを経営者に教えてくれるといったこともあります。 経営者の中には、税務調査での税務署員の指摘で、わが会社の財務についての問題点を教えてくれるとして、それをメリットと受け止める方もいらっしゃるそうです。 この事例では、この若い税務署員の言うことをただハイハイと受け入れてよいのか、俗に「なく子と地頭にはかなわぬ」と言って、黙ってしまっていいのか、「貸し倒れ損失はどうか?」「そもそも不申告になるのか?」「不申告加算税はともかく、重加算税まで納付しなければならないのか」「これらの各問題について、所轄税務署に対して書面を提出する必要はないか?」など、たくさんの問題があり、これらについても別の機会にお話したいと思います。 皆さんの顧問税理士はしっかりされていると思います。税理士さんは、税額の計算はバッチリ、弁護士なんかとてもかなわない。 しかしながら、税務訴訟での勝率の低さを考えれば、最初の税務調査が納税者の言い分を税務署にわかってもらう最後の機会です。税務署は、税務訴訟になれば、100戦100勝をしなければならない宿命を背負っています。税務署にとってヤバイ、納税者にもそれなりの理がある事案については、税務訴訟に入るのはリスクであり、逆に言えば、税務調査は、納税者にとって、税務署に柔軟な態度をとってもらえるチャンスといっても過言ではありません。 こう言ってはなんですが、税理士さんは税の申告は専門家ですが、税務署相手に税法の理屈を書面にして、戦うことは慣れておられないのではないか? 税金の理屈は税理士さんがくわしい、その理屈を書面に書き表して、税務署相手に戦うのは弁護士の得意とするところ、税務調査における税理士さんと弁護士のコラボが必要となる時代だと思います。
2017.09.04 09:15:34